第02話 開くたび眠りへ誘う禁断の書 ―― Visual Basic入門
封印されし知識があった。
「Visual Basic入門」である。
かつてBookOffにて発掘され、
我が家へ迎え入れられた伝説の書。
だが開かれない。
読まれない。
学ばれない。
本棚に刺さったまま、
静かに時を待っていた。
選ばれし勇者の訪れを。
なお勇者は私である。
黒騎士勇者。
来ない。
全然来ない。
不便な日々は続いていくのである。
ーーーーー
そんなある日。
私のテレビ録画環境に異変が起きた。
私はPCにてテレビ録画していた。
録画は成功している。
成功のログがある。
しかし動画が無い。
あるはずの未来が消えているのである。
事件である。
ロケッティア消失事件である。
私はログを細部調査した。
昔MS-DOSを少し触っていた。
BATファイルもなんとなく読める。
いわば昭和の遺産を継ぐ男である。
ffmpeg。
TS。
mp4。
並び立つ謎の呪文たち。
だが私は怯まない。
なぜなら雰囲気で生きているからである。
雰囲気勇者。
調べていくうちに見えてきた。
番組名がおかしいとmp4変換に失敗している。
「!」
「?」
変な記号。
Windowsが嫌いそうな文字。
どうやらファイル名に問題があるらしい。
文明は文字に滅ぼされるのである。
悲しい。
実に悲しい。
ロケッティアが犠牲になった。
空へ飛ぶ前に消えたのである。
そこで私は思った。
ファイル名を自動で修正してくれるアプリ。
ファイル名正規化アプリ。
欲しい。
ついでにffmpegをGUIで使えるアプリ。
欲しい。
だが無い。
いや
たぶんある。
世界のどこかにはある。
だが違う。
私が欲しいのは
私が欲しい感じのやつである。
説明になってない。
だが伝わる気がする。
ならば作るしかない。
未来は待つものではない
創るものである。
ガイアが俺にもっと正規化しろと囁いている。
しかし私は文系素人である。
未来を語る前に知識が無い。
どうする。
AI。
2026年の必殺技である。
私は聞いた。
「CさんCさんCopilotさん。
プログラミング教えてくれますか?
ファイル名正規化アプリが作りたい。
難しいですか?」
すると返事が来た。
「初心者向けですよ。」
マジか。
そんな軽い感じなのか。
富士山登ろうとしてたら、
「近所の公園ですよ」
と言われた気分である。
ならば今こそ
封印を解く時。
Visual Basic入門。
覚醒の刻である。
私は本を開いた。
寝た。
なんなんだこれは。
数ページで眠くなる。
異常である。
本が睡眠魔法を放っているとしか思えない。
開く。
寝る。
開く。
寝る。
開く。
寝る。
繰り返す青春を。
導かれる未来へ。
いや未来どこ。
全然進んでない。
本だけが静かに読了へ向かっていない。
そんなこんなで時は流れた。
そして新たな事件が起きる。
スマホのメモアプリ問題である。
私が愛用していたメモアプリ。
便利。
実に便利。
だが
PC版が消えていた。
闇に飲まれたのである。
ダークマターに取り込まれPC版が廃止になっていた。
スマホしか使ってなかったので気付かなかった。
しかし今
PCでもメモが必要になった。
どうやってPCに送る?
メール。
Google Drive。
共有。
コピペ。
できる
できるけど
めんどくさい。
ものすごくめんどくさい。
文明が進歩しているのに作業だけ原始時代である。
ああ
ダウンロードしておけばよかった、PC版。
after festival。
祭りの屋台を片付けながら後悔している黒騎士勇者。
他のメモアプリも探した。
だがどれも違う。
PC版が無い。
サブスク必須。
独自形式保存。
サブスク怖い。
独自形式怖い。
サービス終了怖い。
データが消えるの怖い。
勇者はビビりなのである。
ほら
人生のログじゃん。
怖いじゃん。
30年後
読めなくなったらどうする。
TXTなら読めるだろう。
たぶん。
メモ帳あるし。
Windows95でも読めそうだし。
ならば作るしかない。
また作る話になった。
勇者はいつも作ろうとしている。
なおまだ作れていない。
私は再びAIを呼んだ。
「CさんCさんClaudeさん。
プログラミング教えてくれますか?
テキストメモアプリが作りたい」
Claudeは言った。
PCとスマホ両方使うならC#が良い。
Visual Studioが良い。
へえー
よく分からない。
だが未来っぽい。
未来感だけは分かる。
Visual Studioは無料なのだ。
無料。
素晴らしい。
このご時世、無料ほど硬派な言葉は無い。
私は即座にオフラインインストーラーを保存した。
ネットが繋がらなくなったらどうするのか。
ダウンロード出来なくなったらどうするのか。
想定する。
ビビりだからである。
サービス終了が怖い。
配布終了が怖い。
未来の自分が泣くのが怖い。
攻撃的守備である。
守備型黒騎士。
そしてVisual Studio 2022をインストールした。
昔使っていたPC、HP ENVY Phoenixへ。
インストール完了。
おおっ
黒い。
かっこいい。
サイバーである。
近未来である。
ストリートという劇場に舞い降りた黒天使である。
画面を見ているだけで強くなった気がする。
プログラマー感がある。
完全にある。
満足した。
非常に満足した。
そして流れる日々。
寝る。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
この頃の私は、
「Visual Studioかっこいい」
だけでかなり満足しております。
開発進捗としてはゼロに近い。
やばい。
でも2026年という時代は、
AIに聞けばなんとかなる気がする時代なのである。
実際なんとかなることもある。
ならないこともある。
だから面白い。
ブックマークしないと、30年後に「昔のメモ消えた……」って泣くぞ。
評価ポイントが入ると開発速度が2mmくらい上がります。
Visual Basic入門を開く確率も0.3%くらい上がります。
たぶん。




