白咲さんと花月さん
今日は午前中の授業は全て座学で、昼休憩になった今でも全然お腹がすかない。
友達と軽くお弁当を食べながらふと気づいた。
白咲さんと花月さんが一緒にお弁当を食べている。
…仲良さそうに。
ジャンルが違っても、積もる話があるのか。
ぼうっと彼女たちに目を向けていると、
「なーに見てんの?」
昼食仲間の佐藤が俺に肩を組んでくる。
「あ、もしかして白咲さん?見惚れてたんだ?」
ニヤニヤと問い詰めてくる。
「揶揄うなよ、別に、なんかあそこだけ教室に見えないっていうか。」
「まぁまぁ、そう焦んなって。確かに、マイナスイオン出てるよな。
ほんっとにあの二人と同じクラスなんて、今考えると奇跡だよな。」
やはり、誰から見てもあの二人は別格らしい。
いつも白咲さんにつるんでる女子たちも、花月さんが一緒だと遠目から眺めてるだけで話しかけに行こうとしない。
不思議だ。
「やっぱ、花月さんってすごい人なんかな?女子たち、全然白咲さんに話しかけないもんな。」
「…そうかもな。」
俺たちが知ったことではない。
彼女たちがどう過ごそうと彼女たちの勝手だ。
「そういや、今日放課後時間ある?カラオケいかね?」
放課後…、あ。
「ごめん、用事ある。また今度な。」
「そっか、了解。じゃあそろそろ着替えようぜ。この後は二時間体育だし。」
「うん。」
俺たちはサッと弁当箱をしまって、体育館に向かった。
午後の授業。
体育は体力テストだ。
「あ、翔真!中学のときよりタイム上がった?」
五十メートル走の後に優に声をかけられた。
「まぁね。優もでしょ?」
「おう!もちろんクラスの中で一番。女子はどんな感じ?」
「あぁ、それは…。」
…聞くまでもないだろうに。
もちろん。
「花月さん、速っ!!」
俺たちの背後で女子の声が聞こえる。
「やっぱりか。」
優は『わかってました』、といったような顔で頷いた。
花月さんが一番速いだろうな。
彼女はそんな女子たちの声を他所に、涼しい顔で水分補給をしている。
かっこいい、
男の俺でもそう思ってしまう程度にはイケメンだ。
「…優?」
優に向き直ると、ぼうっとしながら花月さんを見つめていた。
(…もしかして)
「もしかして、花月さんの事気になってる?」
小さい声でこっそり聴いてみた。
すると、眉をひそめた優。
「?なわけないだろ。」
何言ってるんだという顔で見てきた。
なんだ、気のせいか。
「おい、そこのお前たち、次の種目に移りなさい!」
そう先生に言われ、その後も体力テストをし、その日の体育は終了した。
そして、放課後になった。
荷物をまとめ、佐藤に声をかけてから隣のクラスに向かう。
「お、来た来た。んじゃ、いくぞ。」
「行くってどこに…」
「もちろん、社会科準備室にな!」