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第6話「俺が魔族の嫁に!?」

近づいてくる紫色の圧倒的死の予感。




逃げようとするが足が動かない。




魔法を使おうとしてもなぜか発動しない。




やめろ!来るなぁ!




声を出そうとしても出ないことに気がついた。




紫の棒が近づいてくる。




それが今まさに自分の身体に刺さる瞬間!




「うあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

・・・・・・・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・ぁぁ」


荒い息を吐いて布団の中で目をあける。


「ゆ・・・め・・・?」


今のが夢だったのだと気がついて安堵の息を吐く。


「痛っ・・・つ~~~」


身体が痛い。


魔物に貫かれた場所が痛い。


その痛みで完全に現実に引き戻された。


自分を襲った魔物のこと。


普段の自分ならそれほど苦戦することのない魔物だった、だけど催眠剤を打たれたためまともに戦えなかったこと。


そして身体に走る激痛と、命が抜けていく感覚。


全てが鮮明に思い出される。


「は・・ははは、俺・・・生きてたんだ・・・・」


涼は布団に横になった状態で声にならない笑いをあげながら、目を閉じて涙を流した。





一通り泣いて落ち着いた涼は、自分の身体が動くことに気がついた。


あれだけの攻撃を受けたにもかかわらず、腕や腹の傷はほとんど塞がっているようだ。


さすがにまだ動かすと痛いが我慢できないほどではない。


涼は起き上がって布団の上に座った状態で周囲を見渡した。


今自分が寝ているのはベッドである。なんの飾り気もないが無駄にでかい、ダブルベッド以上はあるのではないか?

「どこの貴族だ~!」と叫びたくなるでかさである。


部屋は石造りで灰色の石が見えているのだが汚いとか、冷たいといった雰囲気はなかった。広さがまたでかい、バスケットのコートくらい広い部屋だが扉が見えるのでこの部屋だけではないのだろう。


「一体どれだけ広いのやら?」


壁には絵画や剣が飾ってあるが、目立つようなものではなく壁と一体になっているかのようであった。


どことなくさみしい部屋だな。


全部の部屋がここと同じとは思わないけど、それにしてもなにもなさすぎる部屋だ。


けど、ここがどこであるかはわからなかったため、涼はちょっと調べてみようと布団から出た。



「よっと!」


布団から這い出した涼は、裸足で石畳の床に触れて案外冷たくないことに軽く驚いて・・・・


自分の姿を見てもっと驚いた。


「なんだこれは~~~!!!」




身体の傷がないのは回復系の魔法でも使って、誰かが直してくれたんだと思う。


あれだけの怪我がよくここまで治ったものだ。


それよりも、まず性別が女のままだった。


変身中は常に魔法を使っているような状態だから女になっているが、意識を失って時間がたつと男に戻ってしまうはずである。


それが弱点でもあるのだが・・・・


だが、今の涼は女の状態である。


あれだけの攻撃を受けて、意識を失えば絶対に男に戻っているはずであった。


あともうひとつ。


「なんでドレス・・・・」


そう、涼はドレスを着ていたのである。


真っ白なドレス、無駄にフリフリした装飾が多いが見ようによってはウェディングドレスにも見える。


「わけがわかんねぇし!」


そう言って涼は巫女服に換装しようとして魔力を込める・・・・が。


「なん・・・で?」


魔力が集まらない。


試しに武器を出そうとするが全く出てこなかった。


「ふん!ふん!」


腕を振りながら力づくで「出ろ~」とかやるが、全く反応がなかった。


「もしかして・・・・、俺・・・魔力が無くなったのか?」


そういって涼は首を振った。


「いやいやいや、そうだったら俺が女のままのわけが無い。というか目が覚めてからわけがわからんことばかりだ」




キィィィィ・・・


そう言って涼が部屋を物色しようと歩き始めた時、扉が開いた。


扉が開く音に気がついた涼は、その方向を凝視する。


そして、開ききった扉の前に立っていたのは1人の男だった。

190cmはあろうかという長身に切れ長の瞳、短い赤髪を軽く遊ばせている、西洋の世界から抜け出してきたような印象だ。


男は涼のことを観察しながら無言で涼に向かって歩いてくる。


「な・・・・なんだよ・・・」



何なんだよこいつ。



涼が若干身を引きながら警戒していると、男はこちらを見下ろしながら涼から2mほどの距離で立ち止まる。


「ほぉ、似合ってるじゃねぇか」



は?なんだこいつ!



「うるせー!俺の趣味じゃねぇ!」


男は、「くくくくくっ」と笑ってまるで意に介さずに笑う。


「ここどこだ!そしておめぇは誰だ!!」



こいつ、なんかムカつく!



男は涼の言葉を気にした風もなく、手を横に広げてやれやれといったような態度を取る。


渋谷とかのナンパ師っぽい雰囲気でもある。



いちいちムカつくやつだ。



「ここは魔界だ、お前らの住んでいる人間界とは次元の違う世界だ。そしてここは、王都ラディスオン帝国の城にある俺の私室だ。あと、「おめぇ」ではなく、バストマ・クレルという名がある、クレルと呼べ」



すげー上から目線で話してきやがる!



「ここがどこかは分かった。で、なんで俺はここにいるんだ!」


「俺がさらってきた。人間界になかなか強い面白い女がいると聞いていたのでな、観察しに行ったわけだ。そしたら、あの程度の雑魚魔物に殺されかけていたからな、助けて連れてきたってわけだ」



ぐぅ・・・・、最後にあの紫のやつが砕けたように見えたのは現実だったのか・・・。


なんか魔族に助けられたなんて釈然としないが・・・・。



「・・・・ありがとう。・・・一応命の恩人だから礼だけは言っておく、もう帰っていいか?」



こんなところに長居をする気はない、とっとと帰ってやる。





「それは無理だな、お前はこの俺の嫁になるのだから」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?



「は?」


「聞こえなかったのか?嫁になれと言ったのだ」



いやいやいやいやいやいやいや。


意味わかんねぇし、意味わかんねぇからね。


なんで?


Why?


こいつ頭おかしいんじゃねえか?



「無理!」


涼は腕を交差させてバツの形を作る。


「拒否権はない。命令だ」


「いや無理だから。意味分からないから!」


クレルは一度思案する顔になると、「しかたないな~」という態度で話し始めた。



いちいち癇に障るやつだ。



「俺たち魔族の嫁探しは大変なんだよ。貴様ら人間と違って魔族は寿命が長いが子供を作るのは難しい。性交なりキスなりして男の体液が女の中に入ると魔力も一緒に流れ込んじまって、このときに男の魔力が女よりも大きすぎると・・・。ボンっ!と女が弾けるわけだ。だから子供を作るには自分よりも魔力の高い女か、同程度の魔力を持つ女が相手じゃないと、女が死ぬ。分かったか?」



「・・・・・いや実際興味はないけど、その辺の事情はなんとなくわかった。・・・で、なんで俺?」


「人間相手でも子が成せるらしいからな、文献で見たことがあるが、昔そんな奴がいたらしい。それに、姿を隠してお前の戦いぶりを見ていたが、お前の魔力の強さと波長は俺のとかなり近いからな、だからさらってきたってわけだ。けどあの魔物が出てきてラッキーだったな、お前と真っ向から戦っていたら俺が勝つにしろ大変だっただろうからな」


「さっき俺が言った礼を返せ!見てたのかよ、変態が!それにお前たちの魔族事情など知らんし、おれは男だ!なんで男の俺が、男のお前の嫁にならなきゃなんねぇんだよ、お断りだね!」


矢継ぎ早に発せられる俺の罵倒をまったく気にせずに受け流しすクレル。


「お前が男と言うのは俺も驚いた、運んでいる最中に男になったからな・・・」


「じゃあ、なんで今は女になっているんだ。俺の意思じゃないとこの姿にはなれないはずだぞ」


涼はまだ警戒しながらクレルをにらみつける。


実際背の低い涼が、背の高いクレルをにらみつけると上目遣いのようになるので、かわいい雰囲気しか出ていないが涼は全く気付いていない。


「・・・・っ!?」


クレルは若干目をを逸らしながら俺の左の手首を指差した。



ん?手首?



左の手首を見ると何か薄紫色のカーテンのような、オーロラのようなものが纏わりついていた。



なんだこれ?




「俺の魔力で固めた枷をお前の腕に付けた。それには女の姿を維持しておく能力と、お前の魔力を抑え込む能力が付加されている。男の姿のお前など興味がないからな、俺がその魔法を解かない限りお前は一生女のままだ。だからなんの問題もない」


「な・・・・・・・・・・・・」



ふ・・・・ふざけるな、一生おんなのままだと、そんなことはお断りだ。


断じて拒否する。



「分かったら嫁になれ。これはもう決定事項だ」



知ったことか!



「このこの!」


俺はクレルを無視して、腕に付いているオーロラのような腕輪を取ろうとするが、まるで空気のように触れることができない。


なんど試しても何の効果もなかった。


クレルはそんな俺を見てため息をつくと手招きをしたてきた。


「とりあえずこっちに来い」


「断る!近づくな!」



誰が行くかバーカ!



「ったく・・・」


クレルが涼の視界から消えた。



「えっ・・・・、うわぁあ!」


一瞬で涼のそばに移動していたクレルは、ひょいっと涼を肩に担ぎあげる。


「な・・・な・・、は・・離せ!降ろせ!触るな!」


いきなりのことに動揺した涼はわめきながら暴れるが、力を完全に封じられているため全く抵抗という抵抗もできていない。


クレルは涼を担ぎあげたまま部屋を出て、どこかに向かっていた。




「は~な~せ~よ~!」


涼は手と足をばたつかせて抵抗を続ける。


「うるせぇ!」


パンッ!


クレルがいいかげん堪りかねて涼のお尻を叩いた。


「ひゃあっ!」



え、何今の?


俺の・・・・声?



自分でも理解できないほど高い声で悲鳴を上げたことに驚く涼。


「はっはっはっは、かわいい声で鳴くじゃねか」


クレルはそう言いながら何度も涼のお尻を叩く。


「痛っ!にゃっ!うぅぅ!ちょっ!もぅっ!やめっ!」


涼は、涙目になって抵抗することなく弱弱しく抗議をする。


「最初からおとなしくしていればいいんだ」


そう言って叩くことをやめてくれたクレルだが、もう10回以上叩かれた。



ううぅぅぅぅ・・・


いたい・・・・、おしりが~~・・・・



唸りながら干された洗濯物のように無抵抗になる。


クレルは階段を降りて、廊下を歩いて。


10分ほどで立ち止まった。



「ほら、着いたぞ」


そう言ってクレルが降ろしてくれたのは、すこしジメジメとした暗い石の通路。


等間隔で灯された松明が僅かな明かりを通路にもたらしているが、それでも夜の月明かりよりも頼りない。


「お尻が~~」


お尻の痛みでちょっと歩きにくいので歩かないことにする。


涼は、そして周りを見回した。


「なんか牢屋みたいな場所だな」


「ここは牢屋だ」


クレルが松明を持ってきながらそう言った。


「ま、まさか俺を閉じ込めるのか!?

・・・・・いや、けど・・こいつの嫁と虜囚の身となら、牢屋のほうがましかもしれない・・・・」


涼がそう言ってぶつぶつ言っているとクレルが松明で辺りを照らしながら歩いていく。


「俺が自分の嫁にそんな事をするわけがないだろ。それよりもこれを見ろ」


バカかお前?と言っているかのような顔をして俺を見降ろしてくる。


若干いらっとしながらクレルが照らした牢屋の中を覗き込むと、そこには20人ほどの人間が捕まっていた。


「なんで、人間がいるんだ?これも嫁とかにするつもりか?」


涼が本気でそんなことを言いながら中を覗き込む、中の人間はこちらには特に関心がないようでちらっとこっちをみたがあとは無関心だった。


「これは、お前のために用意した人質だ。俺の嫁にならなければこいつらを1人づつ殺す。わかったか?」


クレルは松明でわずかに見える暗闇の中、それでもはっきりとわかるくらいに満面の笑みで言い放った。


「そんなの卑怯だ!それに俺は男だって言っただろ!」


「そうか・・・、残念だ」


そう言って、クレルは松明を持っていないほうの手を牢屋に向けていく。


その手に魔力が集まり始めて・・・・



くっっそ~~~!


なんで、俺がこんな目に!



「分かった!なるよ!なる、お前の嫁になるからその手を下せよ、・・・な」


「そうか、それは良かった」


クレルはそう言うと元来た道を戻り始めた。



こいつ、絶対にSだ。


不本意だが嫁になるしかないらしい・・・・・。


だけど、それならこいつの寝首をかくことも可能ってことだ。


それに、この城の王を倒せば人間界の侵攻も終わりになるんじゃねぇか?


だったら、むしろこの状況はラッキーだったてことか・・・・・



「そう思わないとやっていけねぇよ」


涼はぶつぶつと呟きながらクレルの後を着いていった。


文才が~、文才がほしいよ~


ということで、ようやく嫁になりました。

あとはいかにふくらませることができるかがカギですね。



最後に、もし暇があるようでしたらご意見・ご感想お待ちしております。


ではノシ

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