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優の落とし物
授業が終わり、荷物を持つ。
今日は木曜で、すべての部活動が休み。
隣のクラスの優を探しに行った。
しかし優の席はすでに空席だった。
「なぁ、優ってもう帰った?」
「優?あぁ、さっき出てったばっかりだよ」
「ん、ありがと」
足早に下駄箱に向かう。
すると、ちょうど優が靴を履き替えているところだった。
「おい優!」
大きめの声で呼ぶと、優がこちらをむいた。
「あ、翔真、わり、今日ちょっと用事あるから先帰るわ。じゃな!」
ニカッと笑って背を向けていってしまった。
用事あるならしょうがないな。
俺も靴を履き替えようとした。
…その瞬間。
背筋がゾクッとした。
誰かが急に驚かしてきたときのあの感じ。
後ろを振り返る。
しかしそこには誰もいない。
いつも通り、生徒が下校しているだけだ。
何だったんだ。今の感じ。
視線を足元に戻すと、そこに、
いつも優がリュックに付けているお守りが落ちていた。
(あいつ、落としてったのか)
今日は先に帰って行ってしまった。
明日渡せばいいか。
そう思い。ズボンのポケットにお守りをしまった。