読めないクラスメイト
翌日。
俺が学校に出発しようと家を出ると、門の前に優が立っていた。
「やっと来た。おはよ、翔真。」
いつもよりも表情が硬い。
なにか、迷っているような。
「おはよう優。どうしたの、こんな朝早くから。」
おそらく昨日の事だろうと予想はつくが、わかりやすすぎる。
「あ、いや、久しぶりに朝練ないから一緒に行こうぜ。」
分かりやすいが故に裏表がなくて付き合いやすい。
昔いたずらをした時もすぐにバレて、怒られていた。
だから、余計に昨日のことが気になる。
俺たちの間に、今まで隠し事はなかったはず。
そんなことを考えて夜も眠れなかった。
「うん、行こうか。」
かといってずっと気にしているわけにもいられない。
(何か事情があるんだろう。)
俺たちは並んで歩きだした。
俺たち一年の教室は第三棟にある。
ちなみに俺は一組で、優は隣の二組。
教室に着くと、
「翔真、今日帰る前にちょっと時間もらえるか?」
と、心情の読めない顔で話してきた。
…昨日の話か。
「分かった。帰りのSHR終わったらそっち行くわ。」
優は頷いて教室に消えていった。
俺も自分の教室に入り、自席に着く。
苗字が荒川のため、席は前から二番目。
まだ早いせいか、教室に生徒は俺以外に一人しかいなかった。
その生徒は俺の席から遠く離れた席について本と向き合っていた。
たしか名前は、花月さん、だったか。
彼女はとてもきれいだ。
白咲さんとはまたジャンルの違った美しさ、という感じの。
白咲さんは可愛い系だけれど、花月さんは綺麗系。
花月さんも中学校から同じだけれど一度も話したことはない。
一言でいうと、雰囲気が怖い。
なんだか、近寄りがたいオーラを感じる。
こんなことを言うと失礼かもしれないが、他人に興味がなさそう。
人と話しているのを見たことがあるが、一切笑わない。
笑顔を見たことがない。
それくらいの認識だ。
(まぁ、関わることもないか。)
俺はカバンに目線を直し、自分の勉強に集中した。