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ホームレス娘と仲良くしたい!  作者: 結城 新太
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ホームレス娘との出会い。2

こんな暑い中、さらに日光を浴びて熱くなっている土管の中で女の子がひとり。かくれんぼ? いやまさか。周りに他の子供は見当たらないし、かくれんぼだとしたら、隠れている途中に眠ったりしないだろう。


「だ、大丈夫?」


熱射病を危惧し、女の子に話しかける。うぅん……とうめき声の様なものが聞こえたのでひとまず生きているようで安堵する。


「ちょ、おい、大丈夫か?」


女の子の肩の辺りに触れ、ゆすってみる。

と、その瞬間、勢いよく女の子が起き上がり、ゴォンという鈍い音があたりに響き渡った。


土管の中であり、天井……というか、土管の高さはせいぜい1メートルもないほどなので、上部に頭をぶつけてしまっていた。さきほどの、うぅん……とは違うトーンの、うぅん……が聞こえてくる。


「ああ…うん、大丈夫……?」


さっきから大丈夫? としか言っていない気がするが、このような場面に直面したとき、それ以外の言葉が出てくるほどの語彙力はなかった。


「うぅ……痛い……」


痛いのは見ればわかる。

起きあがった女の子の姿をよく見ると、服がかなり汚れている、髪もボサボサだ。年齢的には……13、14歳くらいであろうか、自分よりはかなり幼く見える。その時、女の子の視線がこちらへ向いた。


「あっ……」


頭を抑えながら土管の中を這いずり寄ってくる。


「ごは…」


ごは? どういう意味だ? と少し考えた瞬間に、手に握っていたビニール袋は女の子に奪い取られた。

突然のことに呆気に取られている間に、女の子はビニール袋の中のパンを取り出し貪っていた。


「ちょ、おい、なにしてんだよ」


こちらの声も、今や女の子の耳には届いていないのか、よほど腹が減っていたのか、パンを貪る手を止める気配はない。あっという間に女の子の胃袋の中に消えてしまった。

次いで女の子がビニール袋から取り出したのはカップラーメンだった。一瞬、ん? という顔を浮かべ、ビニールを破き、フタを開け、なんと生の麺をかじり始めた。


「うぇ、まず……」


人の昼飯を奪っておいてまずいとはこれいかに。そもそもこの女の子はカップラーメンの存在を知らないのか?


「いや……それそのまま食うもんじゃねえから」


「え、あ……」


悲しそうな表情を浮かべる。


「はあ、まあいいや、ちょっとまってな、その袋の中におにぎりも入ってるから食っていいよ」


そういって少しかじってある生麺とカップ麺の容器を持ち立ち上がる。

自分はなんて善人であり、そしておせっかいやきなのだろうか。というか勝手に飯食わせたら家の人に悪いんじゃないか、といろいろな思いを馳せながら、お湯を調達するために、一旦家に帰ることにした。



ーーー

しばらくすると、やかんから高い音が響いてきた。お湯が湧いた合図だ。


カップ麺にお湯を注ぎ、再び公園へ向かった。


「ほら、これ、食べなよ、熱いから気をつけてな」


土管の中へ潜り込み女の子にお湯の入ったカップ麺を手渡す。


「ありが…」


カップ麺を受け取った女の子は、不思議そうにそのパッケージを見つめていた。やはりカップ麺というものの存在を今しがた初めて知った、という反応に思える。


「もう3分たったと思うから食えると思うよ?」


そう語りかけても女の子はこちらを見たり、カップ麺を見たり。一向に手をつけようとしない。

普通に考えたら見ず知らずの人間から食料を渡されて何も考えずに食う人はあまりいないだろう。もっともこの女の子は渡される前から奪い取ったのだが。

さっきの生麺のまずさを思い出しているのだろうか。

沈黙に耐えきれなくなり、貸してみ、とカップ麺を女の子から受け取り、蓋を開け、1口食べて見せた。やはりシーフードヌードルうまい。


「あ……」


女の子にカップ麺を返すと、恐る恐る、麺を箸ですくい、その口元まで持っていった。


「ん、おいし……」


そういうと、勢いよく麺をすすり、あっという間にスープまで飲み干してしまった。よほど腹が減っていたのだろうか。


「あの……ありがと」


「ん、なんでこんな暑い所にいんの?」


「わたし……いえない……」


言えない? なにか重要な問題があったのだろうか、言えないというならば深く追求するつもりもない。


「あー、ここ暑いでしょ、親御さん心配するから早めに帰りなよ? んじゃ」


といって立ち上がり、家へ帰ることにする。


先ほどエアコンをつけておいた、楽園が俺を待っている!

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