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第7話「俺から私」

「・・はぁ・・・はぁ、ところでさ~・・、お前はいつから・・・俺に目をつけたんだ?」


涼はクレルの背中をトコトコと小走りに追いかけながら話しかけた。


身長差40cmくらいもあれば歩幅にも大きな違いができる。


先ほど「もっとゆっくり歩け!」と言ったら「走れ」と返されてしまい、魔力0の状態のため身体能力の向上もできない涼は頑張って付いていくしかなかった。


クレルは涼の質問を聞き、眉をひそめた。


涼はクレルの後ろ姿しか見えないため、その変化に気づかずに「なんでだ?」と小走りしながら繰り返し問いかける。


「おい・・・」


「うわっと・・・、なんだよ!」


クレルが突然立ち止まり振り向いたため、止まり切れなかった涼はクレルにぶつかりそうになって、慌てて手を出して顔面衝突を回避する。


身長差的に正面に出した手はクレルの腹に、ぽすっという軽い音とともにあたることになる。


「腹筋硬いな~」なんて考えてる涼を見下ろしていたクレルが、涼の頭をつかんで引き離した。


「うぃ・・・」


「何をしている・・・。いや、どうでもいい・・・・、貴様はこれから『俺』と言うことを禁ずる。なんか気に入らん!あと俺のことはクレルと呼べと言ったはずだ」


そんなことを言ってクレルが俺のことを見下ろす。


「お前のことをクレルと呼ぶのは別に問題ない・・・。だけど、俺と言うのを否定されるは嫌だ。俺はあくまで男だ!」



「気に入らん」なんてわけのわからない理由で一人称を変えられてたまるかっての。



「前に言ったはずだ、貴様に拒否権は無いと、『俺』ではなく『私』と言え、さもなくば人質を殺す。わかったな」


クレルは言いたいことを言いきるとさっさと後ろを向いて歩き始める。



なんだ、あいつは~~~!!

自分の言いたいことだけ言いやがって、しかも、わ・・・わたしって女みたいじゃないか!



「くそったれ!ふざけんな~。ばーかばーか・・・・」


クレルに聞こえないように小声でむなしい抵抗をする涼。


「何か言ったか?」



振り向きやがった~!



クレルは立ち止まって涼を見つめる。


「え・・?あ~~、その~、あれだ・・・・、そう・・名前!俺のな・・・じゃなくて、あっと・・、わ・・・わた・・・わたしの名前は涼だ!貴様じゃない!おま・・・、クレルも、お・・・わたしのことは涼って呼べ」


何を言っているのか支離滅裂になっている上に、頬を上気させて手を、わたわたさせている涼のこと見ていたクレルは、手を伸ばして涼の頭をがしっと掴むとぐりぐりと撫でる。


「それもそうだな、これからは名前で呼ぶとしよう・・・・涼」


頭が身体にめり込むほどに力強く押し込まれるように撫でられていた涼は、うぁぁぁぁぁぁ・・・・、と呻く。


だが、いいかげんにやめろ!と言って手を振り払う。


クレルは気にした風でもなく、軽く笑いながら歩くペースをさっきよりも少し落として歩き出すのだった。






石の壁に石の床の部屋。

しかし、床にはフカフカで毛の長い一目で高級なものだと分かる絨毯が敷き詰められ、壁には草原と青空が描かれた絵画に、見たことのない文様が記されたタペストリーが品よく掛けられている。正面には陽光を取りいれる無駄に大きい窓ガラス、それを開けると大の字になって寝ても余裕があるテラスが静々と佇んでいる。椅子や家具はゴテゴテした装飾は見当たらずシンプルでいて、しかし安物という雰囲気は感じない落ち着きがあった。

落ち着きのある高級ホテルのようである。


「ほあぁぁぁ~~」


涼は目を丸くして部屋を見て回っていた。


いくら人間界で10指に入る魔法使いだと言っても出身は一般人の出なので、涼は高級ホテルなんて縁も所縁もない。


テレビでは何度か見たことはあるのだが、実際にそれっぽい部屋を見てみると違うものだ。


「クレル!ここお前の部屋だろ~、無駄に広いなオイ!」


涼は興味心身に部屋の調度品を見回しては「ほ~」とか「へ~」とか呟きながら、ちょこまかと動き回っていた。


クレルは部屋に常駐している侍女から紅茶を受け取り椅子に腰掛けて、ゆっくりと飲みながら涼のことを目で追っていた。




「ところでさ~」


あらかた部屋を見終わった涼は、とうの昔に飲み終わった紅茶のカップを机に置いてのんびりとしているクレルの前に移動して、「・・・ん」と言いながら仁王立ちして顔を(しか)めて腕を突き出した。


クレルは怪訝な顔をしてその手をスッと流し見て、涼の顔を(うかが)い見る。


「……これ、はずせ」


淡い紫のオーロラを纏う腕を突き出した涼は、クレルを睨みつけながら口を尖らせる。


「ふん・・・・、断る」


「だろうな・・・、じゃあ魔法を使えるようにしろ」


「・・・それなら良いだろう、元から魔力は使えるようにしてやるつもりだったしな・・・・」


クレルはそう言うとスッと涼の腕輪を見た。


オーロラを纏う腕輪が光るなどの変化はなかったが、涼は自分の身体の奥から暖かいものが満たされてくるのを感じる。



お~~、これが魔力なのかな~、いつも魔力なんて身体に満ちてるものだし、初めての感覚だ~。



そんなことをボヤ~と考えている間に魔力の充足が収まってきた。


「ん?おいクレル。なんか魔力量足りないぞ、返せ!」


自分の普段の魔力量なんか完全には把握していないが明らかに足りないということは分かる。


「全部戻して好き勝手暴れられたら堪ったものじゃないからな、だいたい三分の1くらい使えるようにしてやったんだ、ありがたく思え」



なんか腹立つんですけど!


この人ムカつくんですけど!


すげぇ偉そうにふんぞり返りながら感謝しろとか・・・・・、お前のせいで魔力使えないんだから!



とは言えない。



くそっ、・・・けど全部戻さないのは納得いく。


俺だってあいつの立場なら全部なんて戻さない。


それ以前にいきなり攫った挙句に求婚なんて迫らない。



「まぁ、いい」


クレルの言うことはすべて無視することにした。


涼は踵を返して距離を取る。




「『草薙の剣(くさなぎのつるぎ)・乱』」


涼の右手が光り、光が伸びる、一定の距離まで伸びた光は収束して一振りの剣が姿を現した。


調子を確かめるように3~4振りして再び光とともに剣は姿を隠した。


「ふむ・・・・」



問題はないかな、多少力をセーブする必要があるかもしれないけど、なら・・・・。



「『天女の羽衣』」


前に羽衣を出したときは白い巫女服の袖口から現れた羽衣だったが、今は巫女服ではなく白いドレスを着ている、もちろん袖口からなど出せないため羽衣は涼の身体に纏わりつくように姿を現し、両腕から足元まで垂れるくらいの長さで風もないのにゆらゆらと揺れていた。


「お、出た出た。・・・・どれっ・・」


そう言うと腕を払うようにすうっと横に伸ばすと、羽衣も一緒に動き、そのまま伸びていく。羽衣は伸びた先の椅子を持ちあげて器用にくるっと回すと、またもとの位置に戻した。


「問題ないかな・・・」



実際、普段戦うときとかもよっぽどの相手じゃない限り全力で戦わないからな~。


多少力を抑えられてもある程度まではいつも通りってことか・・・・。


そういえば、まだドレスのままだったな~、普段巫女服で一応アレも女ものだけどドレスよりはましだ。


このピッタリ感がなんか許せない。


ていうか変身状態で洋服着れたのか~、いつも変身と同時に巫女服になっていたから、脱ぐとか考えたこともなかったよ。



涼の身体が光りに包まれて、すぐに収まる。


そこには白に蒼地のラインが入った巫女服を纏った少女が立っていた。


「おい」


涼はクレルに背を向けて黙々と作業していたのだが、その背中にクレルは声をかけた。


「なんだよ・・・」


いかにも嫌そうに顔を顰めながら振り向く。


「一言言っておく、その衣装が許されるのは城内や城外だけだ、この部屋ではさっきの出レス姿でいろ。命令だ」


「はぁ!?なんでだよ、意味わかんねぇ」


「あえて言うなら俺の趣味だな・・・・、断れば人質を殺す。分かったな」


「――――っ―・・・・」


涼はしぶしぶ元のドレスに戻った。


さっきのピッタリとしたやつだ・・・・、泣ける。





しばらく不貞腐れていたが気持ちを切り替えたらしい涼はクレルに話しかけた。


「そういえばお・・・、私の部屋はどこだ?」



そうじゃん!自分の部屋にさえ行けば何してもオッケーだよ。



とか考えての質問だったが、そんな涼を見透かしていたかのようにクレルは楽しそうに口角をあげて答える。


「俺と同じ部屋に決まっているだろ、もう婚姻したのだからなぜ部屋を分ける必要がある?これからは、食事も、風呂も、寝るのも、いつも一緒だ。うれしいだろう?俺は楽しみでしょうがない」


クレルはにやにやと笑いながら本当に楽しそうに涼のことを見つめる。


「・・・・・は?」



・・・う、うれしくねぇ~~!!


何がうれしくて男と同棲生活せにゃならんのだ!


食事、・・・は別に大丈夫だ、大したことはない。


風呂、・・・なぜ?いやいや一緒に風呂とか考えられない。

どんな風呂かは知らないけどクレルの後ろにメイドさん?侍女さんかな?が、居るということは、この城の風呂は前に小説で読んだことがある感じの寄ってたかって身体を洗われるとかかもしれないな~と思ったが、そのほうがまだましだ!

実際どっちも嫌だけど、どちらか選べと言われれば間違いなく侍女さんたちの視姦プレイのほうがいい。

むしろ1人で入りたい、女だからとかではなく、俺は日本人ですから、シャイで有名な日本人ですから。


最後に寝るって、・・・寝るって!寝るだけじゃ済まないだろ!すっげえ嫌な予感がする・・・、断固拒否したい、後ろの二つは断固拒否したい。

大事なことなので2回言いました。

じゃなくて!現実逃避したいな~。



涼は真っ赤になって首をぶんぶん振る。



無理!なんか無理!


そもそもまだ童貞の俺がなんでこれから処女を散らしそうになってるの?


いや・・・・、もう考えるはやめよう。




・・・・・・よし、この城を探検しよう。


大切だよね、探検。


どのくらい大切かっていうと、命と貞操の危機の次くらいかな・・・・。


そのくらい切羽詰まってる感じだ。


目の前のにやけ顔の男の存在を今だけでも忘れるには、すぐさま探検に行く必要がある。



「じゃっ」


シュタっと手を挙げた涼はスタスタと扉の方向に歩いていく。


「どこに行くんだ?涼」



名前で呼ぶな~!


俺が呼べって言ったんだけど、なんか嫌だ。



「散歩だよ、さ・ん・ぽ」


クレルの顔を見るとムカつくので振り向くこともなく歩き続ける。



コンッコンッ


涼が扉を開ける前に誰かによってその扉がノックされた。



はい、お待たせして申し訳ないです。


あいまいだった世界観をしっかりとさせていたのと、他の作家さんの作品を読んでいました。

書くよりも読むほうが好きですね。


けど書くときはスラスラと書くのでポコポコ出せると思います。

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