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 退屈という感情を乗り越えて、私もついに真の無口人間になりかけそうになった頃、それはようやく姿を表した。

 階段の終わりの先、それほど広くはない白いスペースに神様はいた。

 白のテーブル、白のリクライニングチェアのみというこれまた簡素な調度品と共に神様はそこに居た。

「えっ、子供……?」

 ここまで来れば、流石にもう驚くことはないと思ったが、列の最前列、イスに座って天使達の応対をしていたのは、まだ垢抜けてない若い少年の風貌をした人間だった。ちなみに羽は生えていない。

 てっきり老人だと思っていた。それも白ひげを蓄えた……。

「用件は?」

「えっ?」

 気がついたら、私は列の一番前まで来ていた。

 やはりどう見てもただの子供にしか見えなかった。見た目だけなら私より二回りほど幼い気がする。

「ボクに何かお願いしに来たんでしょ?」

「あ、はい! えっーと……」

 頭ではただの子供と思いつつも、いざこの目の前の人物だと思うと、身体が勝手に強張ってしまっているのが分かった。

 威厳があるわけじゃない。白いシャツに白いズボン。それ以外は整った顔ということ以外なんら、普通の少年にしか見えない。

 この人が、神様……?

「う〜ん。分かった、ボクが当ててみよう。えっと……」

 すると、神様はおもむろにテーブルに置いてあったティッシュを一枚とり、ち〜んと鼻をかんだ。そして、ポイと投げた。それはあろう事か、床をすり抜けそのまま地上に向けて落ちていってしまった。

「あの……神様」

「え、何?」

 今度は神様の方が驚いた様子で私を見た。まるでまだ用件があるの、とでも言いたげに。

「ここに来ればお願いを聞いてくれると知って、来たんですけど……」

「君も生き返らせてほしいってお願いしに来たのかい? 生憎だけどその願いだけは聞き入れることはできないよ」

 少年は極めて冷静に、かつキッパリと断言した。

 ようやく分かった。ここまで列を作って並んできた天使は、自分の記憶が確かなうちに、生前の元の人間として再び生を得られるよう、お願いに来ているのだ。

 そして、今のように断られていく。だから、階段を下る天使が暗そうに見えたのは、見間違いではなかったということだ。

「ならどうしてこんな列を作らせてまで、天使たちに意味のないことをさせようとするの?」

「う〜ん、ボクとしては出来るだけ天使たちの願いは聞き入れたい所なんだけどね」

 と、前置きしつつ、やはりそれだけは出来ないんだよ、と言った。

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