カオルユウヒ
【第1章アンちゃんとお星様】
アンちゃんはうさぎ。
独りぼっちは少し苦手。
友達は.....まだいない。
好きなものはたくさん。
嫌いって、なぁに?
アンちゃんは夜になると、
お星様とおしゃべりができるの。
【あら、アンちゃんこんばんは】
「こんばんは、お星様!今日はね、お花でかんむりを作ったの! 」
【ステキね、アンちゃん】
「シロツメクサとクローバーと、 いっぱいいっぱい編んだのよ! 」
【そうなの、もっと近くで見たいわね】
「そんなの簡単よ! お星様が降りてくればいいんだわ! 」
【アンちゃんごめんなさい、それはできないの...】
「どうして? 」
お星様は困ってしまいました。
だって降りて行ったらもう二度と
アンちゃんと会えなくなるから。
「ねぇどうして? 早く近くにきてよ、お星様! 」
お星様はすこしとまどい、
そして優しく語りかけました。
【そうだわアンちゃん、かんむりを もっともっと作って見せてくれるかしら? たくさん作ったら、今のかんむりよりも上手になるわね?
そうしたら、私につくり方を教えてちょうだい? 】
「わかったわ! お星様、約束ね! 」
【そうね、〝約束″よ】
「でも、どうしてわかったの? 実はねこれ、初めてつくったのよ! 」
【アンちゃんのことはよく知ってるわ? 夜しか会えないけど、ずっとアンちゃんのことを見てきたんですもの】
そう。
お星様は夜にしか現れません。
だけどアンちゃんが生まれてからずっと、アンちゃんが産まれたあの夜からずっと、お星様はアンちゃんを見守ってきたのです。
そしてなぜアンちゃんが独りなのか知っているのも、お星様だけなのでした。
「だから私、夜がスキ。お星様と会える夜が好き。お昼はお昼でお散歩するけど、お星様がいたらきっと楽しいわ? 」
【私はこの静かな夜に、アンちゃんとおしゃべりできるのがすごく楽しいのよ? いつも待っててくれてありがとう。アンちゃん】
「ううん、いいのよ...ふぁ〜....お星様ぁ、これ...作ったときね......」
アンちゃんはそのまま眠ってしまいました。
【アンちゃんありがとう。あなたは本当に優しい子。かんむり、近くで見たかったわ...。手にとって、褒めてあげたかったわ...。私が星でごめんなさい。〝どうかアンちゃんに近くにいれるお友達ができますように...″】
そうお星様は願い、アンちゃんに葉っぱのふとんをかけてあげるよう、木々たちに頼みました。
そしてアンちゃんが眠っている間お星様は、やわらかな光でずっとアンちゃんを照らし続けるのでした。
朝を迎えるまで。
【第2章 出会いのはじまり】
小鳥のうたで、アンちゃんは目を覚ましました。
「お星様...またあとでね」
目をこすりながらつぶやきます。
アンちゃんの1日は、この言葉で始まるのです。
空気が澄んで、朝日がキラキラとかがやく、ステキな1日のはじまり。
「お日様、おはよう! 今日は川の先まで行ってみようかなぁ」
朝ごはんに木の実と野いちごを食べ、葉っぱとツタで作った〝お弁当箱″をさげて、お星様と作った歌をうたいながら元気に歩きだします。
「あっ! あの切りカブで、すこし休もうかしら」
お日様がお空の真ん中にくるころ、アンちゃんはひと休みすることにしました。
「のどがかわいちゃった。〝しずくさん″どこかしら」
アンちゃんは水筒をもっていません。のどがかわくといつも、水がすきとおってサラサラな川のお水を飲むか、寒い朝のうちに霧があつまり、葉っぱのうえにできた水滴をゆっくり味わうのでした。
「あらまぁ!! 大変だわ! 」
アンちゃんが見つめた先には、〝しずく″が付いてまるでダイアモンドのように輝くクモの巣にチョウチョが引っかかっていて、何とか逃げようと、その小さな羽をパタパタとふるわせていたのでした。
「チョウチョさん、今たすけるからね! すこしだけ動かないでね? 」
アンちゃんはチョウチョが傷つかないように、そして、クモの巣を壊さないようにそっと、絡みつく糸から助けてあげました。
チョウチョは大喜びで、
『うさぎさんありがとう!! お礼に何かあげたいわ。けれど、何がいいかしら...』
アンちゃんはすこし考えてから
「それじゃあ、すてきなお花畑へつれてってちょうだい? 」
チョウチョはアンちゃんをお花畑へとつれて行きました。チョウチョが大切にしている、特別な場所へと。
「まぁ! なんてステキなの! 黄色に桃色に、本当にすてき!
チョウチョさんありがとう。かんむりを作りたいんだけど、すこしお花をもらってもいいかしら? 」
チョウチョのご飯は花の蜜。アンちゃんはその事を知っていました。
するとチョウチョは、
『うさぎさんは命を助けてくれたんだもの。全部は困るけれど、どうぞお摘みになって? きっとすてきなかんむりになるわ? 』
「ありがとうチョウチョさん、本当にありがとう」
アンちゃんは1本1本ていねいに編んでいきました。時が経つのを忘れるほど。気づいたら〝お弁当″を食べるのも忘れていて、日が沈みかけていました。
「大変だわ! そろそろ帰らなくちゃ」
もっと暗くなったら、お星様が現れてしまいます。それに間に合うようにアンちゃんは急いで帰りました。
「きのうよりも上手にできたわ! 早くお星様に見せたいなぁ」
アンちゃんはわくわくしていました。
【こんばんはアンちゃん、今日はすこしだけ遅かったわね? 一体どんな楽しいことをしていたのかしら? 】
アンちゃんは嬉しそうに、
「うふふ! お星様は本当に何でもわかっちゃうのね! ほら見て! きのうより上手にできたの! 」
【本当にすてきね、きのうよりも上手だわ! そのお花も、いろんな色があってすごくキレイね? 】
「うふふ、チョウチョさんにつれてってもらったのよ! 」
お星様はアンちゃんの事は何でも知っています。
でもその事は言いません。そして優しく問いかけました。
【アンちゃんもしかして、そのチョウチョさんを助けたりしたのかしら? 】
アンちゃんは、えっ! と驚き
「どうしてわかったの?お星様! 」
と、聞きました。
【アンちゃんそのお花はね、マーガレットっていうのよ? 】
「まぁがれっと...? 」
【そうよ、マーガレット。アンちゃんとチョウチョさんは、お友達ですよっていうお花なのよ。だからアンちゃんが、チョウチョさんに何かいいことをしたのかしらって思ったのよ】
アンちゃんは、まぁるい目をもっと丸くして、
「やっぱりお星様はすごいわ! そうよ、今日ね、クモの巣に引っかかっていたチョウチョさんを助けたのよ! それでね、お花畑につれてってもらったの」
お星様はにっこりしました。
そして、
【そうなの、お友達ができてよかったわね、アンちゃん】
と、優しくアンちゃんを照らします。
するとアンちゃんはすこしだけ困った顔をしてたずねました。
「お星様、お友達ってなぁに? 」
お星様は、アンちゃんがそう聞いてくるのをわかっていたかのように、こう答えました。
【お友達っていうのはね、一緒にあそんだり、おしゃべりしたり、楽しい時や悲しい時もそばにいてくれるのよ。今日のアンちゃんみたいに助け合ったりもするのよ】
アンちゃんは笑顔になって、
「とってもステキ! 明日もチョウチョさんに会いたいなぁ」
アンちゃんはそう言うと、
「おやすみなさい、お星様」
と言いました。
そしてアンちゃんは、自分で見つけた〝おふとん″の葉っぱをかけてお星様が照らす光の下で、すやすやと眠り始めるのでした。
【第3章 3兄弟】
それからアンちゃんはチョウチョと遊ぶようになりました。
一緒にお散歩をしたり、おしゃべりをしたり、アンちゃんは初めてできた″お友達″と毎日のように一緒にいました。
でも変わらずお星様が現れるころにはちゃんと帰って、お星様にチョウチョとの話をしているときに眠ってしまうのでした。
「お星様...またあとでね」
このころになると咲いている花も変わり
朝はちょっと寒くて、お昼はお日様がギラギラと照りつける夏の季節になっていました。
「今日はチョウチョさんと何をして遊ぼうかしら? 」
チョウチョが川辺に行ってみましょうと言ったので、アンちゃんたちは川の方に向かいました。
「わぁー! お水がキラキラしていて、とってもキレイね! チョウチョさん! 」
『そうね! 私は羽がぬれてしまったらいらないから、泳ぐ事はできないけど、泳げたら気持ちが良さそうね、アンちゃん! 』
アンちゃんは小さな足を、ちょんっと水の中に入れました。
アンちゃんは泳ぐのが苦手でした。苦手というよりも、ちょっとだけ、こわいなぁという気持ちがあったのです。
「どこか、川を渡れるところはないかしら? 」
そう言って、しばらく川のほとりを歩いていると、カモノハシの3兄弟が泣いていました。
「カモノハシさん、どうしたの? 」
アンちゃんは心配そうに言いました。
長男:僕たちみんなで森へ冒険に行ったんだ。お母さんもいたのに、気がついたらいなくなってて...
三男:ママー...! お兄ちゃん何とかしてよ!! ママー...!!!
次男:泣くなよ。兄ちゃんだって困ってるだろ? なぁ、兄ちゃん、この辺を探そうぜ?
アンちゃんは不思議な気持ちになりました。
「お母さんって? 」
アンちゃんは3兄弟にききました。
知らなかったのです。
カモノハシたちは、つぎつぎに言います。
[お母さんだよ! 僕たちや君を産んだママ! 君にもお母さんはいるだろう? ]
アンちゃんはうつむいて、それ以上カモノハシたちに何も聞けませんでした。
アンちゃんとチョウチョとカモノハシでしばらく辺りを探しましたが、この日は〝お母さん″を見つけることはできませんでした。
カモノハシたちが寝られる場所を見つけたところで、また明日もくるからねとアンちゃんとチョウチョは帰りました。
その日の夜、アンちゃんは元気がありませんでした。
【アンちゃん、こんばんは。どうしたの? 何かあったのかしら? 】
お星様は優しくききました。
アンちゃんは何も言いませんでしたが、
しばらくしてからすこしだけ顔をあげてお星様に聞きました。
「お星様、どうして私にはお母さんがいないの? 」
お星様はこの時がくるのをわかっていたかのように、優しく、優しく言いました。
【今、アンちゃんのそばにはお母さんはいないけれど、アンちゃんにはお母さんもお父さんもちゃんといるのよ? 】
アンちゃんは、まぁるい目をもっと丸くしました。
「本当?! お星様! 」
【えぇ、本当よ。ちゃんといるわ】
「じゃあ、どこにいるの? 」
お星様はすこし考えからこう言いました。
【ごめんなさい、それは私にもわからないわ。だけど、お母さんもお父さんも、アンちゃんがそばにいなくてさみしくて、悲しんでいるはずよ? 家族ですもの】
「かぞく? 」
【そうよ、家族。お家に帰ったらアンちゃんを待っててくれて、一緒にご飯を食べたり、お風呂に入ったり、アンちゃんが眠るまで一緒にいてくれて、朝起きてもアンちゃんのそばにいてくれて、お友達に言えないことも家族になら話せるのよ?
】
アンちゃんは、うっとりしながら
「家族って、ステキね!! 」
と言いました。
【そうよ、家族ってステキなのよ】
お星様は言いました。
「家族がいたら、いいなぁ」
【そうね、アンちゃん】
お星様はその言葉しか言えませんでした。
そしてしばらくするとまた、アンちゃんはお星様の光の下で眠ってしまうのでした。
【アンちゃん。かわいいアンちゃん。どうか、さみしがらないで。私はアンちゃんとおしゃべりをして、こうして光を照らすことしかできないけれど、私はアンちゃんの味方よ。〝どうかアンちゃんに、頼れる家族ができますように..″】
いつものように木々たちに〝おふとん″を頼んで、アンちゃんをやわらかな光で包むのでした。
【第4章 もう一回】
次の日の朝。
「 お星様..またあとでね」
そう言うとアンちゃんは、チョウチョと一緒にカモノハシの3兄弟のところへ急ぎました。
すると、また泣き声が聞こえてきました。
3兄弟:[ママー!! お母さーん!! うぅ...ママー!! ]
アンちゃんは心配して、そうっと〝ねどこ″をのぞきました。
すると、3兄弟ともう一人、3兄弟よりも背が高くて、今すぐにでも抱きつきたくなるようなもう一人のカモノハシが、一番小さなカモノハシの兄弟を抱っこしながら、泣くのをなだめていました。
アンちゃんは、ハッとしました。
そうです。
アンちゃんはこの時はじめて″お母さん″という存在を知ったのでした。
カモノハシのお兄ちゃんがアンちゃんを見つけ、〝お母さん″にきのうの出来事を話すと、カモノハシのお母さんはアンちゃんをギュッと抱きしめて〈ありがとう〉と言ったのでした。
初めて、体をぎゅーっとされたアンちゃんは、しばらくぼぅっとしてしまいました。
ぎゅーっとされていた時間が、アンちゃんにとってとても幸せな時間だったのです。
〝ぎゅーっ″がおわると、カモノハシのお母さんは、見つけられなくてごめんなさいと3兄弟にあやまっていました。
そして、もうみんなを見失わないようにずっとそばに付いているから、あなたたちも勝手にどこかに行ったりしないでねと、頭をポンポンとしました。
「...もう一回」
カモノハシのお母さんはアンちゃんを見ました。
「もう一回、ぎゅうって➖」
アンちゃんが最後まで言うまえに、カモノハシのお母さんはアンちゃんを優しく、そして力強くぎゅーっとするのでした。
〝お母さん″はアンちゃんの気持ちがわかったのです。
そしてアンちゃんを受け入れたのです。
そのあとカモノハシのお家へ行き、たくさん話をして〝ご飯″を一緒に食べました。
暗くなってきたので帰らなくちゃとアンちゃんが言うと、カモノハシのお母さんが
〈アンちゃん、ずっとここにいていいのよ? 〉
と優しく言いましたが、アンちゃんは
「ありがとう。でも帰らなくちゃ」
と言いました。
〈じゃあアンちゃんが来たいときに、いつでも来てね〉
とカモノハシのお母さんは言い、またぎゅーっと抱きしめて、お家の中にかざっていたヒルガオをアンちゃんの頭にかざりました。
「とってもステキね! ありがとう! 」
そしてアンちゃんは、もうすぐ現れるお星様のもとへ帰りました。
【アンちゃん、こんばんは】
お星様が言います。
「こんばんは、お星様! 」
急いで帰ってきたので、息をはぁはぁ切らしながらアンちゃんは答えました。
【あらアンちゃん、その頭のお花とってもステキね】
とお星様が言うと、アンちゃんは嬉しそうにカモノハシの親子との出来事をはなしたあとに、
「いつでもおいでねって言ってくれたのよ! うふふふ! 」
と、本当に嬉しそうでした。
【そのお花を見てすぐにわかったわ。本当によかったわね、アンちゃん】
とお星様も嬉しそうに、明るい星をもっとキラキラさせました。
「どうしてすぐにわかったの? お星様」
【アンちゃん、そのお花はねヒルガオっていうお花なのよ。〝キズナ″っていう意味をもっているの】
「きずな? 」
【そう、キズナ。あなたと私は、強い心のつながりでつながっていますよ、家族のような存在ですよって意味なのよ】
アンちゃんの顔がパァッと明るくなり、
「家族!! 家族ができたのね! カモノハシの3兄弟と同じ! 家族なのね! わーい!! 」
と、はしゃぎました。
その日の夜は、アンちゃんはなかなか眠ることができませんでした。
とっても幸せだったからです。
お星様とたくさんお話をして、一緒に作った歌をうたいました。
「おやすみなさい、お星様」
夜の風が気持ちよく、木々がゆれる音を聞きながら、アンちゃんは眠りにつくのでした。
【本当によかったねアンちゃん。だいすきよ】
そうお星様はささやき、すやすやと眠るアンちゃんを優しく照らすのでした。
【第5章 じゅんび】
アンちゃんはお友達のチョウチョと、〝家族″のカモノハシの親子と、楽しい時間をたくさん過ごしました。
水あそびに、魚とり、あやとりに、おにごっこ。
すべてが初めてで、アンちゃんはとっても幸せでした。
木の葉が赤や黄色になり、だんだんと秋のにおいがしてきました。
「お星様、またあとでね」
と言い、アンちゃんはカモノハシの親子のもとへ行きました。
するとカモノハシの親子がなんだかいそがしそうにしていました。
「こんにちは! なんだかとてもいそがしそうね? 」
長男:あぁ! もうすぐ冬が来るから、そのための準備をしているのさ!
アンちゃんはキョトンとした顔でききます。
「冬のじゅんび? 」
次男:冬がくると、僕たちはもう外には出られないんだ。
三男:だから食べ物とかをたっくさん用意しないとダメなんだ!
アンちゃんが考えていると、カモノハシのお母さんが来ました。
〈アンちゃんこんにちは。アンちゃん、冬はどうするの? 〉
アンちゃんは困ってしまいました。
カモノハシの家族はとってもだいすき。
でも冬の間を一緒に家の中で過ごすことになったら、だいすきなお星様と会えなくなるからです。
カモノハシのお母さんはほほえんでいました。アンちゃんが困っている理由がわかったからです。
〈アンちゃん、春がきたら、また会いましょうか? 〉
とアンちゃんに言うと、アンちゃんの困っていた顔がパァッと笑顔になり「ありがとう」と言いました。
〈だから、冬の間食べ物に困らないように、秋のうちにアンちゃんの分も一緒に集めようね〉
と優しくいいました。
「ありがとう! 私もたくさん集めるわ! 」
とアンちゃんも大はりきりです。
その日の出来事をお星様に話すと、
【アンちゃん...本当にいいの? カモノハシの家族といたら、さむい冬でもあったかい家の中ですごせるのよ? 】
と、お星様は心配そうに言いました。
するとアンちゃんは、
「お星様、カモノハシの家族と出会うまえは、一人で冬をのりこえられたわ? また春に会おうねって約束もしてきたの。ちゃんと暖かくすれば大丈夫よ! 」
とアンちゃん。
お星様は涙をながしたかのように、星を一度だけ輝かせました。
チョウチョと出会って、カモノハシの親子と出会って、アンちゃんがこんなにも強くそしてたくましくなっていたことを、お星様は〝いま″知ったのでした。
【そうね、アンちゃん。私がずっと見ててあげるからね】
と言うとアンちゃんは、ふふふふ! と照れ笑いをしました。
【でもねアンちゃん、冬の間にもこわい動物も出てくるから気をつけるのよ? 】
とお星様が言うと
「そうしたら、お友達になればいいのよ! 」
と言うアンちゃんに、お星様はまた心配するのでした。
【私が星ではなく、アンちゃんのお友達や家族になれるのならば、守ってあげれるのに...】
お星様の気持ちを知っているのか知らないのか、アンちゃんはすやすやと眠るのでした。
【第6章 一人より二人】
さむいさむい冬のはじまり。
アンちゃんはとても上手に、雪で〝かまくら″をつくりました。
「よし! これでお家ができたわ! ご飯も大丈夫ね。カモノハシの家族と一緒にたくさん集めたから」
と、じまん気に鼻をヒクヒクさせました。
そして鼻歌をうたいながら、静かな森の中をお散歩するのでした。
すると木のかげからとつぜん、大きな大きなクマが出てきてアンちゃんの方へ走ってくるではありませんか。
アンちゃんはびっくりして逃げようとしましたが、足が雪にハマり、動けませんでした。
「きゃー!! たすけて!! 」
と、さけんだときになんと〝もう一人のアンちゃん″が出てきて、アンちゃんの身代わりになって、大きなクマを森の奥の方へとつれていきました。
アンちゃんは何がおこったのかわからず、その場で立ちすくんでいました。
どれくらい時間がたったのでしょう。
雪にハマってしまった足をひきぬいて、〝雪のお家″へとトボトボと歩いていたとき、《大丈夫? 》と、聞きなれない声がアンちゃんに問いかけます。
ハッとして声の方を見るとさっきの〝もう一人のアンちゃん″が息を切らせていました。
《大丈夫だった? 私、リン》
と、〝もう一人のアンちゃん″。
そうです、もう一人のアンちゃんだと思っていたのは、初めてみる〝もう一人のうさぎ″だったのです。
「あ...ありがとう! 助けてくれて本当にありがとう! 私はアンよ」
初めてみるもう一人のうさぎにアンちゃんは丸い目をもっと丸くしました。
《よろしくね、アンちゃん! 冬の間はあぶないから、注意しないとダメだよ? 》
「うん! ありがとう。今日はもうお家に帰るわね」
と言って、帰ろうとしたとき
「ねぇリンちゃん、リンちゃんはお家あるの? 」
とアンちゃん。
リンちゃんはすこし悲しげに言います。
《あったんだけど、くずれてなくなっちゃったの...》
アンちゃんはすぐに、じゃあ一緒に帰りましょう? とリンちゃんに言うと、リンちゃんは嬉しそうにピョンピョンはねました。
その日の夜は初めて、お星様とアンちゃんとリンちゃんの〝3人″でお話しをしました。
お星様も大喜びで、リンちゃんにアンちゃんをお願いねとたのみました。
3人にとってこれほど幸せな気持ちになれた日は初めてだったのかもしれません。
雪がふぶく前に、今日は眠ることにしました。
アンちゃんがつくった〝かまくら″のお家で。
【よかったね、アンちゃん。これほど心強いことはないわ。一人よりふたり、ふたりより三人】
冬の間だけは木々たちもおやすみです。葉っぱのおふとんの代わりに、アンちゃんのお家がこわれてしまわないように、お星様は寝ている木々たちを起こして、すこしだけ枝を〝しならせて″囲いをつくってくれるようにお願いをしました。
【私はこれくらいしかしてあげれないけど、これからは大丈夫ね、アンちゃん】
と、優しくアンちゃんのお家を照らすのでした。
【第7章 香る夕日】
この冬は、リンちゃんがそばにいてくれたおかげで、安全に安心に、そしてとても楽しいまいにちでした。
さむいさむい季節も、雪がだんだんと溶けはじめてきて、カモノハシたちもチョウチョも外に出はじめました。
アンちゃんはだいすきなお花が咲きはじめるこの季節がだいすきでした。
アンちゃんはみんなと一緒にお花畑に行きました。
そのお花畑は、まるで〝雲のじゅうたん″のようにシロツメクサでいっぱいでした。
アンちゃんは大喜びで、さっそくかんむりをつくりはじめました。
かんむりがうまく作れないリンちゃんにも教えられるくらいにアンちゃんはとても上手になっていました。
リンちゃんは、
《アンちゃんすごいね! とっても上手よ! お星様もきっとびっくりするわ》
といい、アンちゃんは
「早く夜にならないかなぁ」
と、ニコニコとかんむりを編みつづけました。
その日の夜アンちゃんはさっそく、現れたお星様に一番上手にできたかんむりを見せました。
【本当に上手になったわね、アンちゃん! 本当にすごいわ! 】
「お星様と〝約束″したんだもの! 上手になれるように、ずっとつくってきたの」
お星様はハッとしました。
【そうよね、約束したんだものね...。
ねぇアンちゃん、私がアンちゃんのもとへ降りて行ったら、嬉しい...? 】
と聞くと、「もちろんよ! 」とアンちゃんは元気よく答えました。
【ありがとう、とってもとっても嬉しいわ】
と言って、お星様は流れ星になり、アンちゃんのもとへと行きました。
キラキラかがやくお星様がアンちゃんを包んだとき、
【本当に上手ね! アンちゃん、本当にすごいわ! 】
と光の中から声がしてきました。
「すごいでしょう? お星様にも、作り方を教えてあげるわ! 」
【アンちゃん...。あなたは本当に優しい子。みんなに愛される子。アンちゃん、私はそろそろ行かなくてはいけないの。でも、アンちゃんならもう大丈夫ね? 】
「どこにいくの? お星様! ダメよ! そばにいてよ」
と、悲しい顔をしています。
お星様は今までよりもずっと優しく語りかけます。
【ちょっとね、行かなくてはいけないところがあるのよ。私もさみしいけれど、〝今度はアンちゃんの近くにいれますように...″】
アンちゃんは、お星様の言うことがあまりよくわかりませんでした。
お星様は降りてきて〝流れ星″になりました。
流れ星は、同じ場所にはいれないのです。
でもアンちゃんは、そのことは知らなかったのでした。
泣きそうなアンちゃんの顔をみて、お星様はこう言いました。
【お願いだから、かなしまないで?
大丈夫よ〝私が私じゃなくなっても″私はずっとアンちゃんを見守っているわ。シロツメクサはね〝約束″っていう意味なのよ。アンちゃん、また会いましょうね。〝約束″するわ】
と、アンちゃんのシロツメクサのかんむりを受けとって流れ星になり、遠くの空でキラリと光り、その姿はなくなってしまいました。
くる日もくる日も、アンちゃんはお星様を待ちました。
くもで空が見えない日も、あらしのような雨の日もずっとお星様を待ちつづけました。
そしてある日、ポカポカ気持ちがいい晴れた日に、アンちゃんはお花畑にいました。
ぼぅっとして、かんむりをつくる手がとまっていました。
お星様に会いたい、会いたい! と心の中でずっと願っていました。
お日様がだんだんと沈んでいき、空がきれいな夕やけになりました。
「私がわがままを言わなかったら、ずっと一緒にいれたんだわ、きっと...」
と、アンちゃんのまぁるい目から大粒の涙がぽろっと落ちた時、
【アンちゃん、かなしまないで? 】
と、きこえた気がしました。
アンちゃんはキョロキョロとまわりを見わたしましたが、誰の姿もありませんでした。
「そうね、お星様と〝約束″したんだもの。また会いましょうって。それまでにもっと上手になるんだもん」
と、かんむりをつくりはじめました。
春の気持ちがいい風が、お花畑のいいかおりを運んでいます。
「きっと会えるわ」
そう言ったアンちゃんのそばには、たくさんのシロツメクサの花が咲いているのでした。
fin.