ホームレス娘との約束。2
「結婚……?」
突然の言葉に固まってしまった。
この女の子はいきなり何を言い出すのであろうか。
昨日知り合った見ず知らずの男に結婚しよう、なんて……。
いや……この子は、それだけ '人生を捨てている' のかもしれない。
劣悪な環境に生まれ、育てられ、その環境から逃げ出してきた。
「もし……見つかってしまったら?」
その先の解答はおおよそ見当がついていた。
人生を捨てている女の子。
警察に見つかり、両親の元へ帰され、再び劣悪な環境に戻るくらいなら……。
「その時は……一緒に死のうか」
お兄さんは捕まっちゃうし、私もあんな親の所に帰るのは嫌だもん。最後までお兄さんと一緒がいい。と、続けた。
やはり。
この子は人生に絶望し、こんな人生からいち早く脱落してしまいたいと、そう考えていた。
悲しみが込み上げた。
こんな歳の女の子が、既に人生を捨てているのだ。
自分も人生を謳歌しているわけではないが、少なくとも死を考えるほどの状況には、これまで相対してこなかった。
女の子の決意は相当なものだったであろう。
「……わかった。死ななくていいように、俺は君を守るよ」
自分にとっても、それは、大きな決意だった。
どんな手を使っても守ると、大きな決心だった。
惰性に流されていた日常、大きな転機だった。
ありがとう。と、女の子は笑いながら少し、涙を浮かべていたように見えた。