第13話 セクハラ文芸部2
百合を引き連れて文芸部が利用している教室に向かう。
「理沙ちゃんって色々凄いね」
「ん、色々って何さ」
「ああやって自然と人の事助けられる事だよ」
「そ、そんな事無いんじゃ無いかな?」
「ふーん?」
「あ、ちょっと用事思い出したから先に部活向かってて!」
「あ、逃げた」
百合から逃げる様に駆け出して屋上に向かう。
ちょっと新鮮な空気吸いたくなっちゃった。
屋上に出て誰も居ない事を確認すると物陰に隠れて機械に新鮮な空気をセットする。
ぷっはーと喉と肺に感じる刺激を満喫してしばしトリップする。
でも学校で新鮮な空気を吸うのは流石にリスク高いなぁ、我慢出来なくなって偶に色んな所で吸っちゃうけど・・・。
もう一度思いっきり吸い込みぷっはーと息を吐く。
その時足音が聞こえたので、息を潜めて様子を伺う。
玲香だった、キョロキョロ見回しながらこちらに近づいて来てる。
俺を見かけて後を付けてきたのかな?
「玲香さん?どうしたの」
「あ、あの、理沙さんは、どうしてそんな所に、あ、こここの匂いって」
流石に新鮮な吸ったばかりだと匂いがわかってしまうか。
「む、わかるの?」
「お、お父さん吸ってるから、理沙さん不良なんだ・・」
「不良じゃなくて新鮮な空気を吸ってるだけだよ」
「・・・?理沙さんて今日、のあれ・・・わざとなんだよね?」
「何のことかな、私は聡美に欲情しただけだよ」
「あ、う、うそつき」
「まあ、でもこの際だから言っておくけど、あいつらからイジメのターゲットにされつつあるから気を付けてね」
「そ、それは・・・知ってた、私ってこんなんだから・・」
俯いて辛そうだ。
「もし実際に虐めに合うようなら遠慮なく私に相談してきてね、力になるから、絶対に1人で抱え込まないでね、勿論私も注意深く見とくけど」
「理沙さんって、優しい、ね」
「そんなことないよ」
真っ向から言われて照れくさくなる。
「ど、どうしてそこまでしてくるの?」
「玲香が可愛いからだよ」
照れ隠しに玲香の長い髪をかきあげ、目とおでこをださせて上目使いで冗談めかして言う。
「な、な、何をいってるの」
顔を真っ赤にして俺から離れる。
「そうだ相談しやすいようにRine交換しよ、あと良かったら休み時間とか私達の所来る?一人でいると狙われやすいと思うから」
「う、うん、でもいきなり私が理沙さんに絡みに行くと変に思われそうだから・・・」
一人が好きなのかな?
「そう?まあ勿論無理強いはしないよ、気が向いたらいつでもおいで」
「うん、ありがとう」
玲香と話ながら新鮮な空気をもう一度供給し直してご機嫌に部活へ行く。
「ふんふんふん♪」
部室に入り百合を探すとまた秋先輩に絡まれてるようだった。
「ねえ、百合ちゃんおっぱいって柔らかいね、あ、私ばっかり触って悪いから、私のおっぱいも触っていいよ?」
百合の後ろから秋先輩が胸を鷲掴みして揉んでいるようだ。
相変わらず百合の表情は強張っている。
恐怖で抵抗出来ないのだろう。
秋先輩の胸を鷲掴みにして耳元囁く。
《私もま・ぜ・て?》
「ひゃう!」
秋先輩が背筋をピンっとさせてから腰が抜けた様にペタンと座りこむ。
「いきなり何をするんだね、変態後輩君」
自分の胸を守る様に両手で隠し涙目でこちらを見上げる秋先輩。
俺も身を低くして秋先輩に顔を近付けて、指で秋先輩の顎をクイっとする。
「かわいいよ秋」
そう言ってから唇が触れそうなくらい至近距離まで自分の唇を近付ける。
秋先輩の顔がボフッと爆発したように赤くなりすぐさまのけ反り、立ち上がって夏希先輩に駆け寄り抱き着く。
「わーーーん、後輩に堕とされるー、夏希助けてー!」
取り敢えず変態を撃退したので立ち上がり百合を見るとキラキラした目でこちらを見つめている。
また助けたとでも思ってるのかな?
何となくノリでやっちゃっただけなんだけど。
誤魔化す為に秋先輩と同じ様に座ってる百合の後ろに回り込み胸を鷲掴みにして揉む。
(こうすればまた嫌悪感で顔も強張って・・・?)
先程の秋先輩にされてた時と違い、うるうるとした瞳で顔を赤く染めてこちら見上げていた。
(あれ!?)
「こ、コラー!私を口説いたと思った側から百合に手を出して君には節操というもの無いのかね!?」
秋先輩が夏希先輩の後ろに隠れながらこちらに近付いて注意をしてきた。
「理沙さんあんまり秋をイジメないでね・・・?」
「はーい、次からは夏希先輩から攻略する事にします」
「秋なら好きにしてくれて構わないから勘弁してください」
秋先輩を後ろから引き摺り出し差し出してきた。
「う、裏切り者ー!」
「冗談ですよ、調子に乗ってすいません」
差し出された秋先輩の頭をぽんぽんして謝る。
「わ、わかれば良いんだよ、わかれば!」
百合が後ろで「ぽんぽん・・・」とか呟いてる、口癖なのだろうか。
気を取り直して部活動に取り込む。
今は俺が百合の隣に座っているお陰かあれから秋先輩は百合に絡んでこない。
しばらく集中して小説の執筆に勤しむと少し疲れたので一息いれる。
んーっと背を伸ばすと執筆の手が止まり考えてる百合が目に入る。
百合の画面を見るとあまり筆が進んでいないようだ。
「どうしたの、何かわからない事でもある?」
「ん?あーちょっと今後の展開がわからなくて」
「ふーん?どんな小説書いてるの?」
「女子高生が主人公で、主人公の女の子が色々な女の子を攻略する物語なんだけどね」
「ほうほう、どんな感じで攻略していくの?」
「同じクラスの後ろの席の子を口説いたり、別の女の子を嘘告から助けたり、また別の女の子をセクハラから助けて口説いたり、そのセクハラしてる女の子を口説いたり、更にその友達も口説こうとしたり、怪我しそうな子を助けて襲い掛かったりする話なんだけど、次はどの子に手を出すんだろうとわからなくてね?やっぱり嘘告から助けた子かなー?まだその子を口説いてはいないようだし」
どこかで聞いたような話だな・・・・?
「ふ、ふーん、流石に節操なさすぎじゃない?その主人公」
「ね!理沙もそう思うでしょ?それで次は誰に手を出すの?」
「し、知らないよ!百合の小説なんだから自分で考えないと!」
すぐに自分の執筆を再開することにした。
ーー
部活も終わり百合と一緒に教室に戻っている時、誰も居ない筈の空き教室から物音がした。
百合と目を見合わせてから、一緒に教室の窓から中を覗く。
するとか弱そうな女子生徒に対してオラオラ系男子生徒が壁ドンをしながら顎クイしているシーンが目に入った。
百合が「ふぁー」となんか感動したような声を出しているので注意喚起することにする。
「百合!あんなもん目が腐るから見ちゃダメ!あれは壁ドン顎クイって言って、壁ドンすることにより女の子の逃げ場を無くして、顎クイで女の子の思考を奪い好き放題するという言わば強姦と同じ行為なのよ!」
「壁ドン・・・顎クイ・・・」
「そう!壁ドンと顎クイ!本当に男って奴は全く!まずね、あの壁ドンは行き当たりばったりに見えて実は計算尽くされたとても怖い物なのよ?どこを封鎖すれば女の子の逃げ道を塞げるのか、また完全に塞ぐことが出来なくても上手く逃げ道を誘導して更に逃げ場の無い奥の方に誘導する方法を頭の中で計算し尽くしてる、いわば強姦の準備段階!」
「誘導・・・封鎖・・・」
「Yes!誘導と封鎖よ。覚えておきなさい?男が無言近づいてきたらその予備動作だからね、回避タイミングをしっかりと把握しておくのよ?滞空時間が無敵時間となっているからね、最悪間に合わなかったらタックルでのけぞりを無効にしなさい」
「滞空・・・?無敵・・・?タックル・・・?」
「そしてあの顎クイはもはや只の強姦よ、あの何を触ったかわからない様な、ねちゃねちゃーっとした手で、女の子の顎に無断でねとねとーっと触って堪能する行為なの、更にそのまま女の子が思考停止して動かなければ、そのまま唇も貪り尽くされちゃうんだから!」
「ねとねと・・・ねちゃねちゃ・・・」
百合は復唱して自分に言い聞かせている様だ。
「そう!顎クイは言わば立派な犯罪よ!下賤で愚劣で愚にもおとる行為なの、百合何てほわほわしてるし、すぐに凶悪犯の餌食になっちゃうんだから気をつけなさいよね!」
百合に念を押してると先程壁ドンをされていた女子生徒が「ねとねといやーー!」とか言いながら飛び出して逃げていった。
どうやら声が全て中まで聞こえていた様だ。
ねとねと系男子が中から出てきてこちらを睨みつけてくる。
「邪魔してくれたなおい!後少しだったのに」
「黙れこの腐れ外道犯罪者がっ!!!」
突然俺に怒鳴られてねとねと系男子がビビって絶句している。
「ほら百合もう行こ」
百合の手を引きその場を後にする。
少し歩くとさっきの女子生徒が「助けてくれてあがとう」と言ってきたので「いいよいいよ」と返しておく。
「なるほど!次はまた別の女の子だったか」
百合が何かに納得しているけど意味がわからないので多分ただの独り言だろう。




