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情緒不安定

家での子供時代の記憶から今度は小学校や中学校での奇行の思い出を探っていく。そんな中に泣けない男の心因が出てくるのか。












 政二が小学校の高学年になった頃には周りのみんなを笑わせることが得意な人気者になっていた。授業中は先生の問いに対して素早く手を上げ、正解も言うが時には受けを狙った面白発言をすることも多かった。クラスのお調子者と言ったところだった。休み時間にも先頭に立ってグランドに出て、集団遊びのリーダーとなっていた。

 そんな彼も時々落ち込んだような表情を見せることもあった。何があったのかは不明だが、2時間目の授業が終わった時、クラスメイトのマーちゃんが近くに寄ってきて

「政ちゃん、外へ行って遊ぼうよ。」と誘ってくれた。いつもなら返事もそこそこに立ち上がって走りながら

「今日はソフトボールやろう。」と声をかけてみんなにも声をかけているところだった。しかしその日はふさぎ込んだ表情で

「行かない。」と言って座り続けていた。いつもと違う反応にマーちゃんは政二に少し距離をおいて他の子の所へ行ってしまった。

 政二はぼんやりと前を見ながら椅子に座り

『僕の存在意義って何だろう。僕がこのクラスにいる意味はどういう事なんだろ。僕がいなかったらこのクラスはどうなるんだろう。』と少し危ない思考に陥っていた。そして彼が出した結論は次の授業で敢えて黙って静かにしているとどうなるかを実験してみようというものだった。

 チャイムが鳴って3時間目が始まった。先生が小走りで職員室から戻ってきた。挨拶を終えると道徳の授業が始まった。先生が範読してくれて話の筋は大体理解できた。先生が質問してきた。しばらく沈黙があったが、何人かが手を上げて質疑が始まった。政二は当初から決めていた通り、黙って沈黙を貫いている。

『僕がいなかったらこのクラスの授業は活気がなくなるはずだ。』と考えていたのだが、どうもそうなってはいない。

 45分の授業が終わり、全員起立して挨拶が終わるとまた全員が一旦座る。政二はそのまま動けなかった。

『僕が静かにしているとクラス中が静かになってしまう。』そう思い込んでいたが実際には政二が発言しなくてもほとんど何も変わらなかったのだ。

『僕の存在意義って何だったんだろう。おかしいな。』と感じて寂しい思いもしたが、しばらくすると

『ぼくなんてそんなもんさ。』と開き直るしかなかった。


 中学生になると親の目が届かないことを良いことに、自立心を最大限に発揮し始めた。

 中学1年生の春には兄の仙一が大学進学で大阪に行ってしまったので、それまで兄が占領していた蔵の中の部屋に親の承諾なしに、自分で引っ越した。蔵は道を挟んで家と隔離していたので、晩御飯を食べて蔵へ行ってしまうと祖母のクメも政二が何をやっているのかもわからなくなった。

 大人びたことをして粋がりたい年頃だったので、家の中に残されていた空のウイスキーの瓶を持ってきて蔵の部屋の中の棚に並べた。学校帰りの友達が何人か自転車を蔵の脇に置いて部屋に入ってきて、しばらく話し込んで帰って行ったことがあった。すると数日後の国語の授業で学年生徒指導の先生が教科の話を停めて

「この中に親の目の届かない部屋で寝泊まりしているのがいるらしいな。毎晩、酒を飲んで赤い顔をして寝込んでおるらしいじゃないか。許さんぞ。」と怒っていた。政二は誰のことかなと考えてみたが、どう見ても自分のことだと感じた。先日、蔵の部屋にやってきた友達が先生に話して事が大きくなってしまったようだった。あまり気にしなかったが、両親にもその話は届かなかったようで、その後呼ばれてしかられることはなかった。


 それにしても小学校高学年から中学校に掛けて親と離れて住んでいたことは政二にほかの家庭とは違う不思議な体験をいくつもさせてくれた。このことが政二の成育歴に与えた影響も大きかったように思う。

彼の回想は高校時代や浪人生時代につながっていく。そこでも他の人と一風変わった生活ぶりが垣間見えてくる。

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