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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

幸せになりたいくろい少女

作者: 火野村

こんにちは火野村です。

もしかしてオリジナルものは初めてなんじゃなかろうか。

突発的に書いた話です。

わけわかんない根暗な話ですがよろしくお願いします。


しあわせな話なんて、私が書くべきじゃないと思う。


まったく架空の、文字の中のキャラクターたちはずっと笑っている。


私なんかが書いていいものじゃないと思う。


「『とっても面白かったです』…『こっちまで幸せな気分になりました』…」


優しい言葉。正直に嬉しい。とても嬉しい。けど、違う。

私なんかがもらえる言葉じゃない。


「『コメントありがとうございます。そう言われるとほんと嬉しいです』…」


「『更新しました。キャラクターたちをほんと幸せにしてあげたい!』…」


今日も私は、幸せな話を書き続ける。





かたかた、かたかた。キーボードを打ち続ける。

文字の中ではキャラクターたちが幸せそうにしてる。

ほら、また。ヒロインが笑った。

主人公も笑った。ヒロインがうれし泣きをし始める。


「…幸せそうにしやがって。」


私は苦笑した。ずり落ちる伊達眼鏡を直した。

苦笑の中に隠した本音は一生私しか知らない。

私は奥歯を噛みしめた。ぎりりと音が鳴った。

涙の中の欲望は永遠に誰にも知られたくない。


「…幸せになりたいってのは、贅沢なことかい?」


昨日見たライトノベルの主人公みたいに言った。

言葉は肌寒い虚空に消える。

ぽろりぽろり涙を流す私はヒロインとお揃いだ。

だけど私の涙は冷たい涙だ。

ヒロインの涙は温かい涙だ。


「幸せそうにしやがって…。」


ヒロインを優しく主人公の腕が包み混む。

涙の雨はやみそうにない。





私のペンネームは「くろ」。

理由なんてない。ただ本名をもじっただけだ。

そんなメジャーでもなさそうな小説サイトで小説を公開してる。

サイトで仲がよくなった人には「くろさん」とか、「くーちゃん」とか呼ばれてるけど、そんなことは別にどうでもいい。


私の小説は主にしあわせな話ばかりだ。

本当の自分は根暗で弱くて内気で暗いオーラを放ってるのに。

主人公はたいてい好青年。

ヒロインはたいてい美少女。


似合わねー。


その一言が本当ぴったりな話ばかりだ。


「なんで私こんなことしてるんだろ」


作品の数はもうかるく両手の指の数をこえている。

アクセス数だってすでにかなりの数になっている。

もう後にはひけないよって、言われてる気がした。


「『くろさんの幸せな話が大好きです』…」


幸せな話なんて、こんな私に書く資格ないのにな。





父親はいない。

母親はいる。

姉もいない。

弟もいない。


兄はいない。

妹はいない。


「かつて少女の家には母と父と姉と弟がいました」

「今は、母以外の人はみーんないなくなりました」


だってとらっくにはねられておほしさまになっちゃったんだもの。

みんなのちがわたしのほうにとんだのをいまでもおぼえているよ。

わたしちでまっかになりながらなきさけんだのをおぼえているよ。


「しょうじょはしあわせでした」

「おおきくなったしょうじょはしあわせではありません」

「でもしあわせになりたいとおもっています」

「しあわせになれないともおもっています」

「しあわせなはなしをつづりながら」


もう次でこの作品は終わりだな。

今度の作品は幸せな家族の話にしよう。

前にもかいたけど、ちょっと違う話にしよう。


あれ、おかしいな。


「しょうじょはなみだがとまりません」





かたかたかたかたかたかた。


私の部屋にキーボードの音がひびく。

久々に主人公が女の子の話だ。

幼なじみの男の子との恋の話。


「『かわいいなんて言わないで』」


勘違いするじゃない。


主人公はひとり赤くなって言う。

幸せそうだね。

そうね。


「幸せになりたいのは誰?」


だん!


エンターキーをおもいっきり押して呟いた。


主人公でもない。

ヒロインでもない。

ライバルキャラでもない。

モブキャラでもない。


「…私は…?」


バックスペースの文字が書かれたキーに指を置いた。


しあわせな話は消えていく。


「しあわせになりたいのは


しょうじょじしんです」


幸せになりたいのは少女自身です。





次の話は少女の話を書こう。


「くろいしょうじょのはなしを。」


幸せになりたいのは誰でもなくて誰だってそうで。

少女であって少女でないんだ。


次の話は家族の話を書こう。


「しあわせになれなかったかぞくのはなしを。」


その家族はは幸せになりたいと今でも願っているけれど。



幸せになりたかったのは少女自身です。

幸せになりたいのは少女自身です。


少女はただキーボードを打ち続けた。


ありがとうございました。

すみませんでした。

主人公にモデルはいません。実際「くろ」というペンネームの方がいたらすみませんでした。

誹謗・中傷の意図は一切ありません。


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