四月
「あ、桜の花びら」
「はあ」
「お花見、したいなー」
「もち弟と」
「弟とご飯食べて、お話して、桜見て、脱がせて」
「……エヘ」
「姉ちゃんそこどいてええええええええっ!!」
「ぐはっ」
「ご、ごめん、姉ちゃん。大丈夫? 痛いよね?」
「……弟」
「はいっ」
「窓割ったの、これで何回目? というかなんでいつも窓かち割って部屋の中に入ってくるのに無傷なの?」
「身体の周りにバリア張ってるから……」
「そう。で、この窓弁償できるの?」
「うっ、ご、ごめん……ででででもぼく追いかけられてて」
「もしかして、魔王?」
「うん……」
「そっか……ま、いいよ。のちのち身体で払ってくれれば」
「いや何もよくないだろう。不埒な姉妹だな」
「うわっ」
「! 魔王さん、撒いたと思ったのに……!」
「魔王なのにハゲてる!」
「髪の毛が無かったらハゲとは極端な発想だな! 余は坊主だ!」
「……歳はいくつ」
「脂がのりはじめたチョビ髭がチャームポイントな四十三歳だが」
「私の魔王という単語への夢が今粉々に砕け散った!」
「貴様は魔王をなんだと思っているのだ……」
「エロエロ迷宮、略してエロラビに出てくる魔王は男装した幼女だったのに現実はこれか」
「余が理解できる言葉で話してはくれぬか」
「うるさいぞストーカー!」
「なっ」
「自分の半分の年齢もいかないであろう美少女の尻を追い掛け回すなんてこの児童性愛者!」
「余は尻なんて追い掛け回してないぞ!」
「おっさんの分際でコノヤロウ」
「おっさんだと? どう見ても童顔だしヒョロいし背は低いし声は高いし大学生に間違われるし……ううっ……」
「泣かせたの私じゃないからね、弟」
「わかってるよ……姉ちゃんも人のこと言えないと思うけど」
「私はただのおっぱい大きいお姉さんだもん」
「少年の尻を追い掛け回すどころか服さえ剥ぐ変態だけどね!」
「なんだ、姉の方がひどいではないか」
「おっさんというだけで下等生物なんだよだまれ」
「魔王さんはもちろん全国のおじさんたちに謝れ!」
「弟、なんで魔王の肩を持つの?!」
「ごめんね、魔王さん……うちの姉ちょっと頭がアレで」
「いや、構わないが……しかし、さっきからなぜ弟と呼ばれておるのだ? おぬしはおなごであろう?」
「!」
「!」
「ま、間違えたんですよ。ほら、うちの姉頭が」
「なるほどな」
「……うわーん!」
「?! 姉ちゃん、なに泣いてっ」
「こんなハゲに、ハゲなんかに」
「姉ちゃん、魔王さんの首、首締まってる!」
「いっそ一思いに殺」
「うわあああああ」
「ま、ままま魔法少女! たったったた助けてくれっ!!」
「~~~っ……ね、姉ちゃん! こ、こっち! こっち見て!」
「なに?! 今姉ちゃん忙しいから遊ぶならあと……で……」
「……わたし、魔王さんなんかより、お姉ちゃんの方がずっと、す、すすすすきだから!」(上目使い)
「……」
「だから……こういうの、やめよ? ね?」(上目使い+胸の前で手組み)
「いもうと……ブシュッ」
「あ、鼻血」
「!!!」
「魔王さんしっかり!」
「ぎゃあああ重い! このハゲヒョロいくせに重いよ弟助けて姉ちゃんつぶされる!」
「あーあ……」
***
「へえ、そうなんだ……魔王のくせに血が苦手なんだ」
「悪かったな! どうせ余は血液恐怖症だ!」
「あ、起きた」
「魔王さんおはよう」
「おはよう魔法少女。迷惑をかけた。すまない」
「いえいえ」
「私たちこれから花見に行くんだ。いいでしょー」
「魔王さんも一緒に行きます?」
「ちょ、おと、妹何言って」
「花見……花を見るのか?」
「ええ、花のような妹を見るの」
「桜を見ながらおいしいご飯を食べるんですよ」
「宴か。まあ、行ってやらんこともないが」
「いや断れよ」
「ね、行きましょう。人は多いほうが楽しいしなにより姉と二人きりというのはちょっと……」
「姉、言われてるぞ」
「……………………ふんっ!!!」
「うわっ鼻血」
「!!!」
「ああっ、魔王さんっ!」
「邪魔者は消えた」
「姉ちゃんのばかばかばかばかばか」
「ところで魔王と仲悪いのは魔女なんでしょ。魔法少女の仕事を邪魔する必要なくない?」
「ぼくらを追いかけるとたまにいつもはつかまらない先生がぼくらを助けに来てくれるから」
「はあ、魔女が憎くて憎くて仕方ないんだね」
「いや、どうかな」
「え?」
「そこはナイーブな問題だから」
「……弟、その話詳しく」
「~~~帰るっ!!」