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新幹線に乗っていた時間は2時間くらいだったのだが実際はもっと長く感じた。
常日頃から日常的に乗りなれていたはずだけど、いつもとは違う雰囲気…。
新幹線を降車した後は、手紙に書いてある住所を頼りにタクシーで向かった。
建物は極普通の戸建て。
ただ、ここが彼女の家かと考えていたら不思議な気分になった。
手紙やメールしか接点のなかった人の家が目の前にあるのだから。
ふぅ……
一息呼吸をついた後、
インターホンを鳴らした。
「はい」
『あ、突然失礼致します。私、トモカさんの友人のヤスと言います。』
「ヤス、さん!!!お待ちください!」
するとすぐに母親らしき人が出てきた。
『突然お尋ねして申し訳ありません。手紙読ませていただきました。』
「初めまして。遠い所をわざわざ来て頂けるとは思いませんでした…。ありがとうございます。」
『いえ、あの、手紙の内容についてなんですが…』
「あ、はい。お入りください。」
そう言って通されたのは1つの部屋だった。
見たくなかった事が現実になる。
目の前には…飾り付けた仏壇と、彼女の写真…。
遺影だった。
初対面が遺影…想像もしていなかった…。
虚しさが心の中に溢れてきて、脱力感が襲ってくる。
『何が…あったんですか…』
「……」
『だいたいの話は予想がつきます。教えてください。』
コクリ…と母親が頷いて口を開いた。
俺が読んでないメール、内容はそのままだった。
母親のちょっとした浮気心が招いた結果、まさか娘にまで手を出すとは思っていなかった事、父親もその事実を知ったが、仕事が忙しいからとあまり関与してないという事。
『そうですか…』
最後に彼女に向かって手を合わせた…
ごめんね…
気付くのが遅かったよ…
大切な友達だった。
もちろんこれからも。
俺は夢を追うよ。
ずっと心に刻みながら生きてくよ。
誰にもこの事は言わない。
たださ…
もし夢が見つかったら…
その人にだけは、いつかこの話をしてもいいよね…。
愛せる人が見つかったら…
時が来たら…
全て話すよ?……
だってさ…
君のお陰でもあるんだから……。
しかしこの両親。
何をやってんだよ。
片方は浮気。浮気なんかしたって遊んで遊ばれて終わり。
片方は仕事…はぁ…
一生会社で仕事でもしてろ。
俺は親なんて生き物はもう信じない。
もう…絶対に。
これ以来、それを誓った。




