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ホームレス娘と仲良くしたい!  作者: 結城 新太
5/19

ホームレス娘との生活の始まり。

003


少女は自らをホームレスだと自己紹介した。


その年齢でホームレス? 親はなにしている?

ご飯はどうしていた? 風呂は?

様々な疑問が浮かんだ。


こういう時はどうするべきだろうか、本来ならば警察に保護を要請するべきだろうか。

しかし、この女の子を放っておくことは……。


自分にはできなかった。




ーーー


勢いで家につれこんでしまったけど、これって普通に誘拐になるんじゃないのか?

明日のニュースのトップを飾るなんてことにも……。

いや、考えるのはやめておこう。


「腹、減ってる?」


女の子に尋ねる。少しの沈黙の後に、首を縦に降った。


「ん。じゃあ買ってくるから待っててよ、その間に風呂貸してあげるから入りな」


居間にある押入れには自分と、そして姉が着れなくなった洋服がしまってある。その中から女の子が着れそうなサイズ感の服を引っ張りだし、バスタオルと共に女の子に差し出した。


「姉のおさがりだけど……、嫌じゃなかったらこれ着ていいよ、風呂はそっちの扉ね」


こくりと頷き、風呂の扉の方へよろよろと歩いていった。


再び、財布と鍵、携帯を持ち、玄関の扉を開け、今度こそコンビニへ向かった。


ーーー


やかんから甲高い音が鳴り響く。

深夜に腹を満たす物といえば、カップラーメンくらいしか思い浮かばなかった。

昼間にも'それ'を食べた女の子には悪いが、他の味を買ってきたので許して欲しい。


コンビニから帰ってきた時、女の子は先ほど貸した姉のTシャツの上に、もともと着ていたジャージを羽織り、居間のテーブルの前にポツンと座り、涙を浮かべていた。

焦って、どうしたの? と、聞くと、なんでもない、と言い、涙を拭っていた。


余程の事情があるのか、それとも見ず知らずの男に家に連れ込まれた恐怖か……。前者だと信じたい。が、限りなく後者の可能性が高い……。夜が開けたら親御さんの元へ帰してあげよう……。


「ほら、食べな」


三分たった頃を見計らい、カップラーメンを台所からテーブルに移し、女の子へ差し出した。

自分はさっき食べられなかったシーフードヌードルが無性に食べたくなったのでそれを買い、女の子の分はしょうゆヌードルを買ってきた。これも自分の中のオススメ商品だ。


女の子は昼間と同様に、勢いよく麺をすすり、あっという間に完食した。やはりあれからなにも食べていなかったのだろう。


程なくして自分もシーフードヌードルを食べ終わり、女の子に事情を聞くことにした。


「えと、話を聞いてもいい?」


女の子は俯いてしまった。


「なんで……。」


か細い声が聞こえてくる。


「なんで……私にそんな優しくしてくれるの……」


「なんでって……女の子がそんな状況で……放っておけない……と思ったからかな」


優しく、と女の子は言ったが、自分は優しくしたつもりはない……ただのおせっかい焼きだ……と、自分の中では思っていた。が、それは女の子にとってはそういうものだったのだろう。

この程度で優しくされた、と認識するなんて、この子はこれまでどれだけ厳しく躾られていたのだろう……と考えていたが、女の子からの言葉は自分が思っていたより、はるかに深刻な状況だった。

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