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そんなこんな思っているうちに30分は経ってしまったと思う。
(やば…マジで早く挨拶の一言くらいはしないと…愛想のない人だと思われてしまう)
そんな時、偶然彼女が近くにやってきた。
(とりあえず話しかけてみよう。)
『あの~、噂のサオさんだよね?ヤスです。初めまして。この前はメールありがとう』
「はい。サオです。初めまして。」
ぎこちない会話…向こうは何もないだろうから普通だろうが、こちらはそんなわけにはいかない…。長年見ていた夢の女性が現実に目の前に現れたとして、まともに会話出来る人がいるのだろうか。
そんな中、ロン君が間に入ってきた。
「ね?可愛いでしょ~。」
『確かに可愛いね~(笑)』
ニコッ…彼女が微笑む。
「この笑顔が怖いのよ~(笑)」
『確かに(爆)魔性の笑顔だ(笑)』
「は?魔性の笑顔ってなんだよ…怒」
そう言うとまたニコッと微笑む彼女。
『怖っ。魔性の女』
「だろだろ(笑)怖いだろ(笑)」
「初対面の女性に失礼、だ、ろ、う、が」
またまたニコッと微笑む彼女。
(初対面?いやいや、君は初対面かも知れんが俺は長年の付き合いなんですけど…)
なんて言えるはずもない。言ったとしても信じてはもらえないだろうし、下手をしたら、口説きとも思われてしまうかも知れない。何よりもこの状況が自分自身でまだ理解出来ていない。
この後、カラオケBOXに皆で行った。俺が座っていると隣に彼女が座ってきた。
ロン君からある程度彼女の話は聞いている。
とりあえずその話題から振ってみる事に。
『サオさんて好きな人いるんだよね?』
「え?好きな人?いる事にはいるけど、相手が優柔不断でね。二股?ではないんだろうけどハッキリしないの」
『そうなんだ。どんな人?同僚か何か?』
「違うよ。この仲間内の関係者。でもヤス君は会った事もないと思う…」
『そっか。』
俺は何をしたかったのだろう。自分でもよくわからなかった。
こんな感じでこの日は解散になった。
帰りの電車の中、ロン君と二人きり。
「気が強いけどいい子だろ」
『うん。』
(気が…強い?どこが?どこが気が強いの…あれの。彼女の瞳ちゃんと見てる?あんなの気が強い振りしてるだけじゃん。彼女の瞳悲しそうだったじゃん)
「それに可愛いしね」
『そうだね。』
(確かに美人だけど、顔ばかり見てたって何もわからない…。)
「元気だし。人当たりもいいし、笑顔もいいし」
『………。』
(元気?俺にはそうは見えなかったけど?どう見たって無理にはしゃいで、作り笑顔してるようにしか見えない)
俺は彼女の事は何も知らない。けれど無駄にはしゃいで、無理に笑顔作って、我慢して自分を抑え込んでいるようにしか、どうしても見えなかった…。
彼女…笑顔の中で悲しそう…悲しい瞳してた…。俺の妄想?妄想だって構わない。俺にはそう見えたのだから…。
この日、色々話を出来た。今話しているのはほんの一部で、実際はもっと色々彼女と会話出来た。
【楽、強い、我慢強い、不思議、愛想いい、笑顔、頑固】恐らく彼女が過去に言われた事があるだろう言葉だ。容易に想像がつく。
この全てを俺は否定したいと思う。
実際は【楽にする気遣いをしていた、強がって我慢しているだけ、自分を抑え込んでるから不思議な言動になる、人に気遣いするから愛想よく見える、無理して作り笑顔、頑固なのは本心じゃない実際は素直】
たった1日だけどこれだけはわかった。
彼女ともう一度話をしてみたい。
だがあの性格で心の内側を見せてくれるのだろうか…。内側が心の内側が見たい。そう思っていた。
とにかくもう一度だけ…。
そんな日が意外と早くやってきた。




