ホームレス娘との約束。
005
朝日のまぶしさで目が覚める。
結局、昨日は女の子はうちに泊まることとなった。
当面の見通しも立たなく、不安も多いが、とりあえずはこの子の様子をみよう。
居間に行き、テレビをつけ、朝食の準備を始める。
朝はパンに目玉焼き。これに限る。
冷蔵庫から卵と食パンを取り出している時に印象的なニュース番組の音が耳に入ってきた。
耳だけ傾けていたニュース番組を思わず注視してしまう。
「行方不明の少女ですが、行方がわからなくなったのは下校中の……」
これって、あの子だよな……。
テレビにあの女の子の写真が映る。
やっぱり、あの子が言っている事は本当だったのか。
虐待なんて、本当は嘘であってほしい、あの怪我は実は転んだだけでした、とか、そういうことであって欲しい。と、心のどこかで考えていたのだろうか、何故か冷や汗が一筋、額を伝った。
「心配でしかたないです……。はやく帰ってきてほしい」
インタビュワーに向かって涙を浮かべている人がカメラに映った。
この人が、あの子を? 顔は映っていないが、清楚で上品な洋服を身に着けている母親らしき人物がそこにいた。
「世間の目が気になるんだよ。この人は……。こうなったのもこの人のせいなのにね」
気がつくと、後ろに女の子が立っていた。
この子のことを考えテレビのチャンネルを回す。
「この少女は……」
「下校中に……」
「行方は依然として不明です」
どのチャンネルもこの女の子のことを取り上げていた。よっぽど他のニュースがないんだね。
と、女の子はせせら笑った。
「ねえ」
女の子が口を開く。
「こんなニュースになっちゃって……もし私が見つかったらお兄さんは捕まっちゃうのかな」
たしかに、少女誘拐犯として、メディアは喜んで晒しあげるだろう。しかし……いまこの子を帰したら……。
「……大丈夫だよ、そうならないように……君を守る」
女の子の方を見る。少し笑みを浮かべたように見えた。
「じゃあ……賭けをしようか」
「賭け……?」
「私が見つからずに親が諦めて、この騒ぎが終わったら……」
女の子は何か決心したように、大きく息を吸った。
「私と……結婚しよう?」