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そんな俺でも良い記憶は存在する。
祖父、祖母の存在だ。祖父母には可愛がられていたと思う。良くしてくれた唯一の身内だった。
とは言っても、物心ついた頃にはみんな他界していた為に、ほとんど思い出す程の記憶はない。両親の離婚により絶縁状態になったのも原因なのだろう。
両親が離婚する事はずっと分かっていた事だ。あんな家庭は最後にはバラバラになるのは必然的だった。原因はよりによって祖父の御葬式の日の夜。父親が酔いに酔い、母親を殴ったからだ。
母親の顎の骨が外れ、ヒビまで入っていた。そこまで酷い暴力を振るったのだから別れるのは当然の結果なのだろう。
普通の子供ならショックな出来事なのだろう。しかし俺はまったくショックなどの感情は受けなかった。ある意味であの酷い家庭で耐性を作ってくれていた両親に感謝すべきなのだろう。
「ヤス君…」
こんな日まで俺を呼ぶ夢の中のあの人…。
(あなたはなぜ俺を…俺の中に現れるの…。あなたが唯一の俺の癒し…綺麗な声。もうこのまま目覚めたくないよ…。ずっとこの中であなたと一緒に…)




