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異世界物書き道中  作者: トッキー
2/10

冒険者って危険な職だよね

「そんでさ。そいつ呼吸できなくなっちまったんだよ…」

 ジョセフ著。安全策をとろうとした冒険者より。





 さて酒場についた。二流冒険者との待ち合わせ場所はここだ。

 酒場の名前は『ホールホール』だ。どうでもいい情報だな。

「あ、ジョセフさん。冒険者の方がお待ちですよ」

 マスターが俺に声をかける。

 話を聞く待ち合わせ場所としてここをよく使ってるから俺は常連だ。

「マスターとりあえずいつものワイン一つ。クズのおごりで」

 おいおいモミジ。まだ仕事中だぞ。いい加減にしろ。しかも俺のおごりかよ!

 怖くて言葉にだして言えないんだが。

「よーし。とりあえず冒険者の席に行ってから注文しましょうかモミジさん」

「私カウンターで飲んでるからクズは適当に話聞いてこいよ」

 お前護衛だろうが!

「分かりましたー」

 そう返事して俺は冒険者の席に向かった。





「あんたがジョセフか?」

「そうです。お話を聞かせてもらいに来ました」

「ふーん。話すだけで金を貰えるなんて冒険者やってて一番楽な仕事かもしれねーな」

「冒険者様の色々な話を聞けるんですから私としてはお金払って得したなって思ってます」

「まあ、俺はあんたの本とか全然読んでないし知らねえんだけど…俺の話をもとにして書くんだろ?」

 俺の読者層は貴族が多いからな。おかげで生活できている。もちろん町民も読んでいる奴は読んでいるが。

 俺は万人が知っているような有名物書きではないしな。

「そうですねえ。書かせていただきたいと思ってます」

「あんま、おもしれえ話とかないんだけどさ俺」

 はやく喋れよ。面白いか面白くないかはこっちがきめるから。

「お仲間の冒険者が不幸な事故にあってしまったんですよね?」

「そうなんだよ…そいつ前衛だったんだけどさ…」

「ふむふむ」

「前衛ってやっぱ傷付く事が多いんだよな。それで怪我した時の回復薬やら僧侶の回復魔法代とか馬鹿にならねえわけよ」

「なるほど…」

 まあ、回復魔法は修練をつんだ僧侶や修道女、司祭や神官、英雄クラスだと大神官や聖女しか使えないからな。

 回復魔法覚えていて冒険者になる奴も少ないし、冒険者パーティーに回復魔法を覚えてる奴がいるのは少数だ。

「そんでさあ考えたわけよ。全身鎧や兜で身体を固めれば怪我が少なくなるんじゃないかってな」

「そうですか」

「で、全身鎧買って兜も買って試したんだが」

「ふむ」

「動きにくいし洞窟とか潜るには不向きだったんだよなあ…」

 単純に重いしな。軽々と着こなせる奴は化け物だろうし。

「で、しまいには最弱を争うスライムに顔面にまとわりつかれて…」

「つかれて…?」

「そいつ呼吸できなくなっちまったんだよ…」

「ふむ…」

「それで助けようとしたんだけど俺含めて全員、全身鎧着てたから遅れてさ」

 パーティー全員着てたのかよ!

「そんでいざたどり着いても兜固定されてて取れねーしさ」

「なるほど…それで」

「ああ。それで最弱スライムに殺される五級冒険者がでてしまったわけだ」

 冒険者にはクラスがある。基本一級から十級までだ。

 一級がベテランで十級が駆け出しだ。

 一級以上のクラスもあるが、一級以上は化け物という認識だ。

「不幸な…事故でしたね…」

「ほんとにな…鎧売ったけど買った時よりやっぱ安く売っちまったし散々だよ…」

「…お話いただきありがとうございました。これは取っておいてください」

 俺は少しばかりの金を渡した。

「いやギルドから報酬は貰ってるから…」

「今、色々大変でしょう?」

「そうか…なんだか悪いな…」

「いえいえ。お仲間を弔ってあげてください」

 渡した金より多い金を面白おかしく書いて俺は手に入れるからな。

「ありがとう。あんたって噂で聞くほど悪い奴じゃないんだな」

「あら…私は噂でなんて言われてます?」

「なんか英雄を悪く書く英雄嫌いの変な奴だって言われてるぞ?」

 間違ってないな。

 だって英雄とか呼ばれてる奴って会ってくれないし偉そうだからつい悪く書いてしまうよな。

「そのような噂がでているのを私としては残念な事に思ってます」

「だな。あんたの本を機会があれば今度読ませてもらうわ」

「ありがとうございます」

 町の図書館にも俺の本が少しばかりあるが買って欲しいから黙っておこう。

「じゃあまたな」

「ええ。こちらも機会があればまたお話を聞かせてください」

「おう。もちろんだ。仕事じゃなくてもこの酒場でおごってくれればなんでも話すぜ!」

「覚えておきます」

 その言葉を最後にして会釈をし、俺は冒険者と別れた。






 カウンターに向かうとモミジが楽しそうに飲んでいた。

「おっクズ終わったか?」

「終わりましたよ。アホな話が聞けました」

「そりゃ聞けばよかったな私も」

「モミジさん絶対に少し笑ってしまうと思うので酒飲んでて正解でした」

 以前モミジが冒険者の話聞いて爆笑しつつ馬鹿にして争いになったからな…

 あれ? なんでこいつ護衛に雇ってるんだ?

 美人だからか。それはしょうがないな。

「噂じゃマヌケな冒険者が死んだって話だったんだろ?」

「その認識で合ってますね」

「じゃあ笑ってたわ」

「ですよね」

 本当にモミジを同席させてなくてよかった。

「あ、マスター俺にもワイン一つ持ってきて。一生懸命働いてるマスター見て笑いながら飲むんで」

「ジョセフさんてモミジさんの言うようにクズですよね」

「お客様をクズ呼ばわりするな」

「はいはい。すみませんすみません」

 後、モミジも同じような事、言ってたからな。

 一生懸命働いてる奴等を笑いながら昼間に飲む酒は格別に旨いって。

 …さて、飲んだら下書き書いて明日この話を仕上げるとするか。

 売れるといいな…この話の本も。



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