4
自分という確かな存在がありながら、それがまるでただの抜け殻だったかの様な衝撃を受けた。
自分を確かめる手段が無い事が、これ程にもショックだった事を思い知る。
少し思案していたサトミだったが、やがてこんな事を提案してきた。
「なら、神様にでもお願いしてきたら?」
サトミの提案というのは、神頼みでも何でもなく、正真正銘、神様に直接お願いしに行くというものだった。
「神様って本当にいたんだ……」
歩けど歩けど、本当に何ら変わることない、白く平坦な場所をひたすら歩く。
サトミが言うには、
「こっちの方向に歩いていけば、神様がいるはず」
と、この世界特有の適当さというか曖昧さに導かれるまま歩いていた。
本当にこの方向で合っているのか、半信半疑ではいたが、正直な所、神様に会えなくてもいいと思っていた。
あった所でどうにかなるという確証はなかったし、万が一にも生き返ることは無いのだから。
それに記憶を取り戻したところで、今のこの現状は変わらない。ただひたすら平凡で退屈なこの場所に居続けるという運命は変わらない。
「これって……」
五感を感じ取りづらいこの場所において、疲労を感じ始めたとき、ようやくそれらしい看板を見つけた。
神様はこの先に
とだけ書かれている。
まあ、人間世界のような建造物や交通整備がなされてないのは理解できるにしても、あまりに殺風景すぎやしないだろうか。
「看板一つだけって……」
この天国において唯一見た人工物がこれである。
敢えて言及する必要すらないかもしれないが、相変わらずの白い人工物。流石に殺風景すぎる。
贅沢を言うつもりはないが、天国にはもう少し華やかなイメージがあっただけに残念な気持ちになる。
日本の田舎でも、ここよりは看板が多いはずだ。
多少の愚痴は出たが、確かに道は合っているようだった。
進むにつれ、徐々に同じ方向へ進む天使がちらほらと見え始めた。
同じ目的を持つ者がいる。これだけで少し嬉しい気がした。退屈に感じていた三日間(一年らしいが)の気怠さも吹き飛ぶようだった。
中には背中の羽を巧みに操り、空中飛行していく者もいたが、私の羽はピクリとも動く気配がしなかった。
「歩くの疲れた……」
疲れているからではなく、単に扱い方が分からなかった。
いつかあんな風に自分も飛べたなら、この世界の退屈さも多少は紛れるだろうか。
相変わらず程良い気候だけが支配する、この白い大地を歩いていった。