26
直接会いたいとは思った事がなかった。
人間とは、親密な関係になればなるほど、相手にさらなる期待を抱くものである。
誰しもが持っている期待、欲望、それらの歯止めがきかなくなる。
文通、メールが一番適切な距離感。
この距離感を保っているうちは、残念感や失望感を味わう事がほとんどない。
会った事がない、と言う事が理想や妄想をそのまま現実にしてくれている。
経験がある人はわかるのだろうけど、会った瞬間にイメージが崩れた人も多いのではないだろうか。
想像や写真とは違う外見の違い、性格のズレ、理由は人それぞれなのだろうけど、男女間に限らず同姓間でもある事だろう。
理想や妄想が相手の株を上げ、実際の本人を遥かに超えた人物像にしてしまう。
例え連絡を断ったとしても、残るのは素晴らしい相手の記憶だけ。
人間の脳という物は都合よく出来ているものだ。
そういう関係があの夢の話も教えられた理由なのかも知れない。
【やっ君。前に言っていた夢の話聞きたいな!】
【そうだね。そろそろ教えてあげる。始まったのは………】
すんなり全てを伝えられた。
信じてもらえる、信じてもらえないのは別問題だった。
誰かに話をする事もないと思っていたから新鮮気分。
【そんな夢見てたんだ…すごく奥深いね。深い深い意味がありそう】
【うん。だから色々な地を歩いてる。いつか現実に夢と出会えるかなぁって。まぁただの希望だけどね】
【絶対見つかるよ!!諦めるのだけはやめてね!】
諦めるつもりはない。
希望を持つつもりもない。
唯一あったのは夢。
あの夢と出会うのが夢。
見る夢と目指す夢。




