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バックオブスマイル~『ひと』の裏の顔~  作者: 春華秋闘
第一章
9/47

魔術会登録

そして日曜日。

朝起きると、まだ午前中だった。

たしか集合は二十時だったよな。

(何で夜になってからなんだろう。)

夜の渋谷なんてなんだか怖い。

勝手なイメージだけど。

今の内に今後の授業の先取りをしてしまおう。

朝食を取り終えると、自室で勉強に取り組んだ。


そして午後八時。

渋谷駅で花月と待ち合わせている。

俺が駅に着くと、もう彼女は待ち合わせ場所にいた。

「ごめん、待たせた。」

「魔術師登録ですね、それでは、ここに必要事項を記入してお待ちください。」

そう言われ、書類を渡される。

名前、生年月日、血液型。

職業、性別、電話番号などなど。

前半は普通の記入用紙のように見えたのだが。

「…花月。才、家系、ランクって…?」

後半はわけのわからない事項ばかり。

「…あぁ、そこは未記入で。もう出してきていいよ。」

と言われたので提出した。

「ではバッジを作成いたしますので、しばらくお待ちください。」


そこからが地獄だった。

…花月と会話が続かない。

俺が、

「花月の才ってどういう…?」

と聞いても、

「説明は難しい。」

と一言で終わってしまう。

その後も、

「中学じゃ全然話さなかったよな。」

「ほかに興味のある部活は?」

「モカと仲いいよね。」

などなど色々な質問を繰り出すも、

「うん。」

「特に。」

「まぁ。」

と、興味なさそうに相槌を打って終えてしまった。

(気まず…。)

しかし。

俺は、ある質問に対する彼女の反応が気になった。

「いつから魔術師に?」

という質問。

それに彼女はこう答えた。


「分からない。」


…わからないって?

どういうことだ。

「何かきっかけがあったわけではないのか…?」


「きっかけはなかった。多分、生まれた時からかな。」


彼女の生い立ちは知らない。

きっと事情があるのだろう。

「そっか。」

それから、俺たちは会話することなく、バッジができるのを待った。

少し時間が経つと、受付の人からバッジが手渡された。

かっこいいデザインの、スタイリッシュなバッジだ。

「これから任務に赴くときは、必ずそれを身に付けてください。任務以外のときもそのバッジがあると、急な任務にもすぐ行けますから、常時持ちあることをお勧めします。」

バッジを受け取る。

普通のバッジにしか見えないが、本当に特別な効果が?

「そういえば花月様、第四部から任務に関する知らせが来ているそうです。帰りにでも寄って行ってください。」

「そうですか。連絡ありがとうございます。荒川、ちょっと付き合って。」

「うん、大丈夫だけど。」

俺たちは再び光に包まれると、次はさっきよりも空気が緊張しているフロアに出た。

黒を基調とした家具が並ぶそこには、少し老けた男が椅子に腰かけていた。

「郷知さん、」

郷知さとしりさんと呼ばれる人は、ようやく花月の存在に気づいたようだ。

「あ、いらっしゃい、花月さん。…おや?その方は?」

俺の方を見て首をかしげる。

「彼は最近入った荒川さんです。荒川、第四部準指令士の郷知さん。」

「はじめまして、郷知です。以後お見知りおきを。」

「こちらこそ初めまして。荒川翔真です。」

軽く挨拶をかわすと、先ほどの『知らせ』の話に移った。

「そうそう、この間水神君が対峙した悪魔について、新しい情報が入った。本当は直接彼に話したかったんだけど、こっちも時間なくてね。悪いけど、これを渡してもらえるかな?」

差し出したのは、ちいさなジップロックに入ったUSB。

「これだけお願いね。じゃあ今日はこれで。ごめんねわざわざ寄ってもらって。またすぐ会う機会があると思うけど、荒川君もまたね。」

最初に来た時とは比べ物にならないくらい、終始和やかで落ち着いた会話だった。

会釈をして俺たちは立ち去る。


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