第16話 冴先生
「それでこっちの音の鳴っている機械は何なんだ?」
「これは簡単に言うと停電した時にサーバーの爆発を防ぐ機械ですよ、そのバッテリーが切れてるんで交換してください、見た所相当古いので保守も入ってないだろうし、その辺の通販で同じものを買うしかないですね」
「やはり爆発するのか!しかし交換か、よくわからん!何を買えばいいんだ?」
(この人流石に爆発は冗談だとわかってるよな・・・?)
「・・・田中先生はいつ帰ってくるんです?それまでアラームだけ消して放置で、来てから伝えればいいと思いますが」
「ここだけの話だが、田中先生は心を病んでしまってな、いつ戻ってくるかわからないんだ」
先生が暗い顔をして話す。
「じゃあ外注してプロの人にお願いした方が良いと思います、UPSだけ交換しても自動でシャットダウンするようになってなければ、爆発するだけなんで、どんな設定になってるのか中をみて貰ったほうがいいですよ」
「うーむ、外注か、どこに連絡すればいいかわからんな、やはり田中先生を引きずってでも連れてくるか・・・」
「やめてあげてください!貴重な人材を粗末に扱わないで!」
この人綺麗な顔して鬼だ!
「なあ、理沙君と言ったな、アルバイトする気ないか?」
「この学校アルバイト禁止してませんでした!?こんな責任塗れの恐ろしいアルバイト絶対やりたくないですよ!因みにわかってると思いますけど爆発は冗談ですからね?停電した時にサーバーが突然落ちて、壊れてデータが消える恐れがあるだけですからね?大半は何と何事も無いと思いますが、見た感じ少し古い機械みたいなので若干リスクは高めですがね、まあおそらくですがバックアップ取ってるようにも見えるので最悪の事態は防げそうですが」
「やはり爆発と変わらないでは無いか!それにそのバックアップとやらも正確にはどうなってるかもわからんのだろう?3年生の成績とかも全て入っているから進学に関わるぞ」
「何でそんな大切なものワンオペで済ませちゃってるんですか、動いているうちに紙に戻すかプロに頼むしかないですね・・」
「今更紙に戻すのもなぁ・・・、なあ何とかならないか?」
冴先生が困り果てた顔で聞いてくる。
「この学校の基幹システムを構築した外注さんはどうなってるんですか?」
「5年前に倒産したよ、最後に開発データ?を貰ったけどなんだかわからん」
「・・・取り合えず自動でシャットダウンするように設定されてるかだけでも確認しましょうか、バックアップは色々情報足りないのですぐには無理です、いくつかのユーザーとパスワードが必要ですが、わかるんです?それすらわからなかったらお手上げですよ」
美人の困り顔は性癖に刺さる・・・。
「それらしきものは全て一覧で渡されてるよ、はいこれ」
「・・・それもあんまり褒められたことじゃないですが、まあ今はいいです、あ、そういえば百合!」
後ろにいた百合に声を掛ける、もう時間は18時を過ぎている。
「ごめんね、まだかかりそうだから先に帰ってて、絶対生徒が見ちゃいけない物見ることになるから」
「えー、理沙ちゃんがなんかカッコいいからもっと見てたかったのに・・・」
なんか可愛かったから、頭撫でようとしたらいつも通り頭を両手で守って素早くズサーっとバックステップされた。
ちょっとカッコいい。
最近動きが洗練されてきてる、別に嫌われてるわけじゃなさそうなのに。
なんか先生が奇妙な物を見る目でこっちを見ていた。
「かっこいい・・・?良くわからないけど、今ならまだ聡美と一緒に帰れると思うから」
「うん、確かにそうだね!」
「ここまで待っててくれてありがと」
百合と手を振り合ってわかれる。
代わりに担任の琴音先生が寄ってきた。
女子生徒だから気を使って女性教師を付けてくれているのだろう、グヘヘ
サーバーにログインしてアプリ一覧を見回す。
「絶対生徒が見ちゃいけないようなソフトが沢山ありますね、ユーザー名とパスがあるから私に悪意があったらもう色々アウトですよ・・・あった」
目的のソフトを見つけたので開いてログインした。
先生二人が俺の左右からモニターを覗き込んでくる、至近距離に二人の顔がありいい匂いがしてクラクラする。
「すぅーーーーーー、一応電源供給絶たれた後に自動シャットダウンされる設定にしていますね、すぅーーーーーーー、バッテリー交換しておけば取り合えずは問題ないです、すぅーーーーーー」
「おぉ、そうかそうか、でも何で理沙はそんな息を吸い込んでいるのかな?」
「あぁ、理沙さんは女性が好きで尚且つ変態さんなので私達の香りを楽しんでるんだと思いますよ?」
「おぉう?そうなのか、いやしかしこんな叔母さん相手は流石にないだろう、まだ若い琴音先生が良いんじゃないのかな?」
「琴音先生も冴先生も私からしてみたら性の対象です、まあそれは良いとして、体制がこのままだと何時か大問題になる可能性がありますよ、後私がこのパソコンを触った事は絶対に漏らさ無いで下さい、秘密保持とか個人情報の面でも大問題です、それこそ学校なんですからマスコミが絡むような問題にもなりかねません、私は嫌ですよマスコミに囲まれるのは」
「それは勿論阻止したいが・・・」
UPSのバッテリーの型番を調べて、メモ帳に記入する。
「バッテリーはこの型番のを買ってください、ちゃんとしたサイトで値段も他と見比べて高すぎたり安すぎたりしないのを選んでくださいね」
「それは用務員のおじさんと話してくれ」
「私が・・・?」
「他に誰がいるんだ?」
その普段が美人な人がポカンとした表情性癖に刺さります。
「わかりました・・・」
「後でちゃんとアルバイト代渡すから安心してくれ」
「なんか違法してそうですし、お金貰うと責任が発生してしまうんで要らないです」
それよりその大きなお胸で挟んでください!
「そうか?」
「それより多分バッテリーは5万は超えると思うんですが稟議とか通さなくていいんですか?」
「おお、そんなにするんだな、流石にそれは私が・・・いや、無理だ、理由の説明が出来んな」
「私が校長先生とかそれに近い人に稟議持っていったらそれこそ意味がわかりませんよ!まあ稟議書と説明用の台本は私が作りますので後は何とかしてください」
その後冴先生の机に座って説明しながらパソコンをポチポチして稟議書と資料を作成していると何だか前世の仕事を思い出す。
担任の琴音先生が珈琲を入れてくれた。
「ありがとうございます、頂きます」
いや前世こんな美人な人達は近くにはいなかったし、仕事中にこんな風にコーヒー淹れて貰ったことなんて無い。
「理沙さんて色々知ってるのね、パソコンの事もそうだし稟議書何て、私もまだ書いた事無いのに」
「私から見ても何か変な癖みたいなのはあるが、それ程修正する所も無さそうだな、その辺の先生達より余程良く描けてるな」
キーボードをポチポチ、マウスをカチカチしてると急に褒めて来て照れる。
「先生達が美人だから頑張っているんですよ」
「また理沙さんはそんなこと言っておばさんをからかう」
「私からしたらお二人は綺麗なお姉さんですよ、はい出来ました、冴先生校正お願いします」
「はい、途中少し指摘してから全部修正されてて完璧ですよ」
冴先生が撫でてくれた。
(わーい)




