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クリアライフ

クリアライフ2―――戦い―――

作者: 椿ツバサ

 眩しい太陽に顔を歪めながら僕は歩く。今日の授業も終わり、僕の親友兼悪友の石田いしだ 湊人みなと福田ふくだ 海斗かいとの誘いを断り駅裏の廃ビルの方に向かった。週に二日ぐらいのペースでここに来ている。

 この場所は過去に魔法の使えない……いや正しくは魔法が暴走したため一時的に魔法が使えなくなった魔法少女、ミント=クリア=ライトと僕、富本とみもと 秀一しゅういちが魔法の修行をした場所だ。

 僕は近くに落ちている鉄の棒を上に放り投げた。

「逆らうは重力。力の動きはすべて我のものとなる。 物体浮遊魔法スカイ・オン・スカイ!!」

 大きな声で魔法を使うために必要な魔法定義マジックセレクトを唱える落下運動を開始始めていた鉄の棒が静止した。

「いつみてもこれは不思議なもんだな」

 僕は苦笑しながら呟く。ホント、おかしなものだ。ミントと出会って僕の常識はガラリと崩れた。そのミントからは時々魔法の一つ、伝言鳩魔法メッセージバードで僕に手紙を送ってくる。

 その内容は普通の……普通ではないかもしれないがミントの身の回りに起こった出来事や新しく覚えた魔法などを言ってくれる。

 しかし僕は返信をしていない。いつも最後に『返信はしなくていいから』と書いてあるからだ。これはたぶんミントと別れてから最初に貰った魔法に『シュウイチのことが好きなの。だから次会えたらその返事聞かせてほしいな』という告白文を受けたからだと思う。

 返信をしたらミントにこの答えを返えすだろうと予測して、返信はしなくていいと書いてあるのだろう。だから僕もミントに会うのを心待ちにしている。絶対に答えを返すつもりだから。

「さてと、無形魔法フィクションマジックはこのぐらいでいいかな。次は実在魔法リアルマジックの練習するかな――――――魔法削除マジックロスト

 そういうとまるで何かにつるされたように固まっていた鉄の棒が重力に逆らい床に落ちた。

「戦うは牙。物を貫く攻撃をしよ。魔法犬マジカルドッグ!!」

そして間髪入れずに新たな魔法定義マジックセレクトを唱えると目の前にたくさんの光が集まりだした。そして光は小さく形をなし、消え去った。その後に残ってたは……「わん!!」と一つ吠えて僕に甘えてくる一匹の子犬。こいつもCランク魔法ではあるものの強力な魔法だ。

「よしよし、マト。じゃぁ、あれに噛みつけ!!」

 僕が命令をすると鉄の棒に向かって走りだした。そして鉄の棒にたどり着いたマトはガブリとひと噛みすると棒はバキッと音をたてた。

「相変わらずスゲーな、マト」

 僕は苦笑にながら呟く。

マトというのは僕がこの魔法(子犬)につけた名前だ。以前ミントからの手紙に『そういえばシュウイチの実在魔法(リアルマジック)ってメスが多いんだよね』と書かれていた。

 魔法に性別があるのかは分からないけども、魔法を使う人、つまり魔法発動者(マジックユーザー)によって同じ魔法でも攻撃的な奴やさびしがりなど性格等が違うらしい。で、せっかくなので名前を付けてみようかなーと思い一部の魔法に名前を付けて可愛がっている。

 それに、その方が連携も取りやすいし。ちなみに、マトというのはこの魔法の魔法名(マジックネーム)である魔法犬(マジカルドッグ)の『マ』と、ミントの『ト』を合わせてマトと名付けた。

「マトーもういいぞー帰っておいでー」

 というとマトは僕に向かって「わん!!」と吠えて嬉しそうにこちらに向かっ来る。と、いつも道理そう思っていたらいつもとは違い「うー」と低いうなり声を上げて走ってきた。

「ちょ、マ、マト!! 止まれ!!」

 マトを止めようと命令するがマトはそれを無視してこちらに襲いかかからんばかりに走ってくる。

「う、うわー」

 もう避けきれないと考え体を丸め手で顔を守って衝撃に備えた。が来たのは衝撃ではなく何かが、マトが僕を飛び越えたような感覚だった。その直後「きゃん!! く、くーん」というマトの悲鳴のような鳴き声。僕はそれを聞いて振り返る。

「なっ、マト大丈夫か!! これは……太陽の集結 (サンマス)!?」

 マトは体の一部が焦げたような跡があった。それは魔法、太陽の集結(サンマス)の特徴だった。太陽の集結サンマス光弾魔法ライトアタックに似たAランクの魔法。

光弾魔法(ライトアタック)は光の力を借りて散弾樹のようにたくさんの光を出し当たった場所には衝撃と軽い熱さを感じる魔法。それに対し太陽の集結(サンマス)はやや大きめの光弾を一発と強い衝撃と太陽のような熱さを感じる魔法。

「だ、誰だ。あっ、それよりありがとなマト。僕を助けてくれたんだな。今はゆっくり休んで。魔法削除(マジックロスト)

 マトは光となり消えて行った。

「誰がこんなことを……? あれは絶対に魔法、太陽の集結(サンマス)だ……でも、魔法はミントの一族しか使えないんじゃ……だとしたら僕を……僕たちを狙ったのはミントの一族という事……なのか?」

 魔法を使えるのは体内に魔力を宿しさらには魔法定義マジックセレクトを知らなければならない。


 元々魔力を体内に宿すものは現代では何万人かに一人の割合らしい。そして、その一人に当たったとしても魔法定義マジックセレクトを知らなければ体内に魔力が宿ってることを知らずして人生を終えていく。その、魔法定義マジックセレクトを知ってるのはミントの一族だけだ。

「だ、だとしたら、ミントに伝えた方がいいよな。伝えるは思い。形を作り相手へ気持ちを伝えるものとなれ。 伝言鳩魔法メッセージバード!!」

 空に手をかざして叫んだ。すると手から真っ白い鳩が飛んで行った。こちらから伝言鳩魔法メッセージバードを使うまいと思っていたがそうも言ってられなかった。

 数分後。まだかまだかと待っていた僕の前に突如光が出てどんどん人の形を成していく。忘れもしない、あれはミント=クリア=ライトだ。

「シュウイチ!! さっきのホント!!」

 開口一番ミントが僕に向かって叫んだ。

「あぁー、本当だ。ここで魔法の練習してたら急に後ろから。僕はマト……魔法犬マジカルドッグに助けてもらったから無事だったけどあいつの体にはくっきりと無形魔法フィクションマジック太陽の集結(サンマス)のあとが残ってた」

「えっ? マト?」

 そう言ってミントは首をかしげた。こちらから伝言鳩魔法メッセージバードを使えなかったので『マト』と名付けた事をミントは知らなかった。

「あぁ、えーとさ、この前ミントがそういえばシュウイチの実在魔法(リアルマジック)ってメスが多いんだよね』っていってただろ。だからさ、どうせなら名前つけようかなーって」

「へー、そうなんだ。なんか珍しいね魔法に名前つけるなんて」

「えっ」

 思わず聞き返す。魔法に名前って普通じゃないのか?

「あー、そういえばお婆様は名前つけてったっけ」

「ちょ、ちょっと待って。魔法に名前、ミントはつけてないのか?」

「普通つけないわよ」

「だっ、だって性別があるって」

「性別はあるけど、別にそれだけだよ?」

「そ、そうなんだ……そ、それより僕たちを狙った奴に心あたりはあるか?」

 僕は急に恥ずかしくなり話をもとにもどした。

「別に恥ずかしがらなくても。変って言ってるわけじゃないんだし。まっ、いっか」

 ミントは僕にからかうような目を向けてから思い出すように斜め上を見た。

「心当たりと言われても……魔法を扱えるとなるとミントの一族だろうけど。シュウイチを狙ってもいい事なんてないし」

「そっか……じゃぁ、どうしたら……」

「うーんとねー、そうだ、また何日かシュウイチの家に泊めてよ!!」

「えっ? 僕ん家に?」

「うん。また、シュウイチが襲われたらすぐミントがすぐに助けに行けるし、犯人も特定できるから」

「犯人を特定?」

「うん。そういう魔法があるの。いいでしょ? シュウイチの家に行っても」

 そういって僕に目を向ける。

「あ、あぁー別にいいよ」

「よかった、じゃ、シュウイチの家にかえろ。動くは光。光と同じ―――――――」

「ちょっ、ちょっと待って!!」

 慌てて魔法の発動を止める。確かベッドの上にはあれが。

「え? なに?」

「ちょ、ちょっと待って。え、えーと、あの、家散らかってるから、す、すぐかたずけるから待ってて」

「えー、別に気にしないよー。行こうよー」

 必死にこさせまいとするがそれを聞き入れてくれようとしない。

「えっと、す、すぐだからさ。待っててよ」

「なんでよー。もしかしてミントになんか隠し事でもしてるのー?」

 頬を膨らませ上目遣いで怒ったように聞いてくる。そんな顔されたら断りにくいな。気づかなかったけど僕の最大の弱点はミントかも。って見惚れてる場合じゃない。

「隠し事なんかしてないって!!」

「本当? じゃぁ、ちょっとそのままじっとしてて――――――見えるは心。動かぬ真実を見よ。偽と真を見分ける力となる――――――見破る嘘(シーライアー)

 ミントは魔法定義マジックセレクトを唱えた。魔法定義マジックセレクトからたぶん嘘か真実かを見分ける魔法だろ。でも、僕はそんなことやることぐらい分かってた。

「いい?シュウイチこれからミントの質―――――――」

人体転移魔法テレポート!!」

 ミントが言い切る前に魔法名マジックネームを言った。呪文マジックワードはミントが唱えてる最中に小声で唱えていた。

「ちょっ、シュ―――――――」

 ミントが慌てて止めようとする声が聞こえたが次にはもう目の前には僕の家だった。

「えーと、あっ、あったあった」

 僕はそれを手に取った。しかしその直後に人体転移魔法テレポートをしてきたミントが現れた。

「ちょっと、シュウイチ!!  急になによ!!」

「べ、別にいいだろ?」

 後ろ手に持っていたそれを床に座りながらベッドの下に投げ込んだ。

「でも久しぶりだなーシュウイチの家。そんなに散らかってないじゃない」

 ミントはあちこちを見まわしながらベッドに腰掛けた。

 それからはお互いの生活、最近はまってる曲などを話し合った。










「ミントー絶対ばれるなよ」

「大丈夫だよ、ミントに任せて」

「姿は見えないかもしれないけど物音は聞こえるんだろ?」

「おとなしくしるから大丈夫よ」

 ミントの言葉に小さくため息をつく。ミントは今、僕の目からでも見えない。

透明なる姿(インビジブル)という魔法で姿を隠している。原理としては魔法発動者マジックユーザーの周りの光を全反射させるというものらしい。

「ホントだな? マジで学校では静かにしとけよ」

「分かってるって、もう。じゃ、レッツゴー!!」

 ミントは片手を上げそう叫んだ。

 昨日の夜、寝る前にミントが「そういえばシュウイチの行ってる高校ってどういうところなの?」と聞いてきた。

「えっ? そういうミントは学校って行ったことないのか?」

「うん。お母様がいうには魔法の流出を防ぐ為だってさ。まぁ、基本的な学力はお母様達から教えてもらったし」

「へー、そうなんだ。で、高校だっけ? 基本的には勉強するところだよ。後は部活とかかな?」

「部活ってなに?」

「部活知らないのか? あっ、そっか。学校いってないから知らないのか。えーと、部活っていうのは授業前や放課後……放課後って分かるか?」

「それぐらいなら分かるよ。それで?」

「そうか。えーと放課後の後に生徒達がする活動かな」

「ふーん、どんなことするの?」

「えーと、運動部なら野球やサッカー、水泳やテニスとか色々あるよ。文化部も吹奏楽部や文芸部、美術部や園芸部とかかな」

「いっぱいあるんだー。シュウイチはなにやってんの?」

「僕? 僕は何もやってないよ」

「えー、なにもやってないのー? あっ、じゃぁ、あの時一緒に来てた子たちは? ほら、刃牙狼魔法ブレイク・ビック・ドック・マジックと会ったときにいた人たち」

「えーと、あぁー石田と福田か。あいつらも何もやってないよ……あっ、違った。確かあいつらはミステリー同好会の幽霊部員だったっけ」

「ミステリー同好会?」

「うん。簡単に言ったら未確認生物UMAや心霊現象について調べてるんだって。そういえば魔法が存在したかみたいなことも取り上げたことがあるって言ってたよ」

「魔法!? な、なんか見つけてないわよね!!」

「お、落ち着けって。大丈夫だよ」

 急に慌てだしたミントを苦笑しながら落ち着かせる。

「ホント? じゃぁ、明日高校についていかせてよ」

「はぁ!? ダメに決まってるだろ!!」

「なんでよー」

「な、なんでって。あのな、高校には……っていうか学校には関係者しか入れないんだよ」

「ミントはシュウイチの保護者だもん」

「い、いつからお前は僕の保護者になったんだよ」

「うー、お願い。シュウイチ」

また上目遣いで頼み込むミント。こいつ……僕の弱点しっててやってるのか。

「わ、分かったよ。だけどばれないようにしてくれよ」

「うん、ありがとー」

 そう言ってはしゃぎだすミント。

 本当に元気な奴だ。

 昨日のこの一連からミントを学校に連れて行くことになった。

「じゃぁ、行くぞ」

 僕はミントにしゃべりかけた。

「オッケー!!」

 ミントの元気な声を聞いてドアを開け鍵を閉めた。

「ふーん、この前いた時は外出といえばあのビルだったからあまりこの国の道を歩かなかったからわかんなかったけど結構普通だね」

 耳元で小さくささやくミント。周りに人がいないことを確認して僕も小さく答える。

「バカ、あんまりはしゃぐな。それに結構普通ってどんなことを想像してたんだよ」

「むー、馬鹿っていう方が馬鹿なんだから。別にどんなのかなーって思ってだけ」

「あっそ」

 ミントに淡泊に答えて黙々と歩き出す。あまりしゃべってると、周りに一人で何しゃべってんだ? と思われたら最悪だ。せめて携帯を持ってこれたら電話でしゃべってるっと思われただろうに……残念ながらうちの高校は携帯を校舎内に持ち込むのは禁止だ。

「あっそって何よー」

 頬を膨らませ抗議するミント。

「静かにするって約束だろ? 今からお前を置いていこうか?」

「むっ……わかったわよ」

 ミントが少し拗ねたように答えた。はぁ、後でご機嫌なおしでもしたほうがいいか。僕はミントに聞こえないように心の中でため息をついた。

 僕の通う高校、私立南里(なんり)高等学校は南里山みなみさとやま市という海に近い市にある。田舎というわけではないが都会とまでいかない程度の市だ。南里高校は全寮制で学校から海の方へ5分程度いくと女子寮が、駅の方へ10分程度いくと男子寮がある。

 実は南里高校は元は女子高で9年前に男女共学になった。その為女子寮に比べ学校からやや遠いところに男子寮がある。だが比較的男子寮の方が新しい為設備はややこちらの方が新しい。クーラー等も新しく特にそれぞれの寮にある食堂はこちらの方がずっと新しい。

 その為女子生徒はよく男子寮と女子寮代わってよーと言ってる。僕も男子寮の方がいい。駅にも近くデパート等もこちらの方が近い。

「おす、はよ」

「ん? あー、石田かおはよ。福田は?」

 声をかけてきた石田に挨拶を返す。石田は福田と同じ部屋である為だいたいは一緒に登校することが多い。

「あいつは今日日直だから先言ってるよ」

「あー、そういやそうか」

 僕はそう返して二人でしゃべりながら学校に向かった。途中隣のミントが小さく何か呟いていた。どうやら魔法定義マジックセレクトらしい。魔法名マジックネームが聞こえた。一瞬焦ったが魔法名マジックネームが『虫達の探りインセクトエクスプロレス』というものだったので危険性はなさそうだったので安心した。 

 まぁ、ミントが石田に攻撃をする必要はもとよりないのだが。

 そんな杞憂をしながらも学校に到着し割り振れられた席につき、カバンから教科書を出し机におく。ミントはまだ僕の近くにいるだろう。というか急に魔法がとけたりしないだろうな?

「ん? どうした、ぼんやりして?」

「えっ!? あ、あー福田か。べ、別に何もないよ」

 急に話しかけられて、少々狼狽しながら福田に返事をする。

「そうか? なら、いいけど」

 そういう福田に曖昧に返事をして「ちょい、ごめん」といって席を離れた。本当はミントを教室から退出するために席を立った。

 何か小さくぶつぶつと隣から音が発してるのでその服の部分であろうところをつかみ教室を出た。

「なによ、シュウイチ」

 小声で僕にしゃべりかける。周りに人がいないのを確認して小声で返す。

「とりあえず、人気が少ない所に移動するぞ。話はそれからだ」

 僕は答え、この学校の屋上に行く。

 僕の教室は三階なのであと二階ぶん階段を上がらなくてはならない。

 屋上には立ち入り禁止と書かれた扉があるがそれを無視して扉を開ける。ここでよく、福田や石田達と昼飯に購買で買ったパンをかじっている。普段から人の出入りが少ないのでここでならミントと話せるだろうと考えたのでここまで連れてきた。

「よし、ミントでてき……たらダメだ」

 誰もいないので魔法を解除してもいいと言おうと思ったが一人の女子生徒がフェンス越しに運動場を眺めているのが見えた。

「……あっ」

 しばらく無言で見つめていたら向こうが振り返りこちらに気付いた。

「……何?」

「いや、別に……こんなところに人が来るのも珍しいなと思って」

「そう」

 やたらと口数が少ないので反応に困る。

「あっ、えーと、僕は2年3組の富本 秀一。君は?」

「わたしは、星野。星野ほしの 夜美よみ。あなたと同じ2年3組」

「えっ?」

 こんな子いたっけ?

「に今日転校してきた」

「あっ、そうなんだ」

変なところで切るので一瞬焦った。

 もう9月の半ばだ。そんなときにクラスメイトに自己紹介するなんて、あまりに失礼だ。

「ところで、星野さんは―――――――――」

「夜美」

「へ?」

「夜美でいい」

「そっ、そうか? じゃぁ、夜美はこんなとこになにしにきたの?」

 女の子を下の名前で呼ぶことに気恥ずかしさを覚えながら夜美に問いかける。

「別に……ただ空が好きなだけ」

「空?」

「うん。厳密にいうなら空に浮かぶ月とか星」

「そうなんだ。でも、今は明るいから月も星も―――――――――」

「あそこ」

 そう言ってフェンスのおくを指さす。

「あっ、ホントだ」

 そこには、ぼんやりとした月があった。きれいな丸だ。

「でも、今は明るいから雲とかのほうがきれいに見えるじゃん。雲とかには興味ないの?」

「別に……ただ雲は―――――――――」

 夜美が何か言おうとしたのと同時にチャイムの音が鳴り響く。

「わたしは先生と一緒に教室行くから」

「あ、あー、じゃ、その時」

「うん」

 最後に返事をして夜美は扉を開けて立ち去った。

「変わった子ね」

「お前がそれ言うか?」

 実体化したミントに答える。

「で、ミントになんのよう?」

「あっ? 忘れるとこだった。とりあえず学校にいてもいいからここで待っててくれ」

「えー!! どうしてー?」

「ミントがいると気が散るんだ」

「むー、分かったわよ。ここで待っててあげる。けど、必ず迎えに来てよ」

「あー、わかってるって」

 そう言って駆け足で屋上を去って行った。早くしないと、学校にいながらホームルームに遅刻してしまうからだ。

 きっと朝のホームルームで夜美が紹介されるだろう。ガラッとドアを開ける。まだみんないろんな場所で話をしている

 なんとか、間に合ったみたいだ。僕が椅子に座ったと同時に担任である数学担当の男性教師が入ってくる。

「みんなー、席につけ―」

 教師が声をかけるとみんなもとの席に戻っていく。

「今日は新たに転校生が来たからその子の紹介をするぞ」

 いったん言葉を切りドアの方へと首を向けた。他の生徒たちはやや騒ぎながらドアの方に注目する。

「入ってきていいぞ」

 という言葉の後にドアをガラッと開け夜美が入ってくる。

「じゃぁ、みんなに自己紹介して」

 教壇の真ん中に立ってこちらを見る夜美。男子生徒から「可愛いなー」という声が上がる。確かに夜美が美少女の分類にはいる、可愛らしい子だ。

「星野夜美です。よろしく」

 短く挨拶をする。

「うん、みんな、星野と仲良くしてくれな。えぇーと、星野の席はあそこに座ってくれ」

 僕の席に横を指さす担任。この席は一学期の終わりに転向していった生徒がいた席だ。

「改めて、よろしく。夜美」

「うん」

 席についた夜美に話しかける。夜美からは淡泊に返される。まだ、教科書も届いてないだろうから僕が貸すのだろうか?

 夜美の席は窓側の一番端となった為、隣は僕しかいない。

「えっと、教科書とかって届いてないよな?」

「うん」

「そっか、じゃぁ、僕の見せるから」

「ありがと」

 僕は夜美の礼に軽く微笑みさっきから感じる視線の方に目を向ける。

 口には出してはないもののいいなーという顔をしている、石田と福田。僕は苦笑いを見せて二人に目を向けたのと同時に一時限目開始の合図を知らせるチャイムが鳴った。

 今日の授業は英語Ⅰ数学A体育地学現国地理だった。

 夜美は英語や理科が得意そうだった。

「なぁ、なぁ、お前星野さんと仲良さそうに喋ってたけど、知り合いだったのか?」

 ショートホームルームを終え帰りの支度を終え立ち上がろうとした僕に帰り支度を終えた石田が問いかけてくる。隣には同じく支度を終えた福田がいた。

「別に知り合いって訳じゃないけど……ただ、今朝屋上で会ったんだよ」

「屋上で?」

「あぁ、何か空が好きなんだってさ」

「屋上が好きな女性か……俺を好きになってくれないかな」

「ならねぇよ!!」

福田が石田につっこむ。僕もおもわずふきだした。確かに夜美が石田を好きになることはないだろうな、と思いながら席を立った。








「さてと、シュウイチはいつもどうり魔法の練習をしてて」

「分かった。ミントは?」

「ミントは透明なる姿(インビシブル)で姿を隠してる。その方が敵も安心してシュウイチを攻撃してくるだろうし」

「ん、了解。」

 僕は言葉を返して魔法定義(マジックセレクト)を唱える。

「戦うは牙。物を貫く攻撃をしよ。魔法犬マジカルドッグ!!」

 僕が唱え終えると同時にミントも透明なる姿(インビシブル)と唱えて、ミントの姿が見えなくなる。僕はそれを見届けてから形を成した魔法犬(マト)に話しかけた。

「マト、大丈夫か?」

「わん!!」

 傷を心配して問いかけるが元気そうに答えてほっと一息つく。

「良かっ―――――――――!! くっ、」

 僕はマトを抱きかかえて横に跳躍した。黒い小さなかたまりが元いた場所に当たり炸裂した。

「ミント!!」

「分かってる!! 魔法削除(マジックロスト)。そして、感じるは魔力。魔法の源を探し我に示せ。魔力を探し当てよ。魔法確認マホウチェック!!」

 透明なる姿(インビシブル)を一度解除して魔法確認マホウチェックを新たにする。

「どうだ?」

「ダメ、もうこの近くにはいない。でも、魔法の性質は分かったから次こそ捕まえられる」

「そっか。 なら、良かった。魔法削除(マジックロスト)

 胸を撫で下ろして言い気配の察知(サインインフレンス)を解除した。

 気配の察知(サインインフレンス)はここにくる前にかけており、自分と自分が仲間と認識したもの以外の魔力を察知する事ができる。

 なので、僕を狙ってきた奴がきた場合、僕はそれを素早くよけミントに敵を捕まえてもらうという作戦だった。

 まぁ、犯人は捕まらなかったが手掛かりはつかめた。これは大きな前進だ。

「それにしても闇の玉(ダークボール)を使うなんて……っていう事は魔力の性質キャラは闇なんだ」

性質キャラ?」

 初めて聞く単語だったので聞き返す。

「えっ? あぁー、シュウイチには言ってなっかたわね。魔力には性質キャラというものがあってね、全部で三種類あるの。この闇の性質キャラと草の性質キャラ、そして私達が使ってるのは風の性質キャラ。人によって使える性質キャラは違うの」

「へー、そうなんだ。で、性質キャラが違うと何が違うんだ?」

「うーんとね、使える魔法も違うってのが一番の違いかな。その、性質キャラじゃないと使えない魔法を性質系魔法キャラマジック性質キャラに関係なく使える魔法を通常魔法ノーマルマジックっていうの。そして性質系魔法キャラマジックの特徴として得意する性質キャラと苦手とする性質キャラとがあるの。風は闇に強くて草に弱い。闇は草に強くて風に弱い。草は風に強くて闇に弱いの」

「ふーん、そうなんだ」

「えぇー、だからBランクの風の性質キャラとAランクの闇の性質キャラの魔法がぶつかり合ったら相殺したり風の魔法が押し切ったりすることもあるんだ。もちろん、魔力の差があれば苦手とする性質キャラだろうが関係なかったりするけどね」

「それで、それぞれの性質キャラにはどんな性質系魔法キャラマジックがあるんだ?」

「えとね、風の代表魔法は物体浮遊魔法スカイ・オン・スカイ光弾魔法ライトアタックかな。風は光や水といった魔法が得意なの。闇は……あんまり他の性質キャラの魔法知らないんだけど……えーと、闇の玉(ダークボール)や月の願い《ムーンウイッシュ》といった夜を象徴するものが多いわね。草は植物の成長(プラントグロウ)空気の切り替え(エアーチェンジ)といった植物を基盤とした魔法多いわ」

「とすると、僕は風の性質キャラなのか?」

「うん、最初に魔法使った時に風の性質キャラって感じたの。何か違う感じもしたんだけどね。でも、その後に人物浮遊魔法スカイ・フライ・ウインドが出来たから風の性質キャラだって確信したんだけどね」

「ふーん、そうなんだ」

「うん、それじゃ、今日は帰ろ?今日はもう襲ってくる事はないだろうし」

「そうだな。マト、元気そうで良かった。また呼ぶから。魔法削除マジックロスト

 胸に抱いているマトに言葉をかけて魔法削除マジックロストした。

 それから、二人で僕の部屋に戻ってミントの作戦を聞いてなんのとりと無い話しをしながら時間を潰した。







 何も変わり無い日々がそこから数日続いた。

 朝、学校に行き教科書が届くまで夜美に教科書を見せ、届いてからはアンダーラインを引く場所を教えたりして学校を教えて、放課後はミントと魔法の練習をしたりしていた。しかし、敵からはなんのアクションもなかった。

「さぁ、今日も魔法の練習するわよ」

「オッケ」

 いつも道理例の廃ビルに入って透明なる姿(インビジブル)をしたミントに返事をして僕も魔法犬マジカルドッグを出す。

「わん!」

「よしよし、マトは元気そうだな」

 と、僕はそこで言葉を切り後ろを振り向いた。

「ところで、あなたは誰ですか?」

「えっ!?」

 物陰に隠れている人に問いかけるとそこから意表をつかれたような女性の声がした。

「姿を表せ!!」

 語尾を強めて詰め寄る。

「―――――――っち」

 舌打ちをして逃げ出そうとする気配を感じる。だが。

「いて。これは……絶対結界プロテクト!?」

「あぁ、そうだ。絶対結界プロテクトだ。その様子だと知ってるみたいだな。絶対結界プロテクトは特定の魔力を持った人間を逃がさないようにする魔法。今回はお前に設定させてもらった。さぁ、逃げ場は無い。姿を表せ!!」

「分かったわよ。魔法削除マジックロスト

 奴がそういうと奴を囲んでいた闇が消えていく。原理は知らないが透明なる姿(インビジブル)と同じように姿を消す魔法らしい。

「お前は――――――っな!?よ、夜美!?」

そこに現れたのは先日転校してきたばかりの夜美だった。

「こんにちは、冨本君」

挨拶をしてくる夜美。

「ど、どうして夜美が……」

「その質問に答える前に貴方の仲間にも出てきてもらう。 漆黒の世界(ダークワールド)!!」

夜美は突如呪文(マジックワード)も無しに言った。

「えっ!? どうして!?」

 ミントが声を上げたので振りかえると透明なる姿(インビジブル)が解かれていた。

「これは光を闇に変える魔法。透明なる姿(インビジブル)は光を反射させて見えなくしてるから特にこの魔法の影響を受けやすい」

「そんな……それにさっき呪文マジックワード無しで魔法使ったとしたら……まさか、高速詠唱ワードロスター!?」

 ミントが何かに気づいて叫ぶ。

高速詠唱ワードロスター?」

 僕は夜美に目を向けたまま聞き返す。

高速詠唱ワードロスターっていうのはね呪文マジックワード無しで魔法名マジックネームだけで魔法が発動するの」

「そんな……」

「でも、デメリットもあるの。高速詠唱ワードロスターで魔法を発動すると魔力を普段の1・5倍消費するの。というか、高速詠唱ワードロスターを使えるようになる為にもコツがいるから発動しにくいんだけどね」

「そっか、ミントは?」

「一応できるわよ」

「お話はそこまででいいかしら。    月夜の願い(ムーンウイッシュ)

 夜美の手から黄色い光が輝いたと思ったらこちらにその光の玉がこちらに来る。

「シュウイチ!! くっ、風の壁(エアーウォール)!!」

 ミントが僕の前にやってきて風の壁を展開作り出して光の玉を防いだ。

「っ……あんた、なんでシュウイチを狙うのよ!!」

「上から富本秀一を消せと言われたから実行するだけ」

「上……夜美、誰に命令されたんだ?」

「誰からの命令かは知らない。しいて言うならわたし達の組織、堕天使フォールエンジェルの命令」

堕天使フォール・・・エンジェル?」

「そうよ」

「その、堕天使フォールエンジェルって――――――」

「シュウイチ、後にしましょ。今はこの子をどうにかするのが先」

 堕天使フォールエンジェルについて聞こうとする僕の言葉をミントが遮った。

「そうだな」

「貴方達がそれでいいならいかせてもらう。闇の玉(ダークボール)

 夜美が先に仕掛けてきた。

「無駄よ。光弾魔法ライトアタック!!」

 ミントがそれをふうじるように魔法を発動する。

 だが、一瞬夜美が頬を緩めたのを僕はみえた。

「これで……えっ!?」

 光弾魔法ライトアタックとあたった闇の玉(ダークボール)はその瞬間に多数に分裂して僕らに襲いかかってきた。

 ミントは先ほど魔法を発動したばかりだから今魔法を発動できるのは僕しかいない。でも、呪文マジックワードを唱えている時間もない。

こうなったら一か八かだ!!

風の壁(エアーウォール)!!」

 僕が叫ぶと共に不可視の壁ができて闇の玉(ダークボール)がそこに炸裂して消えた。

「っ!?貴方も出来るなんて……」

「シュウイチありがと、助かったわ」

「あぁ、破れかぶれだったけどまさか本当に出来るなんてな」

 驚きを見せる夜美。ミントは僕に感謝を述べた。

 とにかく、これで僕も同じように戦う事ができる。

「夜美!!悪いけどいかせてもらう。風の刃(エアーカッター)!!」

 致命傷を与えないように手加減をして鋭い風を夜美に放った。

「くっ、こんなの。漆黒の守り(ダークプロテクト)!!」

 だが、夜美の周りに黒い霧が出てきて彼女を守る。

「後ろ、がら空きよ。光玉魔法ライトアタック!!」

 いつの間にか背後に動いていたミントが攻撃をする。これは、もらった!! そう、思ったのもつかの間光弾魔法(ライトアタック)は夜美の体をすり抜けてなんと僕の元にやって来た。

「なっ!!」

危なくぶつかるところで横に飛びギリギリで回避する。

「今のは……嘘の姿(ライフィギア)!!」

「見つかったみたいですね」

「っ!?」

 真後ろから声が聞こえてきた。

「でも、終わりです(チェックメイト)です!! 闇のた(ダークボ)―――」

「わん!」

「きゃっ!?」

 やられる、と思った時マトが横から夜美に突撃した。

「サンキュ、マト。これでその分身する魔法は聞かねぇぞ。気配の察知(サインインフレンス)。……うん。大丈夫だな」

気配の察知(サインインフレンス)で気配を察知する。マトとミント、そして夜美の気配が一つ。

「なるほど。確かにそれで私の気配がいくつあるかが分かる。でも、それだけです。 闇の玉(ダークボール)

「こんなの。風の刃(エアーカッター)!!」

 闇の玉(ダークボール)風の刃(エアーカッター)がぶつかりあい闇の玉(ダークボール) が分裂する。しかし、分裂したところにまた、鋭い風が突き刺さり破壊した。

「くっ」

「決める!! 太陽のかが(サンマ)―――――――――」

「させない。音放出魔法サウンズマジック

「えっ。――――――うっ!!」

 突然不快な音が鳴り響き耳をふさぐ。

「くっ。暴風の流れ(ストーム・・・フロー)

 強い風が吹き荒れて、音の流れをかえる。

「これで――――――」

星の衝突(スタークラッシュ)

「なっ!? うわッ!?」

 いつの間にかうしろをとられており気がついたら背中から強い衝撃がきて、壁まで吹き飛ばされた。

「きゃっ!!あっ!!シュウイチ!!」

 ミントも余波に吹き飛ばされるのが見えた。そしてミントの声が聞こえるが意識がとおのく。

終わりなの、か?

「わん!」

「マト!? まさか……!?」

眩む目にマトの姿が映る。ミントは何かに気がついたみたいな声を上げた。

ん?痛みが引いていく?

「っ。どういうこと」

 夜美が驚きの声を上げる。

「ん……ま、マト。えっ!? マト!?

 視界がはっきりしはじめてみえはじめたのは僕の傷が回復するのに比例してマトの体が薄くなっていく姿だった。

 そして、まもなく僕の体が全快するのと同時にマトが消え去った。

「マト。今のは……」

「今のは……多分、同化アセミレーション実在魔法リアルマジックを……したとき、その実在魔法リアルマジックが希に出来るんだけど、魔法の方からやるな…んて。そんなの初めて見た。それに、同化アセミレーション魔法発動者マジックユーザーとの信頼関係がかなり高くなかったダメだから本当に前例は少ないんだけど……ね」

 ミントは傷が癒えていないので苦しそうに教えてくれる。

同化アセミレーション……あっ!! マトは!? マトはどうなるんだ!!」

「残念だけど…文字通りこの魔……法は同化するの。だから、もう、マトを出すことは出来ない………の」

「ミント!?」

 それだけ言うと突然首を折って動かなくなった。

「大丈夫か!! ……気を失ってるだけ、か。それにしても……マト……」

 僕は小さくうめく。

同化アセミレーション……っ! どうしてよ!! 冨本秀一!! 貴方はたかが魔法に名前をつけて、まるで、まるで家族みたいに!!」

「よ、夜美? 急にどうした?」

 僕に向かい怒りの感情をぶつけてきた夜美に戸惑う。

「うるさい。わたしは、わたしは、天使の名(コードネーム)夜の音(ピュセル)として、心を閉ざし、神に逆らい貴方に打ち勝つ!!――――――夜をまとう剣(ダークソード)

 夜美の手元に黒と紫そしてほんの少しの金色をした複雑な色をまとった剣が現れた。

「くっ、どうしたんだ……ちっ、ならば風をまとう剣(エアーソード)

 僕も剣を召喚する。透き通った空色と眩しい金色の剣を出す。

「負けない!!やぁーーーーーーーーーー!!!!!!!!」

「こっちもだ!!あぁーーーーーーーーー!!!!!!!!」

 夜美の剣と僕の剣が当たりキーンという音が鳴り響き同時に眩い光が僕を包む。光が開けた時には二つの剣が交差させていた。

「夜美。何があったというんだ」

「わたしは、負けられない。姉のためにも」

「姉?」

 互いに一歩ひいてもう一度剣どうしをあてる。

「姉は堕天使フォールエンジェルに逆らい殺された」

「なっ」

「最初はわたしも逆らおうとした。でも、無理だった。神に逆らい罰を受け悪魔となったのが堕天使。だけど、神は馬鹿だった。罰は与えたが殺しはしなかった。ならば、神を超える力を持てばいいだけ。今ではわたし達、堕天使フォールエンジェルは神と同等の力を持っている。ならば、わたしも神となり奇跡を姉を、彩愛あやめお姉ちゃんを生き返らせて平和に暮らす」

「わっ!!」

 夜美が言い切ると共に夜美の剣が一層大きくなった。このままでは押し切られると考え一度身を引く。

「本当にそれがお姉さんの、彩愛さんの為なのか!?」

「そんなの知らない。わたしは彩愛お姉ちゃんを助けるまで心を閉ざしすべてを受け入れ命令に従うと決めたの」

そう叫ぶとともに僕の胸元に剣を突き刺した。

「くはっ」

「はぁーはぁー。彩愛お姉ちゃん、彩愛お姉ちゃんは死ぬ直前にわたしに逃げてって言った。生きてっていった。だけど、そんなこと出来いの。魔法削除マジックロスト

 夜美はそういって剣を消えさせたのを見て僕は動いた(・・・・・)

「なら、逃げたらよかったじゃん」

「えっ!?」

 僕は夜美の背中に剣を向けて言った。

「ど、どうして」

光の屈折(ライトリフラクション)。光を異常屈折させて蜃気楼みたいなものを作った。夜美がやった嘘の姿(ライフィギア)みたいな物」

「だ、だとしても剣の感覚はあったはず……っ!! 風をまとう。剣だけを浮かせてたわけね」

「そうだ」

「もういい、殺して」

「……夜美」

「何?」

「夜美は心を閉ざすといった。だけど、こんなに感情をさらけ出したじゃないか」

「…………」

「変われないのか? ただの可愛い女子高生に夜美は変われないのか?」

「無理、だよ。彩愛お姉ちゃんを裏切って普通になんかなれないよ」

「彩愛さんの事を本当に想ってたんだな。なぁ、彩愛って本名なんだよな?」

「えぇ、と言っても堕天使フォールエンジェルの一員となった私たちは名前を自分でつけるの。そして、彩愛って名前はお姉ちゃんがが堕天使フォールエンジェルに逆らう直前につけた名前。なんか、どうしてもその名前で行きたいって」

「そっか……文目あやめって花を知ってるか?」

「文目? 知ってるけど……」

「じゃぁ、文目の花言葉は?」

「花言葉? 知らないけど……」

「文目。花言葉はメッセージ。彩愛さんがその名前を選んだのって夜美に対するメッセージじゃなかったか?逃げてっていう。生きてっていう」

「っ!! お姉ちゃんそうなの」

 夜美はそう言いその場に崩れ落ちた。

「お、おい!! 夜美!!」

「大丈夫よ、シュウイチ。魔法を使いすぎて魔力が無くなっただけだから」

「ミント。大丈夫か?」

「えぇ。それより、帰ろ。シュウイチの家に。この子もつれて」

「そうだな。人体転移魔法テレポート

 僕はそう言ってこの場から立ち去った。











 あれから数日たった。ミントは堕天使フォールエンジェルの更なる襲撃に備えて僕の部屋にまだ、止まっている。

 夜美は女子寮の自分の部屋に戻った。堕天使フォールエンジェルはぬけるらしい。そして、僕の前からも消えると夜美は言ったが、僕らの必死の説得でここに残ってくれる事になった。

 そして夜美は堕天使フォールエンジェルについての記憶をほとんどなくしているらしい。ミントによると、多分情報の漏えいを防ぐためじゃない? といっていた

 その夜美と今日、ミント共に会って遊ぶ約束をした。

「あっ!! シュウイチ。ヨミ来たよ」

「あぁ。 よっ、夜美」

「ヨミ、オハよ」

「うん、おはよう。ミントさん。秀一君」

 頭を下げ、屈託ない笑顔を見せる夜美。

「じゃぁ、行こうか」

「うん」

 そう言って僕らは町に向かい歩き出した。

次回予告

堕天使フォールエンジェルの襲撃に備え修行を繰り返す日々。

「君は星野夜美の過去を知っているか?」

突然現れた堕天使フォールエンジェルの幹部と名乗る男が夜美の過去を語りだす。

次回、クリアライフ3―――過去―――お楽しみに。

風をまとう剣(エアーソード)!!」

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