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宝物庫の鍵  作者: 朽又まうよし
最初の島、バース
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第1話 希望の光は何処からか。

前の作品、玩具野郎の方が書いているうちに

「あれ?もしかしてこの作品アクションシーン少ない?」

と思ったので、同時進行で書き始めて生まれたのがこの作品です。

バキバキの王道でメラメラでアツアツなアクションを目指して書いてます。


12月29日に全編修正しました。

 俺には夢がない。

 隣の家の少年は父漁師になるっていう夢を持っている。

 向かいの少女は母みたいに島のカッコいい男の嫁になると夢を持っている。

 森の方の少年は親みたいな猟師になると、畑に住む少年は親とともに農家になって美味しい野菜を作るという夢を持っている。

 しかし僕には夢がない。ある日は漁師を手伝って船に乗って網を引き、ある日は鍬を持って畑を耕すのを手伝い、ある日はナイフを持って猟師の狩ってきた獣を解体するのを手伝っている。

 皆、少年少女は「親のような」仕事をしたいと夢を持っている。


 俺、ユニールには親がいない。

 漁師のおっちゃんが浜に出た時に拾ったとか、猟師のおっちゃんが取りに行った時に拾ったとか。農家のおっちゃんが畑のキャベツを収穫した時に出てきたとかいろいろ噂がある。さすがに子供は一人で成長はできないので息子がいない村長が7歳まで育ててくれた。そのあとは大工のおっちゃんと一緒に立てた小さな小屋で、島の大人を手伝ってもらった賃金で食いつないでいる。

 夢がないのではなく、夢を見る暇がないと言ったほうがいいのだろうか。

 僕はずっと一人でこうやって生きていくのだと思っていた。



「おう、ユニール。今日はここか。そうだな、もう10になるんだから狩りを手伝ってもらってもいいかも知れんな。そうだな、比較的安全なバカウマを借りに行くぞ。」

「はい、宜しくお願いします。」

「と、言っても罠の確認と設置、獲物が引っかかっていたら止めをさすってぐらいだからな。そんな気張らんでいいぞ。」

「わかりました。」


 バカウマとは中途半端に角の生えた足の短いウマのことだ。とても美味しいからバカウマなのか、馬鹿みたいな動きをするからバカウマなのかは知らない。


 ちょこちょこ作っていた短い槍を持っておっちゃんと歳の近い少年と森に入る。少年は自分のほうが森の先輩だから言うことを聞けとか偉ぶっている。僕は食べ物が少ない時は隠れて自分で狩りをしているので、森については特に緊張していない。だが、隠れて狩りをしているということはバレてはいけない。森に入れなくなる。


「おっ、つのイノシシが罠にかかっている。これは幸運だな。」


 つのイノシシの足が罠にかかり、ズタズタになっている。流血している上に食事ができていないので、体力を失っているようだ。


「父ちゃん、オレが仕留めてくる。」

「わかった、気をぬくんじゃないぞ」

「大丈夫だって。どう見ても体力ギリギリなんだから。」


 少年はつのイノシシを舐めきっていた。彼は知らないのか、生き物は死にかけた時に通常以上の力を発揮することを。

 少年は隠れもせずにつのイノシシに近づいている。つのイノシシはそれに気づいたのに知らぬ素振りをして弱ったふりをしている。反撃の機会を窺っているのだ。

 そうとも知らない少年は最後の止めを刺そうと近づいてナイフを振りかぶった。

 つのイノシシはツノを少年に突き刺す。猟師のおっちゃんは少年に痛い目を見させたかったのか。と思ったら慌てて近づいてつのイノシシに止めを刺した。


「おい、大丈夫か?」

「う、うん。足にツノを刺された。」

「くそう、なんでだってんだ。死にかけてたろうに。」


 こいつはアホなのだろうか。動物をよく観察もせずによく狩りができるな。少し尊敬していた猟師を冷ややかな目で見た。自分のほうが狩りがうまいのだと確信した。


「ごめんな、狩りしようって言ったのに戻ることになっちまった。こいつ背負っていくから遅くなるが先に戻っていてくれ。」


 森は危険なのに子供を一人で動かせるのか。それより手負いを背負ったままこいつは森を抜けるのか。戦力分散する意味はないのにと思ったが、自分に取っても都合がいいので反論せずに森を駆けてゆく。

 もし猟師が森で死のうと、自分は狩りができるから肉の心配はない。別にどうなろうといいのだ。


 森を一人で駆けていく。

 別に背負われた少年が羨ましいとかじゃない。別に心配してもらえる少年が羨ましいわけではない。

 木に絡みついている蔦が自分の心臓に伸びてきて複雑に絡まり締め付けるような感覚を覚えた。


 森を走っている。

 無闇矢鱈に行き先を決めずに。


 行き先を決めていなかった僕の目に一点の光が射す。


 なんだあれは。


 光っていたものは地面に落ちていた。

 光っていたものは0と書かれた鍵だった。



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