第5話 恵2
「ふぅ」
トイレから顔を火照らせて出て、恵が向かったであろうテニス部を遠くから眺める。
お、いたいた、丁度こっちも体験入部終わる所だな。
一応いつもの謎のお店に行く用の変装をする。
当然制服から着替えて、サングラスとマスクを着用する。
恵を尾行して家に付いていく。
恵みに追撃イベントがあるからだ。
恵のイベントは既に書き換わって居て、もう起きないかも知れないが、どうなるか分からない。
変な強制力があったのでイベントが発生する気がする。
因みにこのイベントは、体を汚された恵に実の父親が、経験済みならもう良いよなとか言って襲いかかる。
その後は強制的に売春させられて堕ちるに堕ちる。
勿論恵にも母親はいるが、仕事が忙しく夜勤も多いのでバレずに事が進む。
正直書いてる分には大好物だったが、友人となった恵にあんまり酷い目に遭って欲しくない、結果的に助けられたし。
途中で恵がこちらを振り返り目があったが、首を傾げてからそのまま前を向き直り進んでいった。
変装しておいてよかった。
そんなこんなで恵が自宅に着いたようで家に入っていった。
汚されて無いのにどんな理由で発生するか分からないので外から様子伺う為、庭に不法侵入する。
定期的に中を覗いたり、暇つぶしに草を毟ったりして過ごす。
しばらくしてそれは、アリの巣に石を埋め込んでいる時に起きた。
恵の父らしき男と恵が言い争っている声が聞こえてきた。
中をそっと覗くと二人が言い争っている場面も見えた。
借金がどうのこうのとか、体を売れとか、処女じゃ無いなら良いんだなとか言う声が聞こえた。
そんな理由かよ、恵も不憫な奴だ、まあ俺の書いたシナリオが悪いんだが。
即座に場所を把握しておいた公衆電話に走っていき、女の子の悲鳴が聞こえると通報した。
その後は警察が来るまで中の様子を伺う。
直ぐに襲いかかる様なら最終手段として窓を割って入り止めるつもりだ。
武器替わりにポケット一杯にパチンコ玉を持ってきた。
持ち出しは犯罪だがこれは自分で購入した物だ。
妹にはビー玉と言って昔よく一緒に遊んだ。
小さい石より重く遠隔攻撃力があって、かつ重すぎず、大きさも安定していて数も集めやすいと色々勝手が良いのだ。
父親が恵を押し倒して制服を強引に破く。
ヤバいと思ったのでパチンコ玉を思いっきり二階の壁にぶつける。
父親の動きが一瞬止まり、耳を澄ませるが特に問題無いと判断したのか直ぐに再開しようとする。
もう一度同じ様にぶつけるが鳥か何かと思ってるのだろうか止まる様子が無い。
おそらくトイレと思われる小さな窓の中に何個か投げ込む。
家の中から音がして、尚且つパチンコ玉は転がるから継続して音が出る。
流石に家の中から音が聞こえてた事に驚いたのだろう。
また動きが止まったのですかさずもう一つ投げ込む。
恵の父親が続行しようか音のした方を確認するか悩んで居る様で暫し動きが止まる。
サイレンが聞こえて来たがまだ少し遠い。
どんどんパチンコ玉を投げ込む。
何か楽しくなって来た。
悪戯をする子供ってこんな気持ちなのか。
固まって居る所にサイレンが近付いて居る事に気付いたのか父親が動揺し拘束が緩まった。
恵が拘束を振りほどいて見えない所に逃げていった。
父親が慌てて追いかけるが、もうパトカーが家の前に止まり警官が降りてきた所だ。
警官がチャイムを鳴らすと同時に恵が玄関から飛び出す。
服が破れているのを見て、警察も悪戯電話じゃ無かったのを確信し恵に事情聴取をする。
しっかりと恵も話をしているようなので、その場からこっそりと抜け出した。
良かった、良かった、流石に色々説明出来ない事多いからこのまま退散退散と。
そのまま何事も無く家に帰った。
少し門限を過ぎて妹に怒られた。
「お姉ちゃん帰って来るの遅いよ!麻衣心配したんだから!」
「ごめんよマイちゃん、よーしよーしよーし」
頭を撫でて体を撫で回す。
喜んでる、この妹俺に何されても喜ぶのでお姉ちゃんは心配です。
今日のおかずは恵が乱暴されている妄想で致した。
妹が隣で寝てるのでバレない様にするのが余計に興奮する。
―――
次の日の休み時間に恵が昨日の話をしてくれた。
「昨日さー、父親に借金があるから援交して来いって言われてさ、最低だよねー」
「へー、それでどうしたの?」
腕で机に枕を作り顎をのせて恵の話を聞いている。
「私が初めてだししたくないって言ったら、初めてじゃないなら良いんだなとか言って襲われそうになってね」
「大変じゃない、大丈夫だったの?」
「うん、ぎりぎりの所で警察が来てくれて助かったの、その後は母も仕事から戻っていま離婚調停中」
「何事も無くて良かったよ」
「それでね、警察が来てくれた理由なんだけど何か腑に落ち無くてね」
「ん、言い争う声が聞こえて近所の人が通報してくれたんじゃないの?」
「若い女性の声で公衆電話から通報あったんだって、近所の人なら家の電話使うし、そもそもスマホ使うでしょ?」
「面倒事が嫌でそうしたんじゃない?」
「まあ普通に考えてそうなんだけどね、警察には言わなかったけど、どう考えても通報した人、庭に居たとしか思えないのよね、多分中の様子を見て助けてくれた節があるし」
「え、どうして?」
少し驚き、顔を上げて恵の目を見る。
「単純にウチって防音だしそこまで声外に漏れないのよ、それこそ庭に居ないと中の声がほとんど聞こえないくらい、それに家のトイレと庭にこんな物落ちてたのよ、きっと危ない瞬間に態と音を立ててくれてたんだと思う、それと何故か庭の芝が抜かれて一部剥げてたし」
パチンコ玉をジャラっと取り出す。
まあそれはわかっちゃうよね。
てかあれ芝生だったんだ、暇で抜いちゃってごめんね。
平然を装い質問する。
「子供の悪戯じゃない?」
「タイミング的にありえないと思う時間も時間だったし」
司令官スタイルになり、鼻の前で指を組む。
「うーん、何だろうね」
「やっぱり変態かストーカーかな?」
「へ、変態、ストーカー・・・」
「人様の庭に無断で入る人何てそれくらいしかないでしょ」
「ま、まあ助けてもらったんだし見逃してあげたら?」
「いや、それはそれ、これはこれでしょう?」
「きっと悪意なんて無かったんじゃないかな?ストーカーやら変態なら恵に恩着せてくるんじゃないかな?」
「犯人もきっと名乗り出ても恩なんて着せられないとわかってるんじゃない?普通に犯罪だし」
「は、犯人って・・・、何か被害あったわけじゃないんだし、今回は良いんじゃない?」
恵の目が細くなった。
「・・・理沙何か焦ってない?それに何で被害無かったって知ってるの?やけに犯人の方持つね?」
「っ!?そ、そりゃ被害があったらとっくに通報してるでしょう?犯人の肩持ってるわけではなく、客観的に見て被害や思い当たることが無いなら被害妄想って事もあるし警察もそんなんじゃ動いてくれないと思うよ?」
身振り手振りを交えて必死に説得する。
「ふーん?まあそれもそうね」
「ほっ」
「まあまだ問題が残ってるんだけどね」
十中八九、父親の借金の事だろう、売春させようとしたのもそれが原因だし、後に風俗で働かされる事になる。
「問題?」
「あいつ結構な額の借金してくれててね」
「結構な額ってどれくらいあるの?」
「4桁万円は行かないくらいとだけ答えとくわ」
それなら今の俺の謎の貯金で何とかなるな。
「何か力になれると思うからどうしようも無くなったら言ってね?」
こう言っても恵は相談して来そうにはないから今度独自で動くつもりだ。
「気が向いたらね」
父親名義の借金で離婚すれば法律的には払う義務が無くなるだろうが、きっと原作の強制力で恵達にも借金取りが迫ってくるだろう。
まあ、どちらにせよまだ先の話だ、準備だけはしておくけど。




