第32話 恵イベントアフター
恵の家に戻り証文の写しと家の鍵を元あった所に戻す。
リビングに行くとまだ恵は出た時のままのソファで寝ていた。
「い、やだよ・・・嫌ぁ・」
風俗で働く夢でも見ているのだろうか、涙を流しながら寝言を言っている。
頭が辛そうだったので、隣に座り恵の頭を優しく膝に乗せて撫でてあげる。
安心したような顔になったのでそのまま撫で続けた。
ーーーー
「理沙、理沙」
下の方から恵の声がする。
目を開けると、膝枕をされた恵が眠そうな目でこちらを見ていた。
どうやらそのまま寝てしまったらしい。
外は少し明るい程度だけどもう夜は明けたらしい。
「おはよ、恵」
「あれ、もう朝?理沙結局起こさなかったの?」
窓から見える空が明るくなり始めている様子を見て恵が言う。
「恵があんまり気持ち良さそうに寝てるから膝枕で満足する事にした」
恵が下をみて服の乱れが無いか確認するともう一度言う。
「もう、馬鹿ね、起こせば良かったのに、もうすぐお母さん帰ってくるから出来ないよ?」
「もう大丈夫だから安心して」
優しく頭を撫でる。
「意味分かんない」
恵は少し頬を緩めて微笑を浮かべている。
それから朝ご飯を食べて恵の家を出ようとしたら、玄関で恵のお母さんに出くわした。
信じられないくらいの巨乳美人だった。
「あら、貴女は恵のお友達?」
「恵さんの恋人でお母さんの恋人候補の理沙です」
ペコっと頭を下げると恵に頭をぺしっと軽く叩かれる。
「もう、何言ってるのよ、ただの友達だよ」
「あらあら仲が良いわねぇ、恵を宜しくね?」
「勿論です、末永く宜しくお願いします、ではこれで失礼します」
少し歩いて、適当な公園で時間を少し潰してから恵の自宅に電話する。
少し前までは女の子がだすようなハスキーボイスしか無理だったが、ここ3週間で動画などを見て練習し男の声を出せるようになった。
ある程度ガタ男に極力似せる。
多少声が違うくらいなら電話越しなら何とか騙せるだろう。
プルルル、プルルル、プルルル、ガチャ
「はい、先暴露です」
恵がでた。
「おう、嬢ちゃんか、お母さんいるか?」
「は、はい、います、でもまだ期限は来週ではないんですか?」
どうやら騙せた様だ。
「あぁ、もうそれは良くなったよ、とにかくお母さんに代わってくれや」
「は、はい」
保留になり少しすると、先程話したばかりの声が聞こえた。
「お電話代わりました」
「おう、借金だがな、お前の元旦那さんを見つけて絞り取ってやったから無くなったぞ」
「へ?そんなはずは・・・」
「とにかく今日の午前中にはお前の家のポストに証文の原本を入れとくから、これで返済完了だよ、だからもう嬢ちゃんが働かなくても良いぞ」
「働く?恵が?どういうことですか?」
あれ、何か間違ったか?
「まあこれでもううちに関わんじゃねーぞ、じゃあな」
「え、ちょっとまってk」
下手な事言う前に強制的に話をきり電話を切った。
後は少し時間を置いて恵の家のポストに原本を入れれば完璧なはず。
後はポストに入れる姿を見られるわけにいかないから、いつもの変装 + 帽子で変装して恵の家に向かいポストに原本を投函するだけだ。
******** side恵
「お、お母さんなんの電話だったの?」
恐る恐る母に聞いてみる。
「借金はもう完済したって」
あっけに取られたような顔をした母がそういう。
「へっ?どういうこと?」
言われてる意味がわかんなかった。
「なんかあのゴミ男を見つけて絞り取ったらしいけど、あいつにそんなお金あるわけ無いのに」
「うん、私をそう思う、でも実際完済したならそういう事でいいのかな・・・?」
本当に借金が完済したならこれほど嬉しい事は無いけど、突然の事で信じて良いものかわからない。
「うーん、今日の午前中にはポストに証文の原本を投函するって言ってたけど、それをみない事にはなんとも言えないわね」
これで信じてぬか喜びさせられたらもう立ち直れない気がする。
「それより恵、さっきの借金取りの人が言っていたけど働くってどういう事?」
あ、あの借金取り!母には内緒って言ったのに言われた!
でも少し声とか雰囲気が違ったからいつもとは別の人だったのかな?
私が夏休みの間に、借金の返済の為に働けって言われた時、母に余計な心配をかけたく無くて秘密にしてもらったのに!
「あ、う、違うの」
「何が違うの恵?まさかあんた私に黙って何か良からぬ事をしようとしていたわね?」
「あ、あの、夏休みの間、借金返済の為に風俗で働けって言われてて、でもお母さんに心配かけたく無くて・・・」
「この馬鹿娘!あんたはそんな事考えなくていいの!私が何とかするからそういうのはちゃんと言いなさい!」
それから1時間は母からお説教をされた。
説教が終わりとぼとぼとポストを確認してみたが、まだ入っていないようだったので、家に入る。
何かの間違いだったりしたら嫌だな・・・。
その時ポストに何かを入れる音が聞こえた。
また玄関を開けると誰も居ない、道に出てみると遠くに走っていく小さな人影が見える。
あれは・・・、帽子被ってて良くわからないけど、あの小ささと背格好は、あの時謎のお店屋さんに居た人?
取り合えずポストの中を見ると借金の証文の原本が入っていた。
本物だ・・・。
直ぐに写しを母に持っていき渡す。
「お母さん!こ、これ!」
「これは、本物のようね、どうやら本当の話だったようね・・・」
母が原本と写しを見比べてそう呟く。
ダムが決壊したように我慢していた涙が溢れてくる。
「ぅ、ぐすっ、、、、ぐすっ、、、うぅ、ぐすっ」
感情がぐちゃぐちゃになり、涙がもう止まらない。
母がそれを見て優しく私を抱きしめてくれた。
******** side end
起きるのが早かったお陰でまだ午前中だった。
俺は一仕事終えてスッキリしルンルン気分で謎のお店に向かう。
「ふふんふん♪ふふんふん♪ふんふふん♪」
ふんふん♪と謎のお店に入り店内を回ると、ゴツ男が謎の機械を打っていた。
「おう嬢ちゃん奇遇だな、ははは!本当に軍資金にしてるのか」
がははとゴツ男が笑った。
「勿論です!今日は勝てる気がします!」
「おう、頑張れよ!」
ーー
夕方になった。
「てーい♪あちゃ!あちゃ!ほわっちゃ!てーい♪あちゃ!あちゃ!ほわっちゃ!」
俺は気分良く謎の機械のキャラのセリフを真似しがら、ボタンを押していた。
「うほ、嬢ちゃん勝ちすぎだろ!なんだその枚数!」
「あ、お疲れ様です!丁度良かったです、6確出てますが良かったらこの台打ちますか?もう門限でそろそろ帰らないといけないので」
「おぉ!マジか!ありがてぇ!」
「はいどうぞー!」
奇妙な繋がりの知り合いが出来た日だった。
ーー
休日が空けて月曜日の朝、恵はここ数週間の悪かった顔色が嘘のように晴れた顔をしていた。
恵の表情だからぱっと見でわかる、俺も嬉しくなった。
「恵おはよー!」
元気よく恵に挨拶をする。
「うん、おはよ」
最近はぼそぼそっと、呟くだけだったが、恵は以前の様に挨拶をしてくれた。
「ねえ理沙」
席に着くと早速恵が話しかけてくる。
この所俺から話しかけてばかりだったから嬉しい。
「ん、なーに?」
俺の目をじっと見つめてくるので、見つめ返して見つめ合い胸が高鳴る。
「私のパンツ知らない?理沙が来た日から亡くなったんだけど」
「し、知らない」
直ぐに目を逸らして右下を見る。
「なんで目をそらすの?こっちをみて理沙?」
追撃を与えてくる恵。
「あぁー!そういえば来週の金曜日恵の家にまた泊まりに行きたい!」
強引に話題を変える。
流石にもう俺になら、とかは考えてないだろう。
「あぁ・・・来週はちょっと」
もう必要ないから断りたいのかな?
「じゃあ仕方がないからあk」
「来週はお母さん夜勤じゃないのよ、再来週の金曜日ならお母さん夜勤だけど家に泊まりに来る?」
ん?恵は何を言っているのかがわからない。
「え?あ、う???」
「なにを混乱してるの?お母さんが居ない日に私の家に泊まりたいんだよね?」
もしかしてまだ借金取り続いてる?いやそんなはずは無いあの借金取りは仁義を通すって言っていた。
堅気じゃない人間を信用するってのも可笑しな話だが、そこは大丈夫なはずだ。
それに恵の顔色も表情も先週と比べて明らかに明るくなっている。
借金の問題が片付いているのは間違いないはずだ。
「え、っと、まだ、お母さん居ない日に私を呼んでもいいの?」
「先週も泊まったんだし、今更じゃない?で、いつにする?」
「いや、あ、あの約束は、その」
「ふーん、先週までと違って拒否するんだ?」
恵の顔が近付いて来る。
「ち、近い・・・」
「何よ、嫌なの?」
「い、嫌じゃないです」
「ね、私の目見て?」
恵が至近距離で見詰めながら言ってくる。
「あぅ」
「私ね多分小さい女の子にストーカーされてるんだ」
恵が声をだすたび、俺の口に恵の吐息がかかりクラクラする。
「あぅあぅ、す、すとーかー?」
何とか恵の目を見ながら聞き返す。
「そう、よく思い出して見ると、あの私が元父親から襲われそうになった時、家まで付けて来てたの、それで私の家の庭に不法侵入して何かしようとして結果的に助ける事になったんじゃないかと」
そう言えば尾行の際こちらを振り返ったけどそこまで繋げちゃうの?
「へ、へぇ、以前話していたやつだね、で、でも流石にそれだけでそこまで結び付けるのは妄想が過ぎるんじゃないかな?」
「後はね、これも多分だけど、私の家の借金を勝手に肩代わりしたんだと思う」
ドクンっと心臓が跳ねる。
「え、ど、どうしてそう思うの?」
「私の家のポストに借金の原本を投函したのよ、走って逃げる後ろ姿しか見てないけど、ポストに投函後すぐに辺りを見回したけど、あの付近にその子しかいなかったもの」
「その子が借金取りの代わりにポストに投函しただけじゃないの?流石に勝手に肩代わりは無理があると思うよ?」
「うん、そうだね、でも色々考えるとそれが一番しっくりくるの」
「どうゆう事?」
「ふふ、それは秘密、話は変わるけど世の中には異性の声を出せる人が居るみたいね?恵って確か色んな声出せるよね?男性の声も出せるの?」
話あんまり変わってない・・・。
「さ、流石に私でも男性の声は出せないよ・・・?」
まだ男の声出せることは知らないはずだ。
「そう?、まいっか、それより私お母さんに風俗で働くことになる事秘密にしてたのに何で言っちゃうの?」
「ごめん、それは知らなか、、、じゃなくて!!め、恵風俗で働くの?そんなの知らなかったよ!」
カマをかけて来てる!?
「ふーん、理沙目を逸らさないで?大丈夫だよ借金が無くなったから、もうその必要も無くなったのよ」
思わず目を逸らしてしまい恵に指摘される。
「よ、よかった、恵が望まぬ仕事しなくて何よりだよ・・・」
流石に怪しまれてるだけで確信は無いよな?そういや恵には以前俺が返済出来るお金持ってる事言っちゃってたから、それも相まって俺への疑いが増してるのか。
「その子にはちゃんとお金返済しないとね、ちゃんとバイトして返すね?利子として私の体差し出した方が良いかな?私のストーカーなら喜んでくれるよね?」
「私に言われてもわかんないよ・・・、その子の事知らないから、でもそんな事望んで無いんじゃないかな?」
「ふん、今度その子見つけたら絶対問い詰めてやるんだから」
暫く恵の家の付近にあるお店は控えよう・・・。




