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哀/アイ/相

 私達は、自然の(ことわり)から外れた存在。


「んちゅ、ちゅっ、ちゅぱ、ぴちゃっ……」

「ん……。もう、お姉ちゃんいつまで飲んでるの?」

「あと、あと一滴らけ……」


 そう言って、お姉ちゃんは私の涙のおかわりをねだる。


 田舎の廃れた、無人駅の駅舎。そこが、今晩の、私達の食卓。


「ねぇお姉ちゃん。もう私、お腹ペコペコだよ……」

「ん、うん、ちゅぷ……ぷはぁっ。ごめんごめん。んく……ふわあぁぁあ。ん、召し上がれ」


 お姉ちゃんがひとつ、大きなアクビをして、その身を私に委ねる。


「いただきまーす。ちゅっ、ちゅるっ、ちゅぷぁ……。……今日もおいしいよ。お姉ちゃんの涙」


 私達姉妹は二人とも、愛する人の涙から以外、栄養が摂れなくなった。涙の味の一滴一滴が濃厚に、鮮明に伝わってくる分、そのほかの飲食物に対する味覚は、完全に失われた。

 私達姉妹にとって、その相手は、お互い。

 私達姉妹は、味覚を代償にして、食物連鎖がお互いの中のみで完結できるようになった。


 つまり、どちらかが生きて、涙を流せば、相手を生かせられる。このサイクルが、途切れることのない限り。


「お姉ちゃん。私達が家出したのって、いつだったっけ?」

「もう忘れちゃったよ。ろくに飲み物も食べ物も与えられなかった、あんな家のことなんか」

「空腹に耐えきれなくて、お互いの涙で塩分を摂っていたら、いつの間にか涙だけで生きていけるようになったんだもんね。……ねぇ、お姉ちゃん」

「なに?」

「明日は、どこに行こっか?」

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