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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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幸せになりたいくろい少女

作者: 火野村
掲載日:2011/05/07

こんにちは火野村です。

もしかしてオリジナルものは初めてなんじゃなかろうか。

突発的に書いた話です。

わけわかんない根暗な話ですがよろしくお願いします。


しあわせな話なんて、私が書くべきじゃないと思う。


まったく架空の、文字の中のキャラクターたちはずっと笑っている。


私なんかが書いていいものじゃないと思う。


「『とっても面白かったです』…『こっちまで幸せな気分になりました』…」


優しい言葉。正直に嬉しい。とても嬉しい。けど、違う。

私なんかがもらえる言葉じゃない。


「『コメントありがとうございます。そう言われるとほんと嬉しいです』…」


「『更新しました。キャラクターたちをほんと幸せにしてあげたい!』…」


今日も私は、幸せな話を書き続ける。



*



かたかた、かたかた。キーボードを打ち続ける。

文字の中ではキャラクターたちが幸せそうにしてる。

ほら、また。ヒロインが笑った。

主人公も笑った。ヒロインがうれし泣きをし始める。


「…幸せそうにしやがって。」


私は苦笑した。ずり落ちる伊達眼鏡を直した。

苦笑の中に隠した本音は一生私しか知らない。

私は奥歯を噛みしめた。ぎりりと音が鳴った。

涙の中の欲望は永遠に誰にも知られたくない。


「…幸せになりたいってのは、贅沢なことかい?」


昨日見たライトノベルの主人公みたいに言った。

言葉は肌寒い虚空に消える。

ぽろりぽろり涙を流す私はヒロインとお揃いだ。

だけど私の涙は冷たい涙だ。

ヒロインの涙は温かい涙だ。


「幸せそうにしやがって…。」


ヒロインを優しく主人公の腕が包み混む。

涙の雨はやみそうにない。



*



私のペンネームは「くろ」。

理由なんてない。ただ本名をもじっただけだ。

そんなメジャーでもなさそうな小説サイトで小説を公開してる。

サイトで仲がよくなった人には「くろさん」とか、「くーちゃん」とか呼ばれてるけど、そんなことは別にどうでもいい。


私の小説は主にしあわせな話ばかりだ。

本当の自分は根暗で弱くて内気で暗いオーラを放ってるのに。

主人公はたいてい好青年。

ヒロインはたいてい美少女。


似合わねー。


その一言が本当ぴったりな話ばかりだ。


「なんで私こんなことしてるんだろ」


作品の数はもうかるく両手の指の数をこえている。

アクセス数だってすでにかなりの数になっている。

もう後にはひけないよって、言われてる気がした。


「『くろさんの幸せな話が大好きです』…」


幸せな話なんて、こんな私に書く資格ないのにな。



*



父親はいない。

母親はいる。

姉もいない。

弟もいない。


兄はいない。

妹はいない。


「かつて少女の家には母と父と姉と弟がいました」

「今は、母以外の人はみーんないなくなりました」


だってとらっくにはねられておほしさまになっちゃったんだもの。

みんなのちがわたしのほうにとんだのをいまでもおぼえているよ。

わたしちでまっかになりながらなきさけんだのをおぼえているよ。


「しょうじょはしあわせでした」

「おおきくなったしょうじょはしあわせではありません」

「でもしあわせになりたいとおもっています」

「しあわせになれないともおもっています」

「しあわせなはなしをつづりながら」


もう次でこの作品は終わりだな。

今度の作品は幸せな家族の話にしよう。

前にもかいたけど、ちょっと違う話にしよう。


あれ、おかしいな。


「しょうじょはなみだがとまりません」



*



かたかたかたかたかたかた。


私の部屋にキーボードの音がひびく。

久々に主人公が女の子の話だ。

幼なじみの男の子との恋の話。


「『かわいいなんて言わないで』」


勘違いするじゃない。


主人公はひとり赤くなって言う。

幸せそうだね。

そうね。


「幸せになりたいのは誰?」


だん!


エンターキーをおもいっきり押して呟いた。


主人公でもない。

ヒロインでもない。

ライバルキャラでもない。

モブキャラでもない。


「…私は…?」


バックスペースの文字が書かれたキーに指を置いた。


しあわせな話は消えていく。


「しあわせになりたいのは


しょうじょじしんです」


幸せになりたいのは少女自身です。



*



次の話は少女の話を書こう。


「くろいしょうじょのはなしを。」


幸せになりたいのは誰でもなくて誰だってそうで。

少女であって少女でないんだ。


次の話は家族の話を書こう。


「しあわせになれなかったかぞくのはなしを。」


その家族はは幸せになりたいと今でも願っているけれど。



幸せになりたかったのは少女自身です。

幸せになりたいのは少女自身です。


少女はただキーボードを打ち続けた。


ありがとうございました。

すみませんでした。

主人公にモデルはいません。実際「くろ」というペンネームの方がいたらすみませんでした。

誹謗・中傷の意図は一切ありません。


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