表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
買収チートで異世界改革物語【金を制する者は異世界をも制する】  作者: 揺蕩もちゆさ
家出娘は鳥籠の中?
5/9

5話 確信【5】

前回までが出題編です。

今回からが解答編です。

「………んにゃ」


賑やかになってきた生活音で、目を覚ます。

どうやら昼前まで寝てしまっていたらしい。


痛っ………頭に鈍い痛みが残っている。


俺は一体……

目を擦ろうとして、俺は何かを握っていることに気付いた。


札と…手紙?

クシャクシャになった手紙を広げて読む。


「昨日は済まなかった、私は悪酔いするといつもああなってしまう。

騎士として、いや一人の女として己を恥じるばかりだ。

詫びと言ってはなんだが、連絡先を渡しておく。

何か困ったことがあったら連絡してくれ。

貸しを作ったままは好かん主義なのでな。アーシス」


そうだ、思い出した。

俺は昨日、アーシスさんに聞き込みをして、その後、アルハラを受けて…


えと…かなり重要な事を聞いたはずなんだが…なんだっけ…


くそ、思い出せねぇ。どこかにメモとか残ってないのか…?


そうだ、メモと言えば契約…!

アレを使えばメモ代わりに出来たはず。


寝起きの俺でも思いついたんだ、当時の俺もきっと同じことを考えたはず。


俺はスキルを発動し、進行中の契約一覧を具現化した。


あった、昨日のメモ…!流石俺!俺の見込んだ俺!


〜メモ〜

アーシスさんの証言

とある廃施設に捜索に行った時、最近使われていたと思われる薪が落ちていた。

さらに、その周辺には青い髪が数本落ちていた事から、少し前まで娘はそこに居た事が分かった。

アーシスさんはそのニアミスに萎えて依頼を降りたみたいだ。



あぁ、そうだ。思い出した。

それで、娘は計画的な誘拐だってことが分かって、

しかも犯人は拠点を定期的に移動するタイプだってことも分かったんだ。


そうだった…って、あれ?

俺はもう一度メモの内容を熟読し、昨日のやり取りを思い出す。


…………

…そうか。分かった。犯人が。


しかし、動機は…?


俺は思案する。考えられる可能性を。


……有り得る。有り得る可能性は思い付いた。

確信はない。だが、これなら辻褄が合う…。


今日は当初の予定通り、Cランク冒険者へ聞き込みに行く。

俺の仮説が当たっていれば、それで確定するはずだ。


────

俺は酒場でそのまま昼食を済ませた。

昨日の酒代と合わせて支払い、残り363,000ゴルド。


さて、Cランク冒険者フィル・ドーランド氏とのコンタクトの方法はどうするか。


アーシスさんみたいな有名人じゃないだろうし、難しいな…


フィル氏は俺がこの依頼を受ける前、最も新しく依頼を受けていた人物だ。


それならいっそ、前任者として依頼人かギルドから、公式に紹介されたことにして連絡してしまうのも有りか。


ちょうどお昼休みの時間かもしれないので、俺はフィル氏の連絡先に念話を繋げて見た。


「……あい。」


「すみません、フィル・ドーランドさんでお間違いないですか?」


「そうだがぁ?どなた?」


「しがないFランク冒険者でございます。

先日、クエスト『家出娘の捜索』を受注した際に、前任者としてフィルさんを紹介されたのでお話を伺えればと思いまして」


「Fランク冒険者があの依頼を…?

まあいいや、サルバド区のシャレルっつー酒場で飲んでっから、来たら話はしてやるよ。」


「ありがとうございます、今から伺います。」


なんだか凄くのんびりしてる重低音の声だったな。それに昼間から飲んでるって、また酒飲みか…?もう勘弁してくれよな…


──────

サルバド区へは徒歩20分足らずで着いた。

えーシャレルって酒場は……あれか。

仰々しい看板が出てていて助かる。かなり大きい酒場の様だ。


俺はその看板目指して足を運んだ。

──────

カランコロン


「いらっしゃい」


「フィル・ドーランドさんはいらっしゃいますか?」


「あい、ここだぜぇにいちゃん。まあ座んな。」


フィル氏は広い酒場の中で最も店主に近いカウンターで手を振っていた。

どうにも常連らしい、また酒乱じゃないといいが…


「お待たせしました。」


「あいあい、で?何を聞きたいって?」


「家出娘の捜索についてです。」


「あーそれねはいはい。んっとに…ろくなクエストじゃなかったよ」


「何かあったんです?」


「つい最近のことだなぁ、いきなり解雇されたでぇ。」


「いきなり…?何か理由があるんですか?」


「さぁなぁ。受注して3日目、次は区内の宿舎跡地を探してみますって依頼人に言ったら、『やる気ねぇなら辞めちまえ!』ってさ。そんな的外れなこと言ったかねぇ…」


「跡地…ってことは、今は使われてないってことですか?」


「あぁ。オルブド区は寂れてっから、あちこちに放棄された跡地がある。

そこに幽閉されてるかもと思ったんだが…」


「それでいきなり解雇されたと…。なるほど、ありがとうございました。」


「あれ、もういいの?」


「はい、今ので確信しました。場所代と謝礼です。」

俺は1万ゴルドをカウンターに置き、その場を後にした。


残り353,000ゴルド。


──────

俺は酒場を出て、次に向かう場所は決まっていた。

フィルさんが捜索すると申告した途端に解雇された、オルブド区の宿舎跡地だ。


受付嬢から買収した顧客情報と、フィル氏の3日目で解雇発言から、フィル氏の解雇は一昨日夜ということになる。

だからこそ、俺の仮説通りならその宿舎跡地には、今なら必要な駒が転がってるはずだ。


──────

歩いて40分程。

途中で軽く買い物をした。残り350,000ゴルド

故郷・オルブド区へ帰還した。ここならブラウンさんに貰った地図があるから目的地を探しやすい。

俺は迷うことなく宿舎跡地へ向かった。


────

宿舎跡地……いつから放棄されてるのか分からないが、かなり老朽化が進んでいるように見える。

崩れた外壁から中を覗くと、案の定、人が居た。


俺は音を立てぬよう、忍び足で中に入った。


──────

中に居た男はモップを持っている。

掃除をしてるようにしか見えない。


「ここで何してるんだ?」


俺はわざと大きめの声で言い放った。

忍び足で侵入し、気付かれていなかった為、大きめの第一声に男の体が軽く跳ねる。


「脅かしてすまない、ただこんな廃施設で何をしてるのか気になってね。」


「…見たら分かるだろ。掃除だよ。」


「こんな老朽化してて使われてない跡地も掃除が必要なんだ?」


「…………」


「下らない駆け引きはよそう。俺はあんたが誘拐犯の一味だってもう分かってる。娘が居た痕跡を消してたんだろ?」


「何を根拠に──」


噛み付いてきた男を手で制止する。


「俺はあんたを告発したい訳じゃない。単刀直入に言おう。25万やる。こっちに寝返ってくれ。」

俺は25万ゴルド分の札束を床に落とした。


「………何の話だ」


あくまで心当たりがないフリを貫く男を無視して俺は話を進める。


「報復が怖いなら安心してくれ、あんたに危害が加えられないよう配慮するだけの準備がこちらにはある。」


俺は権能(スキル)を発動し、絶対性を疑わせない効果を持つ契約書を見せつける。


「どうせあんた、大した金貰ってないだろ?俺に付けば即金で25万。1つ教えてくれるだけでいい。」


「…………」


「25万だぞ?上手くやれば半年は食に困らない。素直になるんだ…な?別に悪いことじゃないさ。」


俺は見せつけるように、道中で買った、初日に食べたのと同じフルーツ(「パルテ」と呼ぶらしい)を丸齧りした。


がぶり、もしゃもしゃ…もしゃもしゃ…

零れんばかりの甘い果汁をじゅるじゅると啜り、舌鼓を打つ。


10秒ほど耐えたが、とうとう男は足元の金を拾い、それと同時に契約に同意したとみなされ、契約書が発光し、発行し、発効した。


「ありがとう。ごめんな、見せつけたりして。君の協力がどうしても必要だったんだ。」

俺は片腕に抱えた紙袋からパルテを一つ取り出し男に差し出した。


あとは……


──────

──────


よし、これで必要なピースは揃った。

後は勝つだけだ。

俺は手を耳に当て、念話をかける。


「もしもし、Fランク冒険者のロクトです。」


「あぁ、どうした?ようやく捜索場所のアタリを付けたか?」


「アタリ…というか、当たりを引いてしまいまして。」


「はぁ?」


「『娘』を見つけました。これにて依頼達成です。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ