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第五話(下)

第五話(下)です。

予定していた通り、ここから一度読み直して修正していくつもりなんですが…、多分ここから暫く投稿が開くと思います、忙しくなったから精神が病んだからとかではなく、剣聖祭の内容は考えているんですけれど、予選はプロットのプの字も出来ていない状況なのでそれを一から考えなくてはいけないのと。

こっちが本音ですね、ちょっとだけ10万字くらいの殺伐としない、戦闘とかもない多分というか絶対、単純に多分なろうでは一切需要とかなさそうな、恋愛小説を一本書きたいと思っていてですねそれの執筆に力を入れたいというのが本音です。この作品を楽しみしている方がいらっしゃったら本当に申し訳ないんですが…。

ちょっと戦闘もない、ただただ心情描写と人間関係だけを書きたくなったのが本音です、本当にすみません。

両方やればと言う方もいらっしゃる方もいるかもしれませんが、私シングルタスクなので一つの事しかできないんですよね…。

では第五話(下)どうぞ

 誰一人、賞賛の声も上げない静かな会場を後にする。信辰が意識を失っている事はわかっているが、そのような事自分には関係ないと言わんばかりに予選会場を後にした。

 控え室に向い、汗まみれになってしまったインナーを脱ぎ捨てて、普段着に着替えている時だった、不意に扉がノックされる。

「少し待って、今着替えているから」

「わかりました。では、着替えが終わったら声をかけてもらっても?」

 あぁ、和泉さんか。ならば待たせる訳にはいかないなと思い、手っ取り早く着替えを済ませ、扉を開ける。

「いいよ?」

 だがその場に和泉さんは居ない、居るのは赤い髪を(なび)かせた、自分より長身の男性だった。

 その男性に抱く印象は、とにかく顔が良いなと言う印象だった、日本人とは思えない外見と、とても綺麗に整った顔、それに外見は清潔感もあって、確実に同じクラスに居れば周りの女性の心をわしづかみにして離す事がないだろう、失礼かもしれないがこの人がどれだけのクズだとしても、女性は離れる事は無いであろうと思ってしまえるほど、整った外見をした男性が自分の前に佇んでいる。

「どちら様でしょうか?」

「僕かい?でもそれよりも先に控え室に入れてくれないかな?周りの目が少し気になるし」

 そう言われると確かに、皆が皆こちらを見ている気がする、まぁ確かにこれだけのイケメンと呼べるほどの外見を持った人間が居たのであれば、自然と視線が集まるのも無理はない。

 けれど一つだけ気になる事というか、不自然な事があるのでそれを聞いてからこの控え室に戻るとしよう。

「和泉さんはどこに?」

「和泉さん?あぁうちは…君の鍛冶師の事かい…、それなら僕達の会話が終わるまでは外で待っていると言っていたよ」

 そうか、ならば和泉さんはただ単純にこのイケメンに道案内を頼まれてここに案内したという訳か、でもなんで和泉さんが俺の鍛冶師だって事をこの人は知っていたのだろう?それだけの事だが、頭の中を少しもやつかせた。

「早速で悪いけど刀を見せてくれるかな?」

「本当にいきなりですね、嫌だと言ったら?」

「警戒しないでよ、僕はうちはに頼まれて、刀を見るって話しになっているんだから」

 和泉さんに頼まれて?そんな和泉さんが頼み込む程の人間がこの学園に居るとも思えないのだが、このイケメンは何者なのだろうか?

「じゃあ一つだけ質問に答えてもらっていいですか?」

「構わないよ?」

「貴方は一体誰ですか?」

 するとそのイケメンはキョトンという顔をしながら頭を掻いて、通信端末を耳に宛がう。そして連絡先は自分も良く知る人だった。

「おいミーシャ、僕の事は話したって言ってなかったか?」

『話したわよ?』

「でも武蔵は誰って言ってきたぞ?」

『そりゃあ、ミリオン見た目は知らないでしょ、話しただけなんだから』

「切るぞ」

『なんなのよ、いきなりかけて来たくせに、あっ変…』

 ブチッという音が聞こえるぐらいわかりやすく、会話の途中で通話を切りこちらに、すまないと言った表情で詫びてくる。

「すまない、馬鹿妹が紹介はしたと言っていたから、てっきり知っているものだとばかり思っていた」

「いえ、もうわかりましたから大丈夫です、つまりは貴方がミリオン・アーサーさんと言う事ですね?」

「そうだ、僕がミリオン・アーサーだ、ミリオンって呼んでくれ」

 ミーシャがとても美人だという事で、少しは考えていた事だが、やはり兄妹(きょうだい)と言うべきか兄の方も相当な美形だった、正直男としては羨ましいと思ってしまう程には、顔が良い兄妹だ。

「で、ミリオンさんはミーシャの鍛冶師をやっているから、それを知っている和泉さんが自分の刀の感想を求めて、ミリオンさんにお願いしたと…」

「そういうことだ」

 理解したし、納得もしたならば別に断る事も無い、刀をミリオンさんに手渡し、自分はこの部屋を出るべく片付けを再開する。


 刀を見ている時のミリオンさんは酷く静かでいて、とても冷酷な瞳をしながら刀を眺める。

 自分が打った刀では無いのだが、自分の大切な友人が打った刀だ、出来る事であるのなら、欲しいのは酷評では無く好評、しかし和泉さんが望んでいるのは、本当の言葉であるのだろうから、自分からは何も言えない。

 今はただただ、ミリオンさんがこの刀に対してどう思うのか、その答えを待ち望む。

「うん、いいswordだ、少し気になる所があるにはあるが、それは君に言うより、これから本人に問いかけた方がいいだろう」

 これから?これから和泉さんはミリオンさんとどこかへ食事にでも行くのだろうか?まぁそれをとやかく言うつもりは無いが…、何か変な気持ちになる。

「武蔵君も時間あるかい?」

「まぁ来月の予選までは、まだ時間もありますし、そもそもずらせない予定なんてないですけど」

「それじゃあ良かった、家に招待させてくれ、今日はミーシャと武蔵の祝勝会だ」

「はぁ…」

 どういう訳かは実際の所良くはわかっていないが、ミリオンさんに折角誘われたんだ、その気持ちを無下にする必要も無いだろうという事で、時間を空けて和泉さんと二人でミーシャが住んでいるマンションに向かう事にするのだった。



 ―ミーシャ宅―

 ―ピンポーン―と言う音がロビーで響く、インターホンを鳴らすと、何も言わずにロビーから、どうぞお入りくださいと言わんばかりにドアが開く。

「外見からもそうだけど、随分立派な所に住んでいるんだね。ミーシャって」

「それは、まぁ、私達と同級生なのに既にプロとも試合しているような選手ですし、ミーシャさんは」

 知ってはいたが、改めて思う。ミーシャは凄いのだ、途轍(とてつ)もなく、そして途方もなく。同じ学生だから、同じ学年だから、そんな理由が通じる相手ではない、それ程実力が離れている相手に自分はこれから挑もうとしている、ミーシャも自分に期待はしてくれているが、倒す事を期待している訳ではない。自分を追い詰めてくれる事を期待しているだけなのだ。そんな相手に喧嘩を売った自分は今一度身の程を知るべきなんじゃないかと思った。

「でも、勝つって決めたから」

「?、どうしたんですか?武蔵君」

「いやなんでもないよ、決意を決めていた…、そんな所かな?」

 エレベーターに乗りながらそんな、雑談をしていると目的の階に辿り着く。エレベーターを降りて張られているガラスから地上を見下ろす。

「こっわ」

「あれ?武蔵君って高い所ダメでしたっけ?」

 そんな事はない筈なのだが。いや確かに高い所は別に好きじゃない、だがこの高さは違うだろう。

「流石にここまで高いと経験は無いから、少し怖いかな?」

「そうなんですか、それは少しだけ良い事を聞いたかもしれません」

 少し笑いながら、そういう和泉さんを見て悪寒(おかん)が走る、もし和泉さんを裏切るような事をしてしまったら…、考えるのは止そう。

 そしてミーシャ宅のインターホンを改めて鳴らす。

 ドタバタという音を鳴らしながら、扉が開く。すると中からはずいぶんとラフな格好をしたミーシャが出てきた。

「なんで武蔵達が?」

「いや、ミリオンさんに祝勝会で祝わせてくれって言われて…」

「私が行くのも違うと思ってはいたんですけど、構わないと言ってくださったので…」

 ミーシャは啞然とも言える形相で固まる、震える手で扉を一度締めて、通信アプリに一つのメッセージが投稿される。

『少し待ってくれる?』

 そのメッセージを皮切りに、家の中からは激しいとまで感じる程の揺れと、喧騒が聞こえる。

 良くは聞き取れないが、恐らく互いに罵詈雑言を吐き、罵り合っているという事は確かであろう喧騒を耳にし、自分達はこう思う。

「来ちゃまずかったかな?」

「そんな事は…、無いと思いたいですけど…」

 流石の和泉さんも少し不安を抱いているようだが、何がそこまで焦る必要があるのだろうか?情報の行き違えでもあったのだろうかと考える事しかできなかった。

 暫くの時間を待たされ次にドアを開くとラフな格好をしたミーシャは居らず、きちっとした服装を身に装い扉を開ける。

「見苦しい姿を見せたわね、ごめんなさい」

「見苦しいだなんて、そんな事は思っていないよ、でもミーシャもああいう恰好するんだなとは思ったけど、まぁ人の部屋着に口出せる程、俺も衣服に精通している訳でもないからさ」

「そう、それならいいの、ごめんなさいね。家の馬鹿兄がいきなり祝勝会やるなんて言い出したものだから、少しおかしいとは思っていたのよ…」

「そうだったんですか?準備がまだの様でしたら、私が手伝いましょうか?」

 流石は万能で優しい和泉さんだ、良妻賢母この言葉がこれ程似合う女性も中々居ないだろう、すぐさま他人の家のお手伝いなど、自分では持っての他だ。そんな事を自ら率先してやろうとするのは、単純に尊敬する。

「そう?ならお願いしてもいいかしら?馬鹿兄らしく何も考えずに、食材だけ買ってきたみたいだから、どうにか消費してくれると助かるわ…」

 その言葉を聞くと待ってましたと言わんばかりに和泉さん、服の裾を捲る、和泉さんにとって料理とはストレス発散の一環であったりするのだろうか?それとも特別好きな事だったりするのだろうか?それ位のやる気を持って台所へと向かっていった。

「えっと…、俺はどうしたらいい?」

「リビングで待っていてもらえるかしら?紅茶は飲める?」

「違いとか分からないけれど、多分飲めるよ」

「そう、じゃあリビングに座っていて」

「じゃあ…、改めてお邪魔します」

 そう一言置いてミーシャの家に入る、和泉さんを除けば、同学年のしかも女生徒の部屋に入るなんて初めてで少しドキドキするのは、多分それだけ自分の交友関係の狭さを意味しているのだろうから、考えないようにしておく。


「お待たせ、どうぞ」

 紅茶を持ってきた、ミーシャから紅茶を受け取り一口飲む、こういった時どういう話をすればよいのかわからない、だから自分達にしかできない話しをしようと思う。

「今日の、剣ヶ丘先輩との試合はどうだったの?」

「どうもなにも普通に勝ったわよ、それでも狂い桜を使ってきたのは少しびっくりしたけれどね」

 剣ヶ丘先輩は狂い桜を使えたのか、あの剣ヶ丘学園長しか使わなかったあの抜刀術、意味がわからない手数を持ったカウンターと、意味がわからない手数の攻撃手段が盛りだくさんの抜刀術。

「剣ヶ丘先輩が狂い桜を使えるの、言っていなかったっけ?」

「ええ聞いていないわね」

 それは申し訳ない事をした気もするが、それはそれでミーシャの楽しみが減ったという文句も受け付けたくないので、これ以上は口に出さないが。

「といっても開花だけだったけれどね」

 開花だけと言っても、そもそもその一つを使えるだけで基本的な攻撃は通用しなくなる、それだけの技なのにそれを、だけと言ってしまえるのがミーシャの凄まじさを物語っている。

「武蔵も追い詰められはしたけれど、勝ったわね」

「あれは勝ったといっていいのかな?相当無茶苦茶な事をしたと思うんだけど」

「まぁ勝ち方は脳筋のそれね」

 その言葉を聞きグサっとくるが、ミーシャの言う通りだ、飛燕…、やっている事は別に異常な事をやっている訳ではない、ただ疾風の二段目を延々と出すだけ、それで信辰の銃弾を掻い潜れたのは奇跡と言ってもいいかもしれないが。

「でも今日の試合を見て確信したわ」

「確信って?」

 今日の脳筋とも言える無茶苦茶な試合を見て何を確信したのだろうか?やはり貴方は私には及ばないとでも確信したのだろうか?

「武蔵、貴方の成長速度ははっきり言って異常よ?」

「はぁ…」

 異常と言われてもそんな自覚も無いが、まぁミーシャにそう言われるのであれば光栄な事には違い無いのだろう。

「だから確信したわ、このまま貴方が成長し続けたら、万が一、いや億が、兆が一かもしれない、でもこのままの成長曲線のまま居続けたら、私に届きうる。だからね武蔵、私と戦うまで、負けないでね?」

「それは…、そのつもりだから安心してよ、ミーシャを倒して、俺は剣舞を辞めるって決めているんだから」

「その目標は残念ながら叶わないだろうけれど、期待しているわね」

「言ったね?じゃあ誓ってあげるよ、俺はミーシャを叩き潰すまでもう負けないから、ミーシャも途中で負けないでね?」

「いいわね、その気持ち…わかったわ、私も誓うわね、武蔵を叩き潰すまで最強な私のままで居てあげる」

 クックック、ひっひっひと笑い合う、これは動物で言う所の威嚇かもしれないが、そんな威圧感はない、ただただ次の勝負を楽しみにする少年少女が眼を飛ばし合っているだけであろう光景がそこにはあった。

 来月から予選があるというのに、このような約束事をしていいのか、それは他選手対する侮辱に当たらないのかという疑問点はあるものの、二人の少年少女は同じ行先を見つめる、見つめている先が互いが互いを絶望させている様であってもこれが二人の友情とでも言うのだろう。


今回は長々と前書き失礼しました、一応この作品に関する事なので前書きに失礼しました。

本文を読んでいただき誠に感謝します

ここまで読んでいただいた皆様、ここまで読まなくても本文は読んでくれた皆様、そして前書きで読むのを止めた方や途中でつまんないと思ってブラウザバックされた皆々様全てにこの作品を一度開いていただいた事を感謝します。

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