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異世界物書き道中  作者: トッキー
3/10

戦いの手の内

 今日は決闘で生計をたてているという人間に話を聞きに行く。

 決闘とは一対一で戦う正々堂々の殺しあいの事を言う。

 決闘する意思を相手に伝え、その相手が受諾したとき決闘となる。

 正当な決闘ならば相手を殺しても罪にはならない。

 それを見届ける立会人が一人必要となる。

 勝者は殺した相手の手持ちの財産を受け取ってよい事になっている。

 それで金を儲けているわけだ。

「モミジさん仕事行きますよ。決闘で金を儲けてる人の所に行きます」

「へえ。今日は面白そうだな。そいつ強いのかな?」

「さあ?とりあえず行ってみましょう」





 酒場『ホールホール』は今日も賑わっている。

「マスターワイン一つクズのおごりで」

 仕事中は酒飲むなよ…

「おいおい!あんたがジョセフだろ!?」

「はい?」

 いきなり話かけられた。

「俺の話を聞きに来たんだろ!?」

「えーとあなたが?」

「そう俺が決闘者ジャスティーンだ!」

「そうですかお話お聞きしても?」

「それよりそっちの美人のねーちゃん誰だよ?」

「護衛です」

「女に護衛してもらってんの?だせえなあんた」

「ええ。情けない話ですが」

 適当に愛想笑いする。

「まあいっか。じゃあ最強の俺の話を聞きな!」

「お願いします」

「一対一の戦いで常に勝つには先制攻撃が大切なんだよ!」

 うるせえなこいつ。いちいち叫ぶなよ。

「ふむ」

「俺は足元の砂を蹴って相手の視界をふさいだところに一撃をあたえるって勝ちかたをパターン化してるね!」

 せこいなこいつ。

「それで強い奴とは絶対に戦わず弱いやつを狙う!」

 お前もだいぶだせえな。

「ふむ。具体的には?」

「酒に酔ってる奴とかか弱い女とかだな。特に女に深手を負わせてその後じわじわといたぶるのは最高に楽しいね!」

「でも決闘受けてくれますかね?そういう女性って」

「押しを強くしてくんだよ!ナンパと一緒!」

「なるほど」

「自尊心が高くて男勝りな女は狙い目だね。あいつらそこそこ腕がたつからって変なプライドもってるからな!」

「ふむふむ」

「ちょっと挑発すると乗ってくるからな話に!」

「ふーん。そうなんですか」

「まったく弱いくせに調子のってる奴が多くて俺としては大助かりだぜ!」

「ふーん。ですってモミジさん」

「ん?」

「おっねーちゃんモミジって言うの?可愛い名前だな。こんな奴の護衛やめて俺の遊び相手にならねえ?」

「てめえに名前覚えられたの屈辱だわ。殺していいか?」

「あ?」

「ちょっとモミジさん駄目ですって。確かにこんな奴に名前覚えられるの屈辱でしかないですけど」

「あ?てめえらこのジャスティーン様になめた口叩きやがって…覚悟はできてんのか?」

 お前も挑発にのりやすいんだな。狙い目じゃん。

「モミジさんと決闘します?ジャスティーンさん」

「はあ?お前が決闘しないのかよ?」

「ええ。私弱いですから」

「ワインしこたま飲んでる女に決闘させんのかよ?俺は決闘したら必ず相手を殺すぜ?」

「やってみせてくださいよ。私の護衛を殺せるものなら」

「おい。クズ。何勝手に話を進めてるんだ?」

「だとよ。変に誇りを持ってる女にやらせんなよ。確かに狙い目だと言ったけどよ…」

 チッ変に警戒してやがるな。さすがだ。相手を見分ける嗅覚はあるんだなこいつ。

「私にビビってんの?さっきは女をいたぶるのは最高とか言ってなかったか?」

「あ?なんだねーちゃんやる気なのか?」

「殺す気だぞ。最初に殺していいか聞いただろうが。このクズが話を勝手に進めようとしたからいらっときてただけだ」

「上等じゃねーか。いいぜジャスティーンこの決闘受けた!」

 受けたか…酒飲んでるか弱い女性…か弱くないんだよな…モミジは。

「では私が立会人しますね」







 酒場の外。決闘が始まろうとしていた。

 ギャラリーは酒場で飲んでいた客とその他野次馬達だ。

 決闘はみてるぶんには面白いから人は集まる。

 血や興奮を求めてる人間はこの世界では多い。

「では立会人の私がはじめといったら決闘開始です」

「了解だぜ!」

「了解。はやくしろクズ」

「では………はじめ!!」

「行くぜえ!」

 ジャスティーンは懐に仕込んでおいたらしい無数の石つぶてをモミジの顔に向かって投げつけた。

 なるほど。ある程度舗装されていて、足元に砂がない場合は自前の目潰しを使うのか。

 しかし、相手の視界をふさぐ行為をするという情報は酒場で大きな声で喋っていたから筒抜けだ。

 モミジは石つぶてを持っていた刀で風圧をおこし、ジャスティーンの顔にお返しした。

「なっ!?」

 返ってきた石つぶては見事にジャスティーンの顔に命中した。

「ぐっ」

 視界は完全にふさがれた事になる。

 そして次に放たれたモミジの神速の斬撃はジャスティーンの身体を真っ二つにした。

「あっ…」

 その言葉を最後にジャスティーンは物言わぬ死体となった。

 一瞬の静寂の後、

 観衆の盛大な拍手と喝采が鳴り響いた。

 酒場の客は大声で話していたジャスティーンのクズな発言にイライラしていたのだろう。

 一際大きい拍手だった。

「このゴミの死体から手に入る財産は酒場のマスターが貰っといて。店の外をゴミで汚したお詫び」

 ちゃっかり仕事を放っておいて観戦していたマスターは大喜びしていた。

 なんていうか…あれだな。

 戦いの手の内ってのは話すものじゃないな。

 今回は相手が悪かったというのもあるが…

 この教訓を題材にした本だそう。売れるといいな。





 戦いの手の内は明かすものではない。そしてそれ以上に人間の群れの中に英雄のような化け物が潜んでいることも忘れてはならない。

 ジョセフ著。戦いの手の内より。






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