12/12
12
「今適当に話を合わせようとしたね?」
「何か記憶が混濁していたみたいで……」
「ふぅん……」
少年が再び私に詰め寄ってくる。
「それなら尚更だ。やはりこんな辛気くさい所に、姉さんはおいておけない!」
今度また腕を掴まれてしまったら、逃げ出せる機会は二度となくなるかもしれない。
だが、私は逃げようにも早さに自信はなかった。
ならば――。
私は駆け出した。勝負は一瞬、覚悟を決めろ。
そう言い聞かせて私は、近くにあった小窓に向けて走り出し、そして、
「えいっ!」
思い切り跳躍した。私は飛ぶ術を持っていないので、最大高度からすぐに地上へ向け急降下した。不思議と恐怖感はなかった。まあ、天使になってから感情が薄れたのもあるかもしれないけど。
一人残された少年は、小窓の縁で、
「姉さん……。どうしてまた……そうやって逃げるの」
悲しげに何か言っているようだったが……よく聞こえなかった。