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第8話「王との謁見」

コンッコンッ


涼は扉まであと2mくらいで動きを止めた。


「入れ」


クレルが扉の外の者を促すと、失礼しますと言って金髪の騎士甲冑を着た男が入って来た。


男は涼を敵視するような眼で一瞥すると興味をなくしたかのようにクレルの近くまで歩いていき跪いた。


「王がお呼びです。そこの人間も一緒に連れて来いとのことです」


クレルは最初やれやれというように頷きかけて、あとの言葉を聞き、顔を歪ませて涼のことを見る。



は?俺も?


王さまって何さ?


行きたくないからね。



と、顔に書いてあるほど、涼は如実に嫌悪を浮かべる。


クレルは難しい顔をして何か考えながら立ち上がり、扉に向かう。


「涼、着いてこい」



いやだ。



とは言えないんだよね。


「・・・・分かったよ」


渋々とクレルの後に付いて扉から廊下に出た。





俺は今、廊下を歩いている。


思ったよりも小奇麗な通路を歩き、下に向かって階段を下っていく。



そして、もちろん今は巫女服に換装してある。


あんなドレスなんて着たくないからな。


クレルは巫女服に変わった俺を特に何も言わずに、さっきから黙々と歩き続けていた。


魔力が戻った俺は、さっきとは違ってしっかりとクレルに着いていくことができる。




・・・・・・・・・・・・あれ?


なんか魔力が身体に満ちてきた。



不思議に思い小走りになってクレルの横に並び、顔を見上げる。


それに気がついたクレルは前を見据えたまま、こちらの聞きたいことを察知して説明をしてくれる。


「涼、お前の魔力を8割ほど戻してやっただけだ」


涼は首をかしげながらクレルを見上げ続ける。



なんでだ?


さっき魔力を戻したのに、また返してくれるとか二度手間じゃん。



「なんで?」


「王が何をするか分からないからな」


「どういうことだよ?」


今はいつの間にか長い直線の連絡通路のような場所を歩いていた。


石というわけではない、ただ白いだけの幅4m高さ4mほどの長方形の長い通路。


ところどころに設けられている1m四方の窓からは眩しいくらいの太陽の光が入り込んでくる。


一体この城はどういったつくりなのか気になるのだが、クレルの歩くのが速いのとなにか緊張しているような雰囲気のため、ゆっくりと外を見ることもできない。


ちらっと見た感じでは、眼下に城下街が見えて、その周囲を城壁が取り囲んでいた。


遠くの同じ目線の高さにはこっちと同じような連絡通路が左の窓、右の窓から見える。


これ以上みてもよくわからないため、クレルとの会話に集中することにした。


「王は気分の変動が激しくてな、以前王の機嫌を損ねたやつが一瞬で灰になった。そして、たとえ気分を損ねることが無くても、楽しそうだからという理由で何人もの俺の部下や、城に訪問してきた客人が消されている。気休めにしかならないだろうが、何も対策を立てないよりかはマシだな」


「なるほど・・・・・ね」



なんか理屈が通じなさそうで、会いたくないんですけど・・・・。



「けど、いいのか?俺・・が・・・、私が王を攻撃するかもしれないぞ?」


「はっ、無理だな。王は俺ですら太刀打ちできないほど強い方だ、俺に力を抑えられている上に、俺よりも僅かだか弱い涼が敵うはずがない。対峙すれば嫌でもわかるさ、けど・・・・そうだな、もしも涼が王を攻撃するなら俺が全力で止めるつもりだし、また、その腕輪で魔力を0まで封じてもいい、どっちにしろ無駄なことはしないほうが身のためだな」


「へ~そんな強いんだ」


「単純に魔力量だけ見ても俺や涼の3倍以上だからな」


「ふ~ん」




「・・・・そういえばさ」


「なんだ?」


「わ・・私の身体を直したのとか、き・・・着替えさせたのって誰?まさかクレルじゃないだろうな、もしそうならムッツリと呼ぶぞ」


「何だムッツリとは?まぁいいか・・・涼の身体を直したのは俺の部下の一人のサイールだな、あいつの治癒の能力は頭さえ無事なら完全再生が可能というほど高い、涼の場合はなかなか大けがだったからな、治ってすぐなら痛みを多少感じたかもしれないが今はそうでもないじゃいか?」



確かに目が覚めた時は多少痛かったけど、今はもう鈍痛すらない。



「あと、着替えさせたのは俺の部屋の侍女だ。俺は女の着るものなど着せ方が分からん」



なるほど、それはそうだ、クレルの性格では着せるなんて甲斐甲斐しい真似するわけがない。


むしろ、あのドレスとかを脱がす、というか破くほうが似合っている気がする。




そんなことを考えているうちに、長い連絡通路は歩き終わり、城の中を歩いていた。


そして、それ以上の会話をすることなく俺はいつの間にか、巨大な扉の前にクレルと一緒に立っていた。



「入るぞ」


そう言って扉が開き、王の間に入っていく。






そこは陰気な場所だった。来る途中の連絡通路なんかは「ここは光りの城の廊下です」と言われれば信じてしまえるほどに白く、暖かだったのに、この場所は魔王の居場所に本当にあっているとしか言えないくらい、・・・・・らしかった。


毒々しいほどに赤い絨毯を踏みしめて王の元へと歩いていく。


この王の間には正面の玉座に王と思われる人物が座っている以外誰も存在していなかった。


黒い髪に赤い瞳、赤い鎧のように見えるが、よく見ると鎧のように見える洋服を着こんでいるようだ、動きやすさを重視したような衣装。


ひじかけに頬杖をついてめんどくさそうにこちらを見下ろしている。


そして何よりも驚いたのはかなりの美女だということだ、黒髪は背で見えないが腰辺りまで長いように見える。


そして、王の前に立ちクレルが跪く。


涼も一緒にぎこちなくではあるが跪いた。


「グラニ王、青婪軍(せいらんぐん)将軍バストマ・クレル、人間界侵攻より帰還いたしました。この進軍により海上の小島のいくつかを占領、人間は殲滅完了しました。しかし、今回使役した魔獣はおよそ全滅いたしましたが・・・・・・」


クレルの言っていることは気になるが涼はそれどころではなかった。



何なんだあいつ・・・・・。



性別にも驚いたが、なによりも王から発せられる圧力(プレッシャー)が尋常ではない。


今は抑えられているようだがそれでも決して近寄りたくない雰囲気を醸し出していた。


強いということもあるのだろうが、それにもまして禍々しさがあふれだしている。



美女の魅力というか、この女がかなり怖い、・・・・存在がやばい。


俺の世界で昔にいたルイという王さまの嫁であるマリーさんとか、金髪の双子の姉が歌う『悪の~・・』シリーズの王女とかを実際に目撃した気分だ。



速くこの場所から離れたいのが本音だ・・・・。


と、色々と考えていたらどうやら名前を呼ばれたらしいので顔をあげて王を見る。



「お前はクレルの嫁らしいな」


「・・・・・はい」



不本意だけどな・・・・。



「ふむ、人間のくせにクレルと同等の魔力とはなかなかやるのぉ・・・。そうだ!人間、貴様の魔力が本当にクレルと同等かどうか確かめてみようではないか」


隣でクレルが焦ったような雰囲気を醸し出している。


そんなことには気が付かず、涼は確かめるって何?


と、首をかしげていた。




「キスしろ」




・・・・え?


最近思考停止になることが多い気がする。


平穏?なにそれ?


的に、俺の頭の中は常にミキサーが入っているかのように、ぐっしゃぐしゃだった。



「・・キ・・・ス?」


「そうじゃ、なに簡単なことだ。貴様とクレルがキスをする、同程度の魔力なら生き残る。力の差があるのなら貴様が弾けて死ぬ。ただそれだけのことじゃ」


「王!しかし、まだ時期ではありません。涼を俺の魔力にこれからゆっくりと馴らしていかなければ・・・」


「黙れ。やれといったらやるのじゃ、これは命令じゃぞ。それともクレル、貴様は我の言うことが聞けぬと言うのか?」


クレルが反論しようとするが、ここで反論すれば気まぐれな王のことだ、クレルを殺すことだってあり得る。


苦虫をかみつぶしたような表情で、しかし決して王には表情を見られないように立ち上がったクレルは、すぐ後ろにいる涼に向き直り一歩近づいた。




クレルがこっちを向いた。


とても嫌そう?というよりは何かに耐えているような表情でこっちに近づいてきた。


いまだ混乱中の涼はただクレルを見上げるだけで、跪いたまま微動だにできなかった。


目の前にクレルがいる。


いつの間にしゃがんだのだろう?


その目線の位置は涼と同じ高さになっていた。



ゆっくりと。


まるでスローモーションでも見ているかのようにクレルの手が俺の頬に触れた。


そのままあごに滑らせた手でくいっと上を向かされる。


クレルの紫色の瞳が近づいてくる。


まるで俺の身体じゃないかのように心臓が早鐘を打ち、耳にはドクンドクンドクンと心音しか聞こえない。


なんでこんなにも緊張しているのか混乱しきった今の頭では到底理解できない。



「涼・・・、死ぬなよ」


「え・・・、な・・に!?ふぅぐ・・・」



何かを聞こうとした、しかしその唇は言葉を紡ぐことなくクレルの唇で塞がれる。


「・・ふ・・・んぅ・・、ぁぅ・・・・・んんぅぅ・・」


遠慮なんてしてこない本気のディープキス。


最初から舌を口内にねじ込まれて、本能的に押し出そうと舌で押し返そうとするが、クレルは巧みにその舌を絡め捕り快楽へと導いていく。



ドクンッ!!



初めてのキスに酔いしれていたのは一瞬だったのか、数秒だったのか、数分だったのか、涼には判断できなかったが、ソレは唐突に訪れた。


クレルとキスをする。


おそらくはその瞬間だったのだろう。


クレルの魔力という名の熱く黒い何かが身体を駆け巡るのが分かる。


喉を通り、胃や腸といった消化器官無視してクレルの魔力は涼の下腹部に真っ直ぐに下降した。


そして、そこから身体を侵食するかのように徐々に手足へと染みわたっていく。


じれったい様な焦燥感を感じるが、そんなことを涼が考えることができるはずがないほどに身体はクレルの魔力によって蹂躙されているため、思考できない。


その熱はただ涼の身体を満たすだけでなく、媚薬のような興奮作用を含み、強烈な熱となって涼の思考を染め上げていった。



な・・・なに・・これ・・・・・。


身体が熱い。


足に力が入らない・・・・。


なんか・・・ふわふ・・わ・・・す・・・・・る・・・。



そこで涼は意識を手放した。





「ほう・・・、生き残ったか。しかも、初めて受け入れたにもかかわらず身体に微細な傷もないとはの~、クレル・・・ずいぶん相性のいい女を見つけたようだの」


そう言って王は口角を上げて心底楽しそうにクレルの腕の中で寝息をたてている銀髪の少女を見つめる。


「王・・・、涼を休ませたいのですがよろしいでしょうか」


クレルは自身の魔力を受け入れたことで頬を赤く染めて規則正しくすぅ、すぅと寝ている少女をしっかりと腕に抱いて退室の許可を求める。


「あぁ、よいぞ。ゆっくりと休ませるがいい」


「ありがとうございます」


涼をお姫様だっこした状態で恭しく礼をして、クレルは自身の部屋へと戻っていった。




クレルが王間から出て行ったあと・・・・。


ラディスオン国王である、グラニ・ラ・プルミエは玉座から立ち上がり、自室へと歩き出す。


「くっくっくっくっく、あの小僧と同じ魔力の娘か・・・、人間界殲滅よりは少しは暇がつぶせるかもしれんの~」



不吉な言葉を残して。


お待たせしました。


遅くなり申し訳ないです。

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