第22話 聡美イベント3
期末試験が終わり早速着替えてから妹の中学で澪が出てくるのを待ち、尾行を開始した。
因みに今日は金曜日で明日は休みなので家には友達の家に泊まると言ってある。
妹には何故か怪しまれてやたらと問い詰められた。
最近妹が感が鋭くなってお姉ちゃんは辛いです。
因みに妹の学校から尾行するのはもう既に喧嘩済みだった場合、そのまま家に帰らずに家出されたら困るからだ。
まあそんな心配も要らなかったようで普通に家に帰宅したようだけど。
しばらく少し離れた所でジッと様子を伺ってたら学校から帰宅してきた聡美と目があった。
聡美だった。
そういえば今日はテストで部活も無いから聡美もこの時間に帰ってくるんだった。
でもサングラスとウィッグとマスクしてる俺に死角はない。
しかし何故かこちらに近づいてきて、声を掛けてきた。
「あの、ちょっと顔を見せてもらっていいですか?なんだか知り合いに似ている気がするんですが」
スマホをみて顔を俯かせながら、とっさに声を聡美が聞いた事無い声に切り替えて答える。
「えっと、私はちょっと貴女の事知らないと思いますですわ」
「あ、ごめんなさい、確かにそうみたいですね」
聡美はそういいながらも頭を下げつつこちらを覗き込んでくるが確証を得られない様でそのまま首を傾げながら、何度もこちらを振り返りつつ家の方に歩いていった。
「ふぅー、変装は完璧なはずなのになぜいつもバレるのか、恐らく隠し切れない美少女オーラがそうさせてるのだろうが・・・」
身長と体形と所作のせいなのだが理沙は気づいていなかった。
程なくして聡美の家から言い争うような声が聞こえて、澪が出てきたので尾行を再開する。
それからショッピングモール、カラオケ、ネカフェと尾行を続ける。
ショッピングモールではアイスを買うために並んでた時に撒かれそうになり。
カラオケでは歌に熱中し過ぎて気付いた時には居なくなってて焦ったけどネカフェに入るのを見つけて事なきを得る。
なかなか尾行を撒くのが得意な様なのでネカフェでは漫画一冊読み終わる事に確認する事にして監視を強める。
日付が代わる頃ドリンクバーでアイスを盛り盛りしてる時に、澪が受付で会計をしてるのを見つけて、慌ててその場でアイスを食べきり顔中をベトベトにさせながらこちらも会計を済ませ尾行を続ける。
澪は尾行を撒くのが旨すぎる、まさか気付かれているのだろうか?と思っていると最終目的地の路地に付く。
そこでは同じ様な家出した少年少女が沢山いて騒いでいた。
全く警察は何をしてるんだ、こんな無法地帯を容認して。
俺はなるべく絡まれない様にしながら澪様子を伺った。
******** side澪
私は今日母と小遣いの事で喧嘩して家出した。
特に行く当てもなかったので適当にショッピングモール、カラオケ、ネカフェで時間を潰してから家出した人達が集まると噂の路地に来てみた。
そこには非日常感が広がり酒を飲んだりよくわからない薬を飲んだりして騒いでいる同年代くらいの人達が一杯いて少し怖くなって引き返そうとした。
「ねえ、そこの子ここに来るのは初めて?」
その時に少し年上の女の子数名に声を掛けられた。
「は、はい、ちょっとどんな所か興味があって」
「初々しいね、ウチらとちょっとお話しようよ」
何だか異様な雰囲気の人達で少し気圧されたけど、少しくらいならと思い話してみる事にした。
明らかにこの人たちの言動やテンションや行動に表情が異常なのが見て取れる。
一刻も早くこの場を離れないととは思ったが中々タイミングが掴めず話を合わせていた。
話を聞いているとこの人達はずっと家には帰っておらず、パパ活を繰り返しているという。
私からしたらフィクションのような人達だった。
そしてどうも仲間を作ろうとしているようにも思えた。
「そ、それじゃ私もう少し他の所回ってみますね」
取り合えず強引に話に入ってこの場を離れようとした。
「ちょっと待っててよ、今知り合いの人呼んだから」
「え、何でですか?」
「ちょっとウチ等も良く使ってるんだけどね、あんた薬に興味ない?」
「いえ、今お金も持ってないのでまた今度にします」
「いいよいいよ、お金なんてウチらが出してあげるから、別に薬と言っても怖いもんじゃないよ?体に害は無いしちょっと気持ち良くなれるだけだから」
嘘だ、明らかにこの人達の肌は荒れていて思考もまともじゃない。
その時知り合いという人が来た。
身体の大きくて顔中ピアスだらけ、明らかにまともな仕事をして無さそうな人だった。
にやにやしながらこちらに数個謎の錠剤が入った袋を差し出してくる。
怖い
「あ、あのやっぱり、いらないです」
「あ?呼んどいてそれはないだろ」
突然表情が怒りの表情に変わった。
怖い怖い怖い
「いいから、それ飲んでみ、一粒でいいから、残りは別に強制しないよ」
もう一粒だけでも飲むしかないと思った。
それで開放されるなら飲んで直ぐ帰ろう。
そう思った。
「ひ、一粒飲めば直ぐ帰っていいですか?」
男がまたにやにやし始めた。
「いいよそれで」
男の表情から何となくわかった、これを飲んだらもう私はおしまいなのかもしれない。
でももう、逃げる事は出来ないのだろう。
お母さん、お父さん、お姉ちゃん、ごめんなさい。
涙をこらえて、その薬を口に入れようとした。
******** side end
「やめときなよ」
俺は澪の薬を持っている腕を掴んで止めた。
澪は驚いた様にこちらをみる。
「あ?何だテメー、ついでだしお前も飲んどけやその薬」
「嫌だよ、帰るよ澪」
突然現れた俺に混乱してるのか身動き取らずにしていた澪の手を引き歩きだす。
「おい、ちょっと待てや」
男が何か言っているが、無視して後ろの様子を横目で伺いながら少し歩くと、案の定男がこちらに向かって来て、俺の手を掴もうとしたので振り返る。
『俺達に触るな、追ってくるな』
俺が催眠を使いそう言うと男の手が止まり、足も止まる。
また澪の手を引いて歩き出す。
すると、さっき澪と話してた女達に囲まれた。
「ちょっと待ちなよあんた、いきなり来て何なの?」
「何でしょうか?家出した友達を見つけたので連れて帰るだけなんですが」
「それで通ると思ってるの?」
「通るも何もテメーら見たいなゴミに従う必要なんてねーんだわ」
「っ!?」
かなりドスを効かせた声で言うと女達は怯む。
「どけやカス共が」
「・・・」
更に大きめの声で言うと黙って道を開けたのでそのまま澪を連れて路地を出た。
無言で俺に手を引かれてついてくる澪を連れてさっきまでいたカラオケボックスに入る。
個室に入った所で声をかける。
「家出してきたんでしょ?今日はここで寝てきなよ、お金なら全部だしあげるから好きに頼んでいいよ」
そう安心させる様に微笑みつつ言ってあげると、澪が意を決した様に顔を強張らせつつ口を開く。
「あ、あの誰ですか?」
・・・そう言えば変装したままだったわ。
俺はウィッグとサングラスとマスクを取ってから、頭を振り固まった髪を流す。
「1週間ぶり」
俺がもう一度安心させる様に微笑んであげると、今度こそ安心したような表情をして表情が崩れていく。
「あ、理沙、さん、ぐすっ、私、ぐすっ、怖くて」
泣き始めてしまったので、落ち着くまで胸に抱いて頭を撫でてあげる事にした。