第12話 嘘告
それから何日か経ったある日の放課後、下駄箱から出ると女子生徒が男子生徒に連れられて校舎の裏に行くのが見えた。
あれは確か有川玲香とクラスの陽キャ男子だな変わった組み合わせだな。
あぁあれが嘘告イベントかな?あの子はクラスでイジメにあう予定の子だ。
きっかけは陽キャ男子の悪戯の嘘告に騙される所から始まる。
嘘告のタイミング分からなかったから、後で対処しようと思ってた子だ、丁度良いから少し見てくか。
そのままこっそりとと後を追うと案の定告白が始まった、回りを見渡すと奥の茂みに数名の生徒が居るのが見える。
「始めて見た時から君の事が気になっていたんだ、俺と付き合ってくれないか?」
陽キャ男子が嘘告を開始した。
「・・・えっと、・・・あの・・貴方の、事をよく知らないので・・・・少し考えさせて貰えませんか?」
「勿論だよ、でも明日には答えをくれないかい?」
「わ、わかりました」
そんなやり取りをして玲香が離れて行く。
残った陽キャ男子の回りに陽キャグループが集まり話始めた。
「たく、返事くらいとっととしろよな、これだから陰キャは」
告白した陽キャ男子がそう愚痴る。
ギャハハと笑う陽キャ達を残して玲香を追いかける。
ほんと男ってしょうもないな、いやこのイベント考えたの俺だけども。
この後玲香は必死に返事を考えて、お試しで付き合って見ようという結論に至る。
次の日教室で呼び出そうと、陽キャ男子に声をかけるとその場で答えてと言われ、その場でお試しでお付き合いしましょうと答える。
そこからはネタバラシが入り、クラス中が注目している中で誰がクソ陰キャと付き合うかよ、夢見てんじゃねーよと言われて、クラスでの立ち位置が陽キャグループに馬鹿にされてる奴となり、それに便乗する奴が現れ始めてクラスのイジメの対象となる。
勿論全員が全員イジメているわけでは無く、大半が男子の数グループによるイジメだ。
その後にイジメがエスカレートしていき、性的イジメに発展していく。
因みにこの子はVチューバーでもあり、今回の件とも若干連動していて、自宅バレして配信中にってのもある。
俺のリビドーは多種多様にわたるのだ。
これも結局創作物だったから興奮できたが、リアルで起こっても胸糞過ぎる。
先を歩いていた玲香さんに追いつき声をかける。
「玲香さん」
「っ!?」
急に話しかけられる思っていなかったのかビクッっとする。
「さっき陽キャ男子に告白されたと思うけど、あれって嘘告だから気を付けてね」
「え・・・本当なの・・・?」
「あいつらが話てたの聞いちゃったからね、まあ信じるも信じ無いも玲香さん次第だけど」
「あ、う、どうしよう・・・」
「まあ気負い過ぎ無いようにね」
多分このイベントについては嘘告をどう答えようと関係無い気がする。
原作通りに行動したらそのままだし、仮に断っても結局公開処刑になると思う。
きっと何マジになってんの的な事を言ってクラスの笑い者にするだろう。
陽キャと陰キャの関係はそういう物だ、陰キャに衆人環視で振られてそのまま黙ってるはずが無い。
取り合えず事前に嘘告と玲香に伝えられたので精神的なショックは抑えられるだろう。
そして公開処刑を止める事だが多分こちらも何とかするつもりだ。
ーーーー
次の日の昼休み俺はいつも通り恵とお昼を取り終わり雑談している所だった。
玲香が立ち上がり陽キャグループに近付いていく。
俺は目線だけ動かしその様子を伺う。
玲香が陽キャグループの目の前に立つと、陰キャが陽キャグループに近付くと言う異常事態にクラスは静かになり注目が集まる。
そんな周囲の状況を知ってか知らずか玲香が話し出す。
「あの、その、昨日の、答えを・・・言いたいのですが!あっちに・・・良いですか?」
「この場で言って貰っても良いかな?」
やはりイベント通り公開処刑をするつもりの様だ。
「え・・・ここここで、ですか・・?」
玲香もここで答えを言えと言われるのは想定してなかったのか困惑する。
「うん、もう時間も無いからさ?お願い」
「き、昨日の返事ですが・・・、お、お断りさせて貰います!」
昨日の俺の忠告を真に受けてくれたようだ。
この陽キャ男子はイケメンらしいので、今まで振られた経験など無いのだろう。
それがまさか陰キャに振られると思って無かったのか、一瞬何を言われているのわからないといった顔をすると、すぐに怒りの表情を浮かべる。
「は?生意気に断ってんじゃねーよ、誰がテメーみたいな陰キャに本気で告白するかつーの」
玲香の顔が歪む。
このまま事態を進めると周りの陽キャが呼応してしまうので、ここで俺の考えていた作戦を発動する。
「なあおm」
「あーーー!もう我慢できない!聡美やらせろーーー!!」
俺の考えていた作戦はクラス中の視線が集まる中、陽キャに馬鹿にされる玲香という場面が作られる前に俺が強引に注目を集めることだ。
周りの注目を集めて、玲香の件は有耶無耶になったらいいなーって作戦だ。
後は俺が騒ぎを起こしている間に玲香がその場を離れてくれれば自然と公開処刑は回避されるだろう。
因みに聡美に襲い掛かるのは机の場所が遠い所にあるからだ。
大声で襲うと宣言をしてから、教室を端から端へと動くことにより更に注目を集めることが出来る。
恵だと後ろの席だったのでそこまで注目を集めることは出来ないと思った。
俺は予定通り大声でやらせろと言って聡美に近づく。
「な、な、な、な」
聡美はまだ何が起きているかわからず混乱中だ。
これだけでも周りの視線も掌握出来たようだ。
後は聡美に襲い掛かり取っ組み合いをするだけだ。
百合だとそのまま素直に押し倒せそうだから聡美にした。
案の定俺が聡美を押し倒そうと両手を向けると、両手を掴んで抵抗してくれる。
「い、いきなりどうした理沙!!」
「ちょ、ちょっと理沙ちゃん何してるの!?」
百合も横から控えめに止めてくる。
「やーらーせーてー!」
理想通りの展開だ、もう周りの視線は取っ組み合う俺達に釘付けだ。
「ま、まって!物には順序ってものが!」
「もう我慢できないの!」
抵抗を続けていた聡美の腕の力が抜ける。
あれ?
ゆっくりと押し倒すことが出来てしまった。
あれれ?
胸を鷲掴みにして揉んでみる。
聡美は何かに耐えるように目をギュッと瞑り横を向く。
「あんたはいきなり何をしている!!」
首だけ振り向くと恵が鬼の形相で俺の服を引っ張っている所だった。
倒れている聡美をそのままにして俺は恵に服を引っ張られ廊下に連れ出された。
ちらっと陽キャグループの方を見るともう既に玲香はその場にいなかった。
トイレにでも逃げたのだろう。
壁際に追い詰められて恵の尋問を受けることになった。
「あ、あの言い訳をしてもいいでしょうか?」
「言ってみて?」
「玲香さんの事です」
「はぁ、まあそうだろうとは思ったけど、もっとやり方はなかったの?」
「これがあの時とっさに考えられた唯一の方法だと思いました」
「まあ確かに効果はあったとは思うけどね」
「でしょー?」
「調子に乗らない」
「はい・・」
「流石にあれは酷いと思ってたから、多分あのままだと公開処刑みたいになってたと思う」
「まあそうだろうね、でもこれで終わるかな?」
「うーん、終わればいいんだけどね、暫くは様子見かな・・」
「だね」
教室に戻るとクラスの皆から凄く視線を集めた。
そりゃそうだわな、他の人からみたら俺は人前で突然女の子に襲いかかるヤバい奴だからな。
そのまま恵と席に戻り、周りに視線を巡らしてみる。
周りを見渡してみると玲香はもう席について下を向きながらスマホを弄っているようだ。
どうやらあの後は特に何も起こらなかった様に見える。
ちらちらとこちらを見えているようだが俺に襲われないか不安になっているんだろう。
陽キャグループ達も特に変わった様子は見せていない。
聡美と百合が遠くからジトッとこっちを見ている。
取り合えず後で説明はしておこう・・・
ーー
放課後になり恵みと別れて教室を出ると聡美と百合に両脇を抱えられて壁際に連れてかれた。
先ほどの事を説明をすると二人とも気づいて無かったようでそんな事があったのかと驚いていた。
まあ陽キャ共とは席は端と端だったからあの時点では気付いて無くても仕方がない。
「てかなんで聡美は途中で抵抗辞めちゃうのさ、あのまま掴み合ってる所で誰かに止めてもらうつもりだったのに」
「い、いやあれは、ちがくて、理沙が本気っぽかったから、じゃなくて!理沙にだったらいいか、って違う、ぼーっとしちゃってて!ぁぅ・・」
聡美がしどろもどろで言い訳をしてくる。
「もう、こんな淫乱ほっといて部活行こ百合」
「聡ちゃん・・・」
「ち、ちが、聞いて百合、違うの!」
因みに陽キャ野郎には罰として催眠して全校朝礼で校長先生に告らせた。
校長は禿たおっさんだ。
「生徒の皆おはよう、皆さんには三つの袋を大切にしてもらいたい、一つ目は池袋、なんつって」
違った、禿た寒い事を言うおっさんだ。
「校長先生!俺と付き合ってください!」
陽キャが言い放った。
全校生徒がシーンとする。
校長先生も黙る。
「って冗談です!ハ、ハハッ!」
直ぐに冗談で誤魔化そうとするが誰も笑わない。
共感性羞恥!!




