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未知なる出来事が起きたとき、そこから立ち去るか、興味本位で近づくか、二つの選択肢があるとしたら、私が選ぶのは後者だった。
いまここで何かが起きている。
だとしたら確認せずにはいられないだろう。
私は、逃げ惑う天使の反対、つまり野次馬精神を持つ天使に紛れて、前に進んでいった。普段は感情起伏の少ない天使達だが、案外こういうニュース性の強いものには興味があるのかと、妙なところで感心させられた。
「この先に何かあるんですか?」
野次馬根性のある天使を一人捕まえて聞いてみた。あまり期待していなかったが、思いの外その天使は、すんなりと話に応じてくれた。
「悪魔だってよ! 地獄から悪魔が一人やってきたんだってよ!」
普段の天使像からは想像がつかないほどに、その天使は興奮していた。
なるほど、天使の感情は完全には死んでいないらしい。
それと、悪魔の存在が気になった。
サトミさんも言っていた事だが、基本的にこの天国と地獄には接点がないと言っていた。その地獄から悪魔がやって来たというのだから、確かに話題性には富んでいるな……と、我ながら冷静な分析をする。
まあ、悪魔を一目見るくらいならおそらく大丈夫だろう。なにせこの群衆だ。野次馬の群れに鳴りを潜めていれば、どうということはない。
天使の群れをかきわけ(飛ぶ者もいたが、飛べないので)、ようやく群衆の前に出た。悪魔は天使の群れに囲まれるようにして、周囲に目を配らせながら辺りを見回していた。
天使を警戒しているというより、何か探しているような感じでもあるが。
というより、悪魔と聞いてどれほどのものかと期待したが、これまた拍子抜けだった。背中に黒黒とした漆黒の翼を生やしている他、天使と見た目は何ら変わらなかったのだ。
有り体に言えば、ただの人間に翼が生えてるという方が近い。
悪魔というからもっとおぞましい姿を期待したが、見当違いだった。
強いて言うならば、少し目つきが悪いような感じがすることくらいか。
その目つきの悪い少年は、天使の群れに向けて言い放つ。
「おい、俺は見世物じゃないぞ。俺はただここに人を探しに来た。関係のない奴は失せろ」
悪魔というだけあって(なのか?)、口調はかなり悪い。しかし、どことなく言い慣れてない感じは、中学生くらいの男子が悪ぶっているのと何ら変わりなかった。
そう思うと案外悪魔も面白いと思った。
「そこのオマエ! 何を笑っている!」
まずい、悪目立ちをしてしまった。悪魔に完全に目を向けられている。
しかも何か食い入るようにこちらを見ている……。
「な、何か……?」
精一杯の声を振り絞って聞き返した。これ以上会話できる勇気は私にはない。
だが、悪魔は私をまじまじと見つめるなり、目を見開いた。やばい。これは完全に注目されている。
「ね、姉さん……!?」
私の恐怖心などそっちのけで、悪魔はそう言った。




