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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

蕪と虫

作者: mokin

完全にダジャレですが、楽しんでもらえるとうれしいです。深夜テンションで書き上げたので、校正をまた行います。


文章は相変わらず下手くそなのでお手柔らかにお願いいたします。

 重い頭にあるのは、募るこの思いだけであった。少年は、夏のにおいに誘われて深い森の中へと入っていった。「びいと」と名乗ったこの少年は、何を一体考えているのだろうか。


_________________________________

 

「こんばんは。おじさん。」


 そういった少年に対し、私は、ひどく混乱していた。夜も10時を回ろうかという時間に、このダンボールと青いビニールシートでできた深淵たる我が自宅に、ずかずかと入り込んできた此の少年は、一体誰なのだろうか。


 「君は、一体誰だい。ここは私の大事な家なのだけども。」


 「僕の名前は、びいと。昆虫採集をしています。お邪魔します。」


 変に律儀な、この少年は、「びいと」というらしい。最近は、きらきらねーむというものも流行っていると聞いたことがある。とても外人には見えないので、その類なのだろう。昆虫採集といったが、我が自宅には、一般に不快とされるような昆虫しか見たことがないのだが・・・。


 「私の家には、虫はいないよ。こんな遅くに子供が夜を出歩くものじゃない。帰りなさい」


 我ながら紳士的な対応だったと思う。普通の家ならば、いや私の家が普通でないと言っているわけではないのだが、子供が勝手に夜中上がりこめば、則、通報だろう。しかしそんなことをすれば、私もあぶない身の上だ。そんなことは関係なく、ただただ私が紳士たる人間であったことがこの少年にとっても救いだったことだろう。


 「あんたじゃないと、はいれないんだよ。」


_________________________________


 次の瞬間には、少し青色がかった我が自宅の天井はなく、紙でできた丈夫な壁もそこにはなかった。あったのは、いや、そこにいたのは、びいとと名乗る少年のみであった。


 「ここは・・・?」

 「ありがとう。おじさん。やっぱりここだった!やっとたどり着いたよ!!」


 あたりは、霧に覆われていたようで、徐々に霧が薄くなるにつれ、ここが森の中であることが明らかにな

ってきた。少なくとも、我が自宅が粉微塵になったわけではなさそうだ。


 「君は、一体・・・?」

 「ごめんね。おじさんの、いや、あなたの力が必要だったんです。」


 びいとと名乗る少年は、事情を話始めた。しかし、小学生も高学年かと思えるほど幼いその少年の言葉は、難解であった。決して私が頭が悪いわけではない。此の少年の頭脳がおかしいのだ。いわゆる天才なのだろう。


 「・・・つまり、被験者の脳内に介在する情報を現実世界に具現化することで、記憶に対する干渉が起きることなく精神世界に侵入することが可能となる。そのため、失われた遺産や、絶滅した生物、あるいは、空想上の存在であったとしても現実世界に存在させることができる。そのようなものです。わかりましたか?」


 「あ、ああ・・・。君は天才なのだろうが、もう少し簡潔に・・・」


 「てんさいっていうな!!」


 私の言葉を遮るように、歳相応の子供っぽい対応をみせた此の少年は、ひどく怒っているようだった。

 「なんだよ!!みんな僕のことを甜菜(てんさい)とバカにしやがって・・。僕だって好きで農家の息子として生まれたわけじゃない!あの”おつむ”の足りない両親が、たかだか、砂糖大根なんぞを育てているからって、(びいと)なんて名づけやがってっ!バカが・・ううぅ・・。」

 泣き始めたこの”てんさい”にどのような言葉をかければよいかはわからなかったが、とりあえず、いままでの言葉を反復しながら、ここが私の心にある風景であることを確信した。


 「ここは、あの時の・・・。」


 「ひっく・・・。思い出しましたか?ここは、あなたが、あなただけが知っている。採集地のはずです。」


 「ああ・・・。」


_________________________________


 昔は、私も昆虫採集に行く時代もあった。いや、金になる時代だった。珍しい昆虫は、採集する場所が違いだけで、価値が跳ね上がった。そういう時代だった。ある特定の採集地でしかとれない固有種と呼ばれる昆虫は、マニアが高く買ってくれていた。こんな楽な商売はない。そうか、じゃあ、うじゃうじゃといるこの虫も採集地がなくなれば・・・。


_________________________________


 「さあ、行きましょう。案内してください。おじさん。」

 「ああ、この先に、甘い蜜がでる木がある。そこに来ているはずだ。」

 「なるほど、樹液(じゅえき)というやつですね。初めてみます」

 「ああ・・・。」




_________________________________


 「さあ!今回のオークションの目玉は、あの幻の採集地!日本から採集されたという・・・」

 「おお!日本かぁ!なんでも、”木”という高さが2mを超える植物があったそうだぞ。」

 「さぞかし、たくさんの昆虫がいたんだろうなあ!でもなんで今は何もいないんだ?」

 「ああ、それは・・・。」


_________________________________


 

 しばらく歩くと、甘酸っぱいにおいが次第に強くなり、少年の10倍はあろうかという大木の樹皮から、琥珀色の液体が染み出し、周りを囲むようにその、昆虫は重い角を掲げていた。

 「これが・・・。生きている個体は初めてみました。」

 「久々に見るといいものだな。ただの虫だが」

 「・・・」

 少年は、黙ったまま、ただ黙々とその虫を眺め、観察していた。

 「採集()らないのか?」

 「僕がほしいのは、標本じゃないので。」

 「そうか。」



_________________________________


 「この薬さえあれば、人にはまったくの無害で!害虫も、植物もあなたの前からいなくなります!」

 


_________________________________


 「おい!あの薬は、拡散範囲が広すぎる・・・。日本から植物がなくなるぞ・・・。」




_________________________________


 「次のニュースです。新薬開発のデータ改ざんによって起訴された・・・氏が失踪し・・」




・・・

 空が明るくなり始め、樹液から1匹また1匹と飛び去る昆虫がいなくなった頃。

 

 「じゃあ、僕はこれで帰ります。本当にありがとうございました。」


 「なあ少年・・・。私はどうやって帰ればいいんだね?」


 「この世界は、現実世界に存在していますが、あなたの精神ともつながっています。あなたが思う場所に帰ることができますよ。」


 「そうか・・。なあ少年。君は・・・私を憎むかね?」


 40歳差はあろう、その天才少年に対して、恥ずかしげもなく、正直な意見を求めたい。そう思ってしまった。それが、なんの贖罪になる理由でもない。ただ、少し救われる気がしていた。


 「・・・あなたが過去行ったことは、科学者として最低だと思います。ただ、ここまで僕の研究に貢献して頂けたあなたを、そう、僕があなたを憎む道理はありませんよ。」


 少し、恥ずかしそうに、そういった少年は、歳相応のはにかみを見せ、私を救ってくれた。


 「あぁ・・・。ありがとう」









_________________________________


 「・・・」

 「はい、びいとです。もしもし」

 「はい、実験は成功です!観察もできましたよ!」

 「あー、いや、やっぱり、昆虫採集なら少年のほうがよいかと思って・・。」

 「精神世界なので、なんでもありですからね。」

 「ははっ、あー、でも、現実にもってくることはできませんでした。」

 「おじさん途中から、だいぶ意識とんでたんで・・・」

 「最後まで意識あってよかったです。途中で終わると僕の精神も危ないですから」

 「肉体と精神が乖離しすぎて、おじさんが廃人になっちゃいましたけどOKでした?」

 「はい、まあ改良できるならしてみます。では、研究室に戻ります。はい。」


 


 「アァ・・ア・・リ・・ガ・・・ト」


 「ありがとうね!おじさん!」

 

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