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「いただきます」
私たちは家族は夕食を食べていた。
「ねぇ、お母さん」
「なに?」
「・・・ご飯食べてからで良いや」
「そう?」
「・・・うん」
「何の話?」
雄がお箸を止めて聞く。
「あんたには関係ない」
雄はふーんと言いながら食器を片づけ、自分の部屋に向かった。
「未来は何を知りたいの?」
「え・・・」
「言いたくなければ・・・良いんだけど」
・・・・・・・・・たまにホントの家族じゃないみたいになるんだ。
この感覚ホントは嫌なんだよね。
「夢、夢見たの」
「ふーん、どんな?」
「私が小さい時の・・・」
私は夢の内容を話した。
「そう。でも夢なんでしょ?」
「そう・・・なんだけど、私経験した事ある様な気がするの」
私は俯いてそう言った。
「そう?もしそういう事があったとしても、もう10年以上も前の事だから覚えてるわけないでしょう」
お母さんは笑いながら言った。
“家族じゃないみたいな空気”が無くなっていた。
“家族じゃないみたいな空気”はいつも一瞬出てきて一瞬で消えてしまう。
「そうだよねー。ごめんごめん」
私も努めて明るく言う。
「話、それだけだから。・・・・・・・・・ごちそうさま」
私は自分の部屋に向かい、ベッドに寝転がった。
はーあ
そうだよね。
この違和感は勘違いなんだ。
ホントはたまにあった。
でも誰にも言わなかった。
言えなかった。
もう、大丈夫だよね?
いつの間にか泣いていた。
ホントは辛いよ・・・ホントはしんどいんだ。
声をあげて泣いた。
「は、あー!!」
「うっせ!」
「ごめん」
私が顔を上げると、雄が爆笑した。
「笑わないでよー。私も今ビックリして叫んじゃったんだもん」
「すげーな。誰かに殴られた?」
まだ笑いながら問い掛けてくる。
「分かってるくせに」
「・・・なんかあったら、俺に言ってこい」
雄は急に真面目な顔になって言ってきた。
「なんつって」
と笑いながら行ってしまった。
んー、この眼どうしよう。
・・・・・・・・・やっぱ眼鏡かな。
「未来おはよー、今日眼鏡なんだね」
「おはよー由紀。うーん、ちょっとね」
私は少し眼鏡をずらす。
「ちょ、腫れちゃってるじゃん」
「だから眼鏡なの」
「なんかあった?」
「ううん。小説読んでたら泣いちゃって・・・」
由紀はそうと言った。
納得したフリをしてくれた。
こういう時由紀にはよく助けてもらってると思う。
意外と大人なんだよね。
「・・・・・・・・・夢の事言ったよ」
「なんて?」
「もしホントの事でも昔の事だからあんまり覚えてないって」
「そっかー、まぁ日常だったら覚えてないよね」
この日は凄く平和な日だった。
「おい、未来」
私は声のした方に顔を向けた。
「お、眼鏡」
「なに?」
「話・・・あるんだけど」
私は教室を出た。
「どうしたの?」
「ちょっと」
私は義人に腕を掴まれ屋上に連れてこられた。
「なに?」
「未来は好きなやつとか・・・い、いるのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめん、今それどころじゃないの。気持ちの余裕がないというか」
私は正直、義人の気持ちには気付いていた。
でも今告白されても、受け止める事は出来なかったと思う。
「そう・・・だよな。ごめんな。あ、なんかあったら言えよ」
「うん。ありがと」
義人はじゃあと言うと行ってしまった。
私は屋上にあるベンチに座り空を見た。
夕方の燃えるような赤。
この色好きなんだよね。
このまま何もなければ良いのに。
「あなた・・・・・・未来、気付いたかもしれない。もしかしたら・・・」
「大丈夫だ。俺が何とかするから。第一俺らは未来と家族として接してきたんだ」
私は電話でこんな会話がされてるなんて知る由もなかった。