喜/キ/希
閲覧ありがとうございます!
「どう……?」
「……ごめん、叶恵。やっぱり、味がしない」
「あら……」
「まさか、本当に……」
望ちゃんは、私の得意料理であるだし巻き玉子を食べて、言った。その言葉に、私の両親は声を詰まらせる。
「ね? 望ちゃん、やっぱり私の涙からしか、栄養が摂れないいんだよ。だから、いいでしょ? 私と望ちゃんが付き合っても」
◇
「ねぇ、叶恵。お腹……すいたな」
「うん、いいよ」
私の自室で、望ちゃんが空腹を訴えてきた。私はゆっくりと目を閉じて、待つ。
「んっ。はふっ。ん、んちゅ、んふぅ、うん……」
「ん。んん、ちゅはぁ。うんんうぅ」
重なりあう、私達の口。息が、水分が、温もりが、全て一つに溶け合っていく。
それが一分くらい続いて、離れる。私はすっかりトロトロに蕩け切っていて、目から涙が流れる。
「ちゅっ……ずずずっ」
「んっ、はぁ、はぁあっ!」
私の目尻に当てられた望ちゃんの口から、私の涙を吸う音が聞こえてくる。その魅惑的な音が至近距離で私の鼓膜を振動させることで、私は思わず歓喜の声を漏らしてしまう。
突然、私の涙からしか栄養が摂れなくなった時は驚いたけど、そのおかげで、親を説得させることができた。私達を一生繋ぎ止めるための、世間の目を跳ね返す動機もできた。
大好きな女の子が、私無しでは生きられないなんて…………。
…………すごく、嬉しい!
「望ちゃん。私が、一生養ってあげるね」