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悪役令嬢に転生! 国外追放後から始まる第二章のストーリー全く知りませんけど!?

作者: 大福金


 えっ、ちょっ……まっ!?


 私、悪役令嬢のアリスティアに転生してる!!


 この場所は魔獣が多く住むと言われている、魔の森……私は断罪後、国外追放が決まったけど。


 どうやら私は、主人公の嫌がらせにより、魔の森に捨てられたみたい。


 そして今、魔獣に襲われ必死に逃げています。


「やだっ! 来ないでぇぇ」


 何でこのタイミングで前世を思いだすのぉぉぉ!?


 よくあるラノベの設定とかだと、断罪前や幼少期に思いだしてるじゃん!


 何で今!? 魔獣から必死に逃げてる時に、走馬灯の様に前世の記憶を色々と思いだしてるの?


「はっはぁっ……っくっ」


 この世界は日本で流行ってた乙女ゲーム【深緑の乙女と魔法使い】の世界だ。


 魔法や冒険要素もあり! 学園ストーリーもありで、大人気のゲームだった。私もハマりやり込んだ……その世界に転生は嬉しいけど。


 これ知ってるゲームの内容全て終わってるじゃん! もうエンディング!


 このゲームの主人公、リリアは平民だけど、魔力が高いのを認められて、貴族の養女となり魔法学園に入り15歳~18歳まで魔法学園にて魔法使いになるべく魔法を学ぶ。


 そこには貴族はもちろん皇子もいてこの学園で色々と……ラブストーリーがおこるんだけど。

 私は主人公のライバル令嬢アリスティア


 ──悪役令嬢役だ。


 どうやら主人公が、ハーレムルート選んでくれちゃってるから。


 私は皆から断罪され。国外追放ルート……このゲームの中では悪役令嬢にとって1番最悪のルート何だけど。


 魔の森に捨てられるとか、ゲームではそんな設定なかったよ?


 この世界の主人公リリアって性格最悪じゃない?


 そして……エンディングの先!


 この先のストーリー……私、全く知りませんけど!?


 あーー詰んだ。


 もう足だって動かない、ずっと魔獣から逃げ回って体力を使い果たした。って言うかこんな、ドレス姿で魔の森ってどう考えてもおかしい。


 魔獣を倒すチート能力なんて私にはないし、もうこれ以上体が動かない。

 こんな必死に走った事人生で初めてだよ!


「はっはぁっ」


 あーー魔獣に食べられるとか痛いんだろうな。はぁ……何でこんな事になるんだろう。


 もう走れない、歩けない。


「息っくるしっ……」


 良いよ殺してよ。 


 頼むから一瞬でお願いします!


 私は両手を胸の前で合掌し、目を閉じ覚悟を決めた。


 脚がガクガクと地面にへたり込んだその時、目の前の魔獣を誰かが一瞬で倒してくれた。


「えっ!?」


 ———助かった!?



 何が起こったのか理解出来なかったけど、私はガクガクと震える足でどうにか立ち上がり、助けてくれた人にお礼を言った。

 その出立は産まれたての子鹿のよう。


「ありがとうございます」


 どうにかお礼を言うと。

 美しい人は私をじっと見つめ。


『我が愛しき番よ。其方が無事で良かった』


「ふぁっ!?」


 ──このセリフ知ってる!


 このセリフは!

 この見目麗しいイケメンは……!

 ゲーム第二章の予告スチルで見た、竜王様が主人公に言うセリフだ。


 そう言えば、相手の主人公の姿が公開されず、友達と想像し盛り上がったなぁ……。


 あれ?


 でもそのセリフを私に今……言ったよね?

 ちょっ……もしかして!?


 第二章の主人公って第一章の元悪役令嬢なの?!


 私、このゲームの第二章知りませんけど?


 いきなりスタートですか?



★★★



「何処も怪我をしてないか?」


 物凄いイケメンが私のことを心配してくれる。

 キラキラ眩しくて目が開けられなくなりそうなほど。

 この人は、竜人の王【ジェイデン・デュ・アストリア】


 名前だけは第二章の初期設定のスチルに書いていたので、覚えている。


 その相手のヒロインが、第一章の悪役令嬢だとは思わなかったけれど……。


「ありがとうございます。私はアリスティアです。貴方様に助けていただいたお陰で無傷です」



「……良かった。私の名は、ジェイデン・デュ・アストリアだ。我が(つがい)に何かあれば私は生きていけない……」


 ———そんな綺麗な顔でそんなセリフ言われたら頭がどうにかなりそう。


 もちろん今まで生きてきて、そんな事誰からも言われた事ないし、なので私は恥ずかしくて倒れそうです。



「もっと早くに助けていたら。怖い思いをさせてゴメンね? アリスティア」


 そう話しながら、綺麗な顔が近づいてくる。

 あわっ、近いです! 距離感がおかしいです。


「あっあの! 私は大丈夫です。ありがとうございます。

 あの……私は本当に貴方の番なのですか?」


 竜王様はビックリし、物凄く切ない目で私を見つめ返す。


「——すみません。私には番がわかりません」


「人族のアリスティアには分からないのだな。この切なく愛おしい気持ちを……共有したいがムリなんだな?」 


 恥ずかしいセリフを真顔で言わないで!


 顔が赤くなっているのが分かる。


「すみません……」


 申し訳なくて頭を下げて謝ると、眉尻を下げ少し困ったように笑う竜王様。


「どうであれ、俺はアリスティアが愛おしい。この気持ちは覚えいてくれ」

「はぅ……」


 ……まだ言いますか。

 これ以上私の顔を熱くさせないでください。頭が沸騰しそうです。

 何か話を変えないと。この甘さに耐えられない。


「あの……どうやって私を見つけたんですか?」


「ああそれはね、俺はこの森近くの街に宿泊していたんだ。すると突然急に胸が高鳴り、何故か森が凄く気になって仕方ない! どうしても胸の動悸が治らないので、気になる森の方がくに来てみると、胸を締め付ける様な芳香がする」


 芳香……? 何かフェロモン的な匂いが出ているのかな?


「香りの強い方に行くと、アリスティアが魔物に襲われていて……! 見た瞬間は心臓が止まるかと思ったよ」


 ジェイデン様は言い終えると、愛おしそうに私の髪を人束とりキスを落とす。


 はうっ、何このカッコ良い仕草! イケメンにしか似合わないよ。こんなの。


「アリスティア、俺のことはジェイデンと呼んでくれ」

「はい……ジェイデン様」


 私が名前を呼ぶと、お日様のような顔で微笑むジェイデン様。

 眩しいです。


「それにしても……何でアリスティアはこんな姿で、森に1人でいるんだ? 危険過ぎる!」


「実は……」


 私はもう……ストレスをぶち撒けるように、今まであった話を乙女ゲームのストーリーをジェイデン様に話した。


「———其方の国はアホウばかりなのか? 何故その様に一人の少女の話を全て信じ、ろくに調べもせずに、アリスティアをこんな酷い目に……? わからぬ」


 信じられない! っとジェイデン様は怒ってくれ、私の悶々とした怒りが、少しおちついた。


「アリスティア? 良かったら我が国に来ないか?」

「えっ? 良いのですか?」

「俺は愛しい番ともう離れる気はない。アリスティアには番の愛おしさが分からないのだろう? 俺は強要したくない。だから……俺の事を一緒にいて沢山知ってくれ、そして同じ気持ちになってくれたのなら……先の付き合いを考えてくれないか?」


 何て優しいんだろう。こんな優しくてカッコいい人がいるなんて!


 この人に出会えてなかったら、私は魔物に食べられて終わりだったのだから……!





 ★★★


 主人公リリアside



 あーーっ!


 やっと邪魔な女、【アリスティア】を断罪出来たわ。


 乙女ゲームの世界に転生したって気づいた時はビックリしたけど、私ってば主人公リリアじゃん!


 ふふっ、最高。


【深緑の乙女と魔法使い】


 このゲームは、イケメンが多すぎて選べないんだよね!


 もちろんハーレムルート選ぶよね。


 クスッ


 ———ゲームの裏技とか知り尽くしてるんだから! もち全員攻略!!


 そんな強強な気持ちでいたんだけど。


 あれ? 何で? 世界観はゲームそのものなのに……?


 皆がゲームみたいに行動しない。


 やはりここは現実世界……。


 ゲームとは違う!?


 悪役令嬢アリスティアも何もしてこない。

 強いて言えば皇子に寄って行くと、作法だの淑女としてのなんだのとか注意してくるレベル。


 こんなんじゃハーレムルートどころか、一番攻略しやすい筈の王子様だって攻略出来ないよ!


 とか考えてたら、やっぱり主人公チートあるじゃん!


 私、魅了魔法が使えるようになった!

 あー……ココからは楽勝ルートだったわぁ。


 ふふっ、皆が思う様に動いてくれる……。


 アリスティアの奴ったら、悪役令嬢のくせに、見た目が主人公の私より美人って設定だったからさ!


 主人公は私なのに!

 むかつくわ。


 それに何故かゲームとは違い、王子や宰相の息子、更にはアリスティアの弟と……。

 攻略対象全員がアリスティアと良い関係だったのよね。


 ———まぁ?


 魅了魔法を使える様になった私には、もう関係ない話だけどね!


 アリスティアを国外追放したけど……。


 私はこのゲームの二章知ってるのよ。

 ここから主人公アリスティア編スタートするからね!


 アリスティアが人気だったから、二章の主人公になったのよね。


 だけど? 誰があんなイケメン竜王様と会わすもんか、貴方は森で死んでね?


 国外追放する時に、アリスティアを連れて行く警備隊達に魅了魔法かけて森に捨てて貰った。


「ふふっ」


 番を失い悲しみを背負った竜王様も、その内私が貰ってあげるからね?


 ああっ!!


 世界が自分中心に回ってるって……何て楽しいの!



★★★




「あの……? 竜王様。そのう?」

「んん? アリスティア、俺のことはジェイデンと呼んでくれないかい?」


 そっそうだったー!


「ジェッ…ジェイデン様。私、自分で歩けます!」


「ダメだよ? アリスティア。だって君は靴さえ履いていない。そんな足でこの森を歩くなんて無謀だ」


 私はジェイデン様にお姫様抱っこされ、森から街に向かっている。魔物から逃げ回る時に靴は無くなり、脚は傷だらけ。


 傷だらけの脚は、ジェイデン様が治癒魔法で綺麗に治してくれたので、今は痛みもなく傷もない元の綺麗な脚に。


「それに……このままでは、立って居るだけでも、可愛いアリスティアの脚が見えてしまう。俺は他の人に、可愛い脚を見せたくないからね?」


 確かに魔物から逃げ回っていた時に、ドレスのスカートはビリビリで、脚は太ももまで丸見えだ。今はジェイデン様のマントに包まれているけれど。


 日本人だった時は腐女子だったから。お姫様抱っこなんてされた事ない。


 ——どころか彼氏だって居たことない!


 それが、こんな見惚れるくらいの綺麗な人に至近距離でくっついて……。


 ドキドキしすぎて、心臓の音がうるさい!

 顔はきっと真っ赤になっているだろうし。恥ずかしい。


 私はまともにジェイデン様の顔を見る事が出来ず……ずっと下を向いて話をしてる。


 だって顔を上げたら、綺麗な顔したジェイデン様と目が合って……極上の笑顔が降り注がれる。


 くぅ。心臓に悪い!


「アリスティア、どうしたんだ? 気分が悪い?」


 ずっと私が下ばかり見てたせいで、ジェイデン様が心配して覗きこんで来た。


 はわっ、綺麗な顔が近いんです! 緊張するんです!

 思わず顔を背ける。


 その姿を見たジェイデン様が目を細め少し寂しそうな顔をした。


 あっ、違うの、嫌じゃないんです!

 ドキドキして顔が見れないだけ! なんて言える訳もなく……。


「だっ、大丈夫です!!元気です」


 それしか言えないなんて、私のコミュ力のなさ。


「もう少し我慢してね? あと少しで街に着くから」


 ううっ……そんな顔させてすみません!我慢とか嫌とかじゃないのに……。



 あっ、目の前が明るくなってる。街の灯りだ。良かった……!

 私……助かったんだ。


 あのまま死ぬのかと思った。


 ジェイデン様が助けてくれなかったら……!


「アリスティア、どうしたんだ? やはり何処か痛いのか?」


 ジェイデン様がものすごい勢いで心配している。


 ——あっ!


 私は知らない内に涙を流していたみたいだ……。


「すみません。街の灯りをみたら安心して。ホッとしたのです。この涙は嬉しいのです」


 変な喋り方だけど、もう仕方ない。


「そうか……」


 そう言うとジェイデン様は優しく私の頭を撫でてくれた。



 ★★★



 街に着いたら、男の人二人が私たちの所に慌てて駆け寄ってきた。



 ハッハァッ

「竜王様!! 急に何処に行ったのかと探し周りましたよ!」


 ハァッハァ

「何も言わないで勝手に何処かに行かないで下さい!」


 男の人達は汗だくだ。ジェイデン様の部下? の人なのかな?


「ふうむ。急に森が気になったのだ? 仕方なかろう?」

「はぁー……! そうですか。で、気になった理由は分かったのですか?」


 部下の人は頭に手をのせると、少し呆れたように大きなため息を吐いた。


「わかった。俺が抱いている可愛い娘。唯一無二の存在が見つかったのだ!」

「唯一無二!? つっ、番様が見つかったのですか!!」

「そうだ!早く部屋に案内しろっ!」


 部下の人達は私の姿を見て、目を見開いて驚いた後、一人の部下の人が慌てて走ってどこかに行ってしまった。


 残った一人が話かけてきた。


「番様、私は竜王様の執事をさせて頂いています。ルミエールです。番様のお名前をお聞きしてもよろしいですか?」


 執事のルミエールさんはスーツ姿で短髪白髪をぴっちりと横分けした、イケオジ様だ。


「アリスティアです。竜王様に森で助けて貰いました」

「何と、森で……? この様な美しい女性が一人で? ふむ……後で詳しく教えて頂きたいですね」


 ルミエールさんは私が森に一人で居た事が不思議みたいだ。

 まぁ普通に考えて、森にドレス姿でいるとかおかしいもんね。


「この場所で立ち話してる場合でないですね。急いで泊まっている部屋に行きましょう」


 私はその間も、ずっとジェイデン様に抱っこされたまま街を歩き、この街では一番高いであろう宿泊施設にたどり着いた。



★★★



 豪華な部屋に入ると、何人もの女の人たちが迎えてくれた。

 どうやら先に走って行った男性が、伝えてくれていたらしい。


 その女の人たちにジェイデン様は「身なりを整えてやってくれ。丁重に扱うのだぞ」と言いつけ、私は女の人達に奥の部屋に連れて行かれ……!


「ちょっ!? 自分で出来ますから! ひゃわっ、まっ……」

「そう言う訳には行きません! 私達はこれが仕事です!」


 私はお風呂場で、女の人達にマッサージをされ身体をピカピカに磨かれている……。まっ裸でね!

 正直、日本人であった記憶がある今の私には、ただの辱めでしかない。


「うう……本当に恥ずかしい。」


 声に出てしまっていた私の言葉に女の人達は言う。


「何が恥ずかしいのですか? この陶器のようにきめ細かく白い肌、大きく形の良いお胸、引き締まった腰すべて美しいです」


 ウットリしながら私の体について話す


 もうやめて? その誉め殺しが恥ずかしいんです……!


 ピカピカに磨かれた私は、綺麗なドレスを着せられやっと解放された。


「何を着ても美しいなアリスティア。急だったので、こんなドレスしか用意出来なくてすまない。明日はアリスティアに似合うドレスを作って貰おうね?」


 今着てるこのドレスは、侯爵令嬢だった時でさえ着たこともないレベルです……!


 竜王様! 価値観が既におかしい


「あの……ジェイデン様。私は命を助けて貰っただけでも感謝しきれないのに、更にこの様にしてもらい。私は何をジェイデン様に返したら言いのですか?」

「アリスティア、俺は何もいらないよ。俺の側にアリスティアが居るだけで幸せなんだ」


 ジェイデン様は話しながら優しく私の頭を撫でる。


「俺はね? 今まで番の存在を知らずに生きてきた。番と言う存在がこんなにも俺の心を占領するなんて知らない感情だった。それがこんなに心地良いなんて……! アリスティアが教えてくれたんだよ?』


 うう……ジェイデン様。

 セリフがカッコ良過ぎです! 嬉しくて胸が苦しいです。


「ふふ。そう緊張せずとも、ソファーに座ってこれからの事を決めようか」


 ジェイデン様に促されソファーに座ると、執事のルミエールさんが紅茶を淹れて持ってきてくれた。


「あの、アリスティア様、宜しいですか? 何故貴方様の様な貴族の女性が森に居たのですか?」


 執事のルミエールさんが不思議そうに聞いてきた。私はジェイデン様に話した様に思いの丈を伝えた。


「何と!!……あり得ない。魅了魔法を使ったとしか考えれないですね」

「やはりそう思うか? 俺も同じことを考えていた」


 ——え? 魅了魔法?


 このゲーム、そんな魔法あった?


 やはりゲームの世界と現実世界は違うの?

 自分の顔が真っ青になって行くのがわかる……。


「アリスティア、大丈夫だから! そんな顔しないでおくれ?」


 どうやら私は、不安で倒れそうになっていたらしい。 


「落ち着いて良く聞いてね? アリスティアを陥れたその女は、魅了魔法を使ってアリスティアの周りの人達を操っていたんだと思う」

「操って?」

「そうだ!」

「周りの態度が急変し過ぎだ。思い当たる節はない?」


 ———!!!


 言われてみれば、思い当たる節がありすぎる。

 だって……私は皆との関係は悪く無かったように思う。

 弟のロイだって私の事を慕ってくれていたはずなのに、急に汚物を見る様な目で私を見てくる様になって……。悲しかった。


 レイモンド皇子とだって、愛し合う事はなかったけれどお互いを敬い尊重しあえる親友のような関係だったと思う……。


「アリスティア? 思い当たる節があるんだね?」

「……はい」


 色々と思い出す度に疑問が出て胸が苦しい。


「ふぅむ。許せないね」


 直ぐにアリスティアを連れて竜人国に帰るつもりだったけど、可愛い我番に酷い仕打ちをした女にはお仕置きが必要だね。


 クスッ


 ジェイデン様がいたずらっ子みたいに笑う。


「アリスティア、俺はちょっとだけフィルメルン王国に行く予定が出来た」

「えっ!?何で……⁉︎」


 どうしてジェイデン様が私を追放した国に……⁉︎


「俺の大事なアリスティアに酷い事をした奴等に、少しだけ意地悪しようかなと思ってな」

「そんなっ!もう良いんです!終わった事だし」

「ダメだよ? 俺が少しでも遅れていれば、アリスティアは魔獣に殺されていたかも知れないんだ……絶対にその女許せぬ」


 さっきまで柔らかな表情だったジェイデン様の顔が凍りつく。


「ちょっとだけ行って来るからね。アリスティアは此処で待っててね?」



 私に笑いかけた後、ルミエールさんを呼ぶ。


「ルミエール! 至急フィルメルン王国に謁見の連絡を入れろ!」

「了解致しました。では準備して参ります。」

「ククッ急な申し入れに慌てるだろうな……」


 ジェイデン様が悪い顔して笑ってる。。いったい何をする気?


「急ではありますが明日フィルメルン王国に行く手筈が完了致しました」


 えっ?もう?

 早くない?

 執事のルミエールさんは仕事の出来る男だわ。


「明日が楽しみだな……」


 ジェイデン様が口角を上げ悪戯に笑う。なんだか少し悪魔の笑みに見えてきた。


 あのう……ジェイデン様?


 どんな意地悪を考えてるの。

 それは本当に意地悪なんですよね?


★★★



──フィルメルン王国




「急げ! 宴の会場は準備出来てるか?」

「至急準備しております!」


 それにしてもだ! なぜこんな急に竜人国の王が、我が国に来る事になったのだ?


 視察だというが、過去にそんな前例は一度もなかった。

 一体何の視察だ?

 本当に意味が分からない……。


 我が国とは桁違いに格上の竜人国。広い領土を持ち魔力に優れている竜王が統治している国。

 今まで何度も招待したが、竜人が我が国を訪れることなど数回しかなかったのに。


 ましてや王が来る事など初めての事だ。

 我が国に一体……何が起こってるのだ……!


 国王と王太子の俺は、竜人国の使いから竜王が我が国に来訪されると連絡があってから、今まで寝ずに竜王を迎え入れる準備している。


 竜王様に無礼があってはならない。

 竜王様を怒らせる事が有れば、我が国など直ぐに消えてしまうだろう……。


 それほどに竜人と我ら人とは桁違いに住んでいる世界が違うのだ。



 ★★★




「ふぅむ? お前がフィルメルンの王子か?」


 美し過ぎる竜王が俺に問う。


「はい。レイモンド・フィルメルンと申します。竜王様」


 広間に招待した竜人たちが続々と中に入ると、一番最後に圧倒的なオーラを放つ男が入ってきた。一目で彼が竜王だと分かる。

 その男が目もくれず一直線に俺のところに歩いてきて話しかけてきた。


 ———なぜ竜王は王太子の俺に話を? 先ずは王では?


 王もどう対応したらいいのか分からず、呆然と立ち尽くしている。


 普通なら玉座にすわりドンと構えていればいいのだが、竜王相手にそうはいかない。土下座しろと言われればするしかないくらい我らは格下なのだから。


 そんな竜王が、フィルメルンの王をほったらかしにして、俺に話しかけてくる。


 意味がわからない。


「ククッ、お主がレイモンドか……お主には以前、国外追放した婚約者が居たのではないか?」

「えっ? 竜王様が何故それを? その女は酷い悪女で……ここに居る私の婚約者リリアを虐げていたのです」


 何故? 竜王様が悪女アリスティアの事を聞いてくるのだ?

 全く意味が分からない。

 そんなどうでもいい情報をなぜ知りたいのだ?


「悪女の証拠は何処に? お前の横にいる、その女を虐めただけで国外追放の処置? 酷すぎると思うがのう?』


「あっいや……その?」


 確かにそれだけで国外追放は酷い……!

 でも……ん? 何で? 分からない……いやでもアリスティアは酷い女で……?

 本当に? 


「竜王様、聞いて下さい! それだけでは無いのです。私はその女にもっと酷い事もされたのです!」


 俺が竜王の問いに返答に戸惑っていると、急にリリアが竜王と俺の会話に割って入ってきた。

 唐突にアリスティアからされた虐めを話すが、竜王の態度がおかしい。可愛いリリアの存在を無視するかのように相手に全くしていない。

 なんなら、こんなにも可愛いリリアを毛嫌いしている様にも思える。


「ふぅむ? おい女、俺に魅了魔法は効かないよ?」

「へっ? なっ何を!?」


 ———魅了魔法? 


 竜王は何を言っているのだ?


 魅了魔法と言われ、リリアの顔がみるみる青くなっていく。


「コレはサービスだ。お主達にかけられた魔法を特別に解いてやろう!!」

「えっ!? ちょっ、ちょっと待ってよ!」


 竜王の言葉を聞いたリリアが慌て出した。どうしたと言うのだ?

 必死に「やめて」と叫び懇願している。


 だが竜王は、慌てるリリアの事など目に入ってないようで、手をパチンと弾くと、次の瞬間キラキラと眩しい光が放たれた……。


 その光は広間全体に降り注ぎ、俺たちは光のシャワーを浴びているようだった。


 光が落ち着くと。


「ん? あれ?」

「なんだ……これは!?」

「嘘だろ!?」


 広間にいる人達がざわつき出した。

 俺のモヤモヤした頭は鮮明になり……⁉︎


 ———どう言う事だ!?


 何で俺はアリスティアを追放してしまったのだ!?

 意味が分からない!

 これまでにアリスティアにした行為が鮮明に思い出され……くうっ。

 どれも正気の沙汰とは思えず、手の震えが止まらない……俺は何て……事を……⁉︎


 俺がやっと冷静になった時には。


 竜王の姿はなく、側近の方達から不思議なブレスレットを貰った。


 その側近から、俺たちは魅了魔法にかかっていたと教えられた。

 更にこのブレスレットをしていれば、今後魅了魔法にはかからないと、貴重なブレスレットを貰った。


 俺は魅了魔法にかかっていたのだ……。

 

 一体……いつから?


 誰が俺に魅了魔法をかけたって?


 もう分かる。リリアだ。


 今後俺は……どれだけの後悔をするのだろう。



★★★





 明日急に竜王様がお城に来るってレイモンド皇子から聞いた。


 お城はその準備でバタバタとごった返している。


 どうやら竜王様が人族の国に来るのは、建国以来初めてらしい。

 確かにゲームではそんな展開はなかった。

 だって、二章のストーリーにはフィルメルン王国など登場しないのだから。


 見目麗しい竜王様に会うには、こちらからわざわざ行かなないと、会えないと思っていたのに。


 向こうから来てくれるってんなら願ってもないよね。


 こんな早くに会えるなんて。嬉しすぎる!


 だって! だって! だって! レイモンド皇子達もカッコ良んだけど、竜王ジェイデン様は桁違いにカッコ良いんだよね。

 何回もスチルを見てウットリした事か!


「きゃー♡‼︎」


 どうしよう!? 何を着て会おうかな?

 一番綺麗な私を見て貰わないと!


「ウフフッ」


 邪魔なアリスティアはもう居ないし、この世界の主人公ヒロインは私だけ!!


 美しい竜王様も魅了魔法で私の虜にしてあげる。

 あー! 魅了魔法って最高。



 ★★★


 次の日どうにか迎え入れる準備がギリギリで間に合い、広間の会場に龍人族の人たちが続々と入場してくる。


 入ってくる人、入ってくる人、美しい人ばかり。


 竜人って美形ばかりなの?皆カッコ良い!

 あっ!竜王様が登場した。

 ヤバイかっこいい。

 オーラが格段に違うわ。

 はぁ……。見惚れちゃう。



 ポーッと見惚れたら、竜王様が一目散にコッチに歩いて来てない?

 先に国王様とお話とかしないの?


 とうとうレイモンド王子の前に来てに話かけている。

 なんで王子?


 それにしても近くで見ると、なんて綺麗な顔。


 会話に耳を研ぎ澄ませていると、アリスティアのお話をしてない?


 はぁ? 何でアリスティアの事なんて話してるの?

 あの子はもうこの世にはいないのよ。


 アリスティアがどれだけ悪女で酷い女だと吹き込んどかないと。

 そして私のことを俺が守ってあげなくちゃいけない女だとアピールしなくちゃ。


 私は必死にアリスティアの悪口をいつものように嘘をついて適当に言っていたら……。

 何だかいつもと様子が違う。


 あれ……竜王様の目が怖い。

 何でそんな顔で私を見てるの。

 魅了魔法効いて無いの?


 私はさらに強く魅了魔法を放つと、竜王様が口角を上げニヤリと笑うと、私を馬鹿するような目で見てきた。


『ふうむ? 俺に魅了魔法は効かないよ?』

「へっ!?」


 なっ! なっ、何で魅了魔法使ったのが分かったの?!

 今まで誰にも気づかれなかったのに。


 魅了が効かないなんて、どうしたら……。

 それじゃあ竜王様を簡単に攻略できないじゃん!


 必死に対策を考えていたら……。


 ———あれ⁉︎


 皇子達の様子がなにか変だ。どーしたって言うの?


 もしかして……王子たちの魅了魔法の効果が消えた?


 竜王様が放ったあの眩しい光で、そんなに早く効果が出るの?

 効果が切れそうになったら、また新たに魅了魔法をかければいいと思っていたのに。


 ———そんなにすぐ効果が現れるとか! 聞いてない!


 急いで魔法をかけなおさないと。

 あれ? 魔法が効かない? 何で?


「リリア、お前はとんでもない事をしてくれたな!」


 ヤバイ、レイモンド王子が問いつめてくる。早く魅了魔法を!


「リリアさん! 貴方と言う人は何て事をしてくれたんだ! 僕は姉さんを……!」


 皆が私を急に責め立てる。


 こんな展開知らないよ。

 私は主人公なんだよ⁉︎

 何でチヤホヤしてくれないの?

 私は何も悪くないんだから!!



★★★




『ただいまアリスティア。ちょっとした意地悪をして来たから竜人国に帰ろうか?』

「はい……」


 ジェイデン様はすぐに帰ってきた。

 何を母国にしたのか気になるけど怖すぎてきけない。

 ちょっとした……意地悪なんだよね?



『早く国に帰りたいからな! アリスティア俺の背中に乗ってくれるか?』


 そう言うとジェイデン様は綺麗な竜の姿に変身した。


『空間魔法で風の抵抗など感じないから、安心して掴まっていてね?』


 私を乗せたジェイデン様は、あっとゆう間に竜人国に着いた。凄いスピードが出ていたはずなのに、風の抵抗も感じず安心して掴まっていれた。


 竜人国はもう! 

 一言で言い表すなら凄いだ!!

 王城だけでもフィルメルン王国の5倍はある大きさ! 城下町も賑わっていて楽しそうだし、落ち着いたら行って見たいな。


「竜人国は素敵な国ですね」

『フフ。気に入って貰えそうで安心した』


 私がそう伝えると、なんとも言えない甘い顔でジェイデン様が微笑む。

 その空気に耐えられず、私はつい下を向いてしまう。


『アリスティア。これからこの国を……そして俺を知って行ってね。無理して急いだりしないでね、俺はいつまでも待てるから。俺の心はアリスティアの物だから』


 ひゃあ……! そんな甘い言葉を言われて、ドキドキしない人がいたら教えて欲しい。胸がくるしくて顔が火照る。


 私はきっとジェイデン様の事好きになる。


 番としての気持ちはまだ全く分からないけど。こんなに私の事を大切にしてくれる男性に出会った事がない。それだけはわかる。


 前世の記憶を思い出したのに森に捨てられてるし、知ってる事は終わっていて、人生本当詰んだと思った……。


 ジェイデン様に会えなかったら、私はどうなっていたのだか。今は感謝の気持ちが大きいけれど、この感情も……きっと変化して行くのだと思える。


「ジェイデン様これから宜しくお願いします……」



 end...


 これでアリスティアのお話は終わりになります。

 少しでも面白かった、続きが読みたいと思って頂けたならブクマやレビューを頂けると執筆の励みになります。


 この後。

 ジェイデンとアリスティアのその後。

 フィルメルン王国のその後。

 リリアのその後。


 などのオマケの話を3話書く予定です。

 数日後に追加出来るかと。

 

おまけ書きました♪♪

楽しんで頂けると嬉しいです。


★★★



おまけ

フィルメルン王国の人


ロイside


何が起こったんだ……震えが止まらない。

僕は大好きな姉さんに何て事を、目を閉じると僕の口が姉さんを罵る映像が浮かぶ。


コレは……現実に起こった出来事なのか?


小さな時から僕の事を可愛いがってくれ、眠れない夜は一緒に寝てくれた。


僕のわがままを嫌な顔せず

「ロイは特別だからね?」

これが姉さんの口癖だった。それが聞きたくて僕はわがままを言う。


僕は姉さんと結婚したかった。

でも姉弟では結婚出来ないから、姉さんの側で支えて行こうとこの気持ちは諦めた。


それなのにあの女に全てを壊された。

初めの印象は、へんな色目を使ってくる気持ち悪い女だと思っていたのに。


思い出す記憶の僕の姿は、あの女に媚びている。

気持ち悪くて吐き気が止まらない。


さらに僕を絶望に追い込む話が入ってくる。

姉さんは国外追放ではなく、魔の森にドレス姿のまま捨てられたと‼︎


「何でだよ!姉さんっ……ぐふっ。嫌だ……! 結婚出来なくても良い! 生きてさえ居てくれたなら……それだけで良かったのに! 大好きな姉さんは……魔の森で消息を絶った」


武器も何も持たない女性が、魔の森に捨てられて生きている筈がない。

でも……神様お願いです! 僕の命を差し上げます。だから姉さんを殺さないで。


大切な姉さんを、こんな目に合わせたリリアを僕は絶対に許さない。

死んだ方がマシなくらい絶望を与えてあげる。



レイモンド皇子side


私とアリスティアは小さな時に婚約者となった。

始めはアリスティアに何も感じ無かったが、純粋無垢なアリスティアに冷めきり凍っていた私の心は癒され溶けていく。


アリスティアに溶かされる心の気持ち良い感情。

これが愛おしいと気づいたのはいつだったか。

アリスティアは、私に対して恋愛の感情がないないのが分かる。

でも……いつか私だけを見て欲しい。

愛しい感情を共有したい。


ゆっくりと時間をかけて……愛しあおうと思っていたのに!


なのに! 何だ!


竜王が来てから、私の頭の中を知らない映像が支配する。


可愛いアリスティアを忌々し気に罵る私。

嫌だ。アリスティア……そんな目で私を見ないでくれ。

リリアと言う女に媚びる自分が気持ち悪い。

誰かこの映像を消してくれ!!


何でこんな嫌がらせをするんだ。


これは魅了魔法だと竜人達が教えてくれた。

 

魅了魔法に、かからないブレスレットを竜人が渡してくれた。

コレを付けていたら、私は魅了などにかからなかった。くやしい。

私はこんな事で愛しい婚約者を失ってしまった。胸が苦しい。


リリアがアリスティアを魔の森に捨てさせた。と情報が入ってきた。

どこまで屑な女なんだ。


私の唯一の癒しの光を奪ったリリア。


許さない。楽に死なせてあげないからね。



おまけ

リリアの断罪



 何で?

 何がおこってるの?

 私は主人公なのよ?

 何でこんな汚い牢屋に入れられてるの?


 これも全て、竜王ジェイデン達が城に来てからおかしくなった。


 急に魅了魔法が効かなくなったのだ。

 更に私が魅了を使っていた事までバレた。


 何で?


 皆が急に私を責めたてる。


 主人公チートじゃなかったの?


 ———!!


 カツンカツン……。


 誰かが牢屋に近づく音がする。


 嫌だ!! 助けて!

 また、あれが始まるの?


 今日は誰?


「やぁ? リリア。まだまだ元気そうだね?」

「本当にな、昨日あんなに痛めつけたのにね?」


 何言ってるの?

 どんなに私が死にそうになっても、最後に魔法で回復していくのはアンタ達じゃない!


 私が何をしたって言うのよ!


 私は主人公なのよ。

 この世界のヒロインなのよ!


「今日は特別に2人で可愛がってあげるからね?楽しみだね?」

「何をしようか? そうだね、ゴブリン達を牢屋に入れる? きっと君を可愛がってくれるよ?」

「クスクス。良いかもね? お前は男好きだから。ゴブリンがお仕置きにならないかもね?」


 ゴブリン?! 何言ってるの? 嫌だ! こいつら狂ってる。私は悪くない!


「あはは、ジョーダンだよ。君の行先が決まったよ。鉱山ドレイとして囚人たちと一緒に労働してもらう」

「劣悪な環境だからね。殺してくれって思うんじゃないかな?」


何言ってるの!?

そんな場所に行きたくない!!


「残念だけどお仕置は今日で最後だね」


「イャァァァァァァ‼︎」


 神様! 早くこのゲームリセットしてよ!!


★★★

おまけ

アリスティアとジェイデン


「おはようティア。良く眠れた?」


「おはようございます。ジェイ様」


 私達はお互いの愛称で呼ぶ様になった。中々慣れなかったけど今では普通に呼べる。


「さぁ。おいでティア?」


 そう言って私をジェイデン様の横に座らせると。


「はい。アーン……」


 モグ。


 私にご飯を食べさせたがるのだ。自分で食べれるし、恥ずかしいのだけどジェイデン様が嬉しそうなので断れない……。


「さぁ! 今日は大切な日の始まりだよ? 楽しみだねティア。」


 そう言って私の額にキスをする。今だに慣れない。

 ドキドキして胸が苦しい。

 キス以上は何もしてこない紳士なジェイデン様。

 これ以上先とか……私大丈夫なのかな。


「アリスティア様、用意に向かいましょう!」


 私は侍女さん達にこれでもかと身体中を磨かれ。豪華な真っ白なドレスを纏い。キラキラのティアラを頭につける。


 そんな私の姿を見たジェイデン様が甘い言葉を囁く。


「綺麗だよ。ティア。今すぐに食べてしまいたいくらい」


 そう言った次の瞬間。ジェイ様が私の耳たぶをパクっとたべた。


「ひゃっ!!」


「ククッ、冗談だよ。」


 動揺した私の姿を見たジェイ様が、いたずらっ子の様な顔笑う。

 ……いじめっ子メェ。


 今日は私達の結婚式。ドレスは何色が良い? と聞かれ日本の結婚式を思い出し、白と言ったら。

 二人の衣装は白に決まった。

 嬉しいけど緊張の方が何倍もだ!


「さぁ? 皆が可愛いティアを見たがっているよ? 俺の愛しい番ティアを来客達に見せつけてあげないと」


 サラッと嬉しいセリフを言うジェイデン様。

 私はもうドキドキしっぱなしで、失神寸前です。


 沢山の来客のなか私達の結婚式は大盛況で終わった。皆が私の事も認め祝ってくれたのが嬉しかった。


 この結婚式の映像が、母国フィルメン王国でも流され、私の両親や弟のロイ、さらには王太子達にまで、私が実は生きていて龍王様の正妃になった事実を知った。


 この所為で一時期、「アリスティアが生きていたー!?」っと母国が大騒ぎになったらしい……と。


 後に弟のロイたちと、涙の再会を果たした時に、教えてくれた。


 そして私は今、人生最難関の窮地に立たされている……。


「ティア? どうしたの? さぁおいで」


 そう言って、バスローブ姿のセクシーなジェイ様が、私をベッドに誘う。


 私はこの先を……。


 この色気がダダ漏れの人と? 今から出来るの?!


 ムリムリムリムリムリムリィ!


 想像するだけで気絶しそうです!


 この窮地! 乗り越えれるの?


「ティア? どーしたの?」


 一人ワタワタしていたら、ジェイ様が後ろから抱きしめて来た。


「んっ……あ」


 ジェイ様の指先が、胸の先端に軽く触れた!

 感じた事のない刺激に、思わず変な声がでる。恥ずかしい。


「やっと可愛いティアを、たっぷり食べれるのだな?」


 食べっ!?


「ひゃわっ……」


「大丈夫。痛い事はしないからね? ずっとずっと気持ち良くして、俺から離れられなくしてあげる」


 ずっと気持ち良く!?  初めては痛いって、噂で聞いたけど違うの……?


 なんて考えてたらジェイ様の綺麗な顔が近付き軽くキスをしたと思ったら。


 ジェイ様の舌が口の中に入ってきた。


「んっふっ」


 ジェイ様の舌が口の中で動く。


 こんなエッチなキス知らない!

 キスってこんなに気持ち良かったの? 私はもうキスだけで蕩けてしまった。


 ジェイ様の顔が離れると私を抱き上げベッドに歩いて行く。


「ふふっ、そんな緊張しなくて大丈夫だよ? キスよりも気持ち良い事しようね?」


 コレ以上とか! 私どーなるの!?



★★★


これにて二人のお話は終了です(*^^*)


おまけも面白かったよーっと、少しでも思って頂けたなら★レビューで応援して頂けると、今後の執筆の励みになるので有り難いです。

短編なのでトントンと話を進めたのですが、じっくり長編も書いてみたいなぁなどと悩んでおります。

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― 新着の感想 ―
うわっ魅了持ち転生者とかいう世界の癌…。 テンポ良く読みやすく綺麗に解決して良かったです。
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