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盾の魔術師、トップを疾走れ!  作者: 九五
【終わる世界、始まる世界】
10/33

ver.10.0 石の森と、不器用な狼①

前回が動きのない話だったのと、ここからしばらく分割になっているので週2更新です。



●英語の台詞が少しだけでてきますが、完全なるグー◯ル翻訳頼みです……。今後も含め、おかしいところはご容赦&ご指摘いただければと思います。

「ちゃんとご飯は食べてきたのかしら」

 

「は、はい。準備、できました」

 

 カナリアさんと二人での冒険を了承して、まず最初に言われたのが「朝ごはんはちゃんと食べたのかしら?」だった。食べてません。いつも食べません。と答えたところ、優しくも有無を言わさない感じに諭され、一旦アウトしてなにか口にしてくることに。ゲーマーたるもの一番大事なのは健康、だそうだ。

 

「カナリアさんは、昨日は寝たんですか?」

 

「あら。ちゃんと2時間ほど寝たわ。スタートダッシュは重要だもの。しばらくは頑張らなくちゃ」

 

 ……だそうで。矛盾してますよ、とは口に出せない。大人は時に、不条理だ。

 

「それで、まずはどう動こうかしらね」

 

 予期せぬイベントの連続でバタついたが、いよいよ本格的な冒険を始められる。城に連行された猫2匹の動向も気にはなるが、まずは示されたフラグを回収しに行くという方向性で決まった。ジバニにもらったバングルを調べてみれば、



〘◆商者の証

悪名高い『熊猫大商隊』のお得意様に送られる証。これを持ち、苦難を乗り越え、本拠に辿り着いた者は更なる裏取引(ビジネス)へと誘われる。

#売却、譲渡、取引不可〙



 おもっきし悪名高い、って書いてありますね。一応、これがサウザンドの偉いさんが警戒する理由にはなるのかな。

 

 そして、昨日は見損ねた地図を開く。いくつかの都市が解放されたとアナウンスがあったが、訪れていないからだろう。その名前もなく、サウザンド周辺以外は白紙が広がっている。


「白いわね。猫ちゃんが言っていた都市の場所って、ナインちゃんはわかったりしないかしら」


 サウザンドという名前に聞き覚えがなかったが、地図の全容、大陸の輪郭を見ればあたしがかつて冒険した世界だということが改めて理解できた。今は幅広の半島のような場所にいて、北上すれば大陸と言うか、開けた土地に出ることができる。まぁ、概ね白紙でわからないのだけれど、記憶のままの世界であれば、


「たぶん、なんですが、彼らの言っていたノアドラッドという場所は、大体この辺じゃないかと」


 あたしは大陸の中央あたりを指さした。前と変わっていない保証はないし、まっすぐたどり着けるかもわからないけれど。


「十分よ。行ってみましょう」


 立ち上がるカナリアさん。しなやかに歩き出しながら、


「そう言えば、今朝早くお城にも行ってみたのだけれどね。ラズライトちゃんには会えなかったわ。忙しいみたい」


 なるほど。彼女が『落ち着いたら』訪ねろと言っていたから、つまりゲーム的に言えば『今はまだその時じゃない』ということだ。


「猫ちゃんたちも同様ね。詳細はわからなかったけれど、どうも幽閉されているらしいわ」


 タイホされてた。





◆◆ NOW LOADING…… ◆◆





 カナリアさんによれば、サウザンド周辺の地形は昨日と比べてかなり変化しているそうだ。見渡せば景色自体はまだまだ殺風景だが、地面を走り行く手を阻む闇の流れが変わっているらしく、迂回しながらではあるものの目的の方向へと進むことができている。

 

 そしてもう一つの変化。それは目にするプレイヤーの多さだ。今日はフィールドで動いているプレイヤーの数が昨日の非ではないらしい。攻略法というか、ゲームの進行方法がいくつか判明したことで、様子見していたプレイヤーたちが活動的になった。いや、躍起になっているというべきか。なにせ賞金が賞金だ。競技として、賞金を目当てにしてプレイする人が増えると色んな意味で荒れるんじゃないかと少し心配になる。

 

 サウザンドに留まり更なるイベントを探す人。解放された都市、あるいはまだ見ぬ土地を目指して荒野を行く人。個体数の少なそうな魔物に群がり、プレイヤー同士の順番待ちの小競り合いすら起きているところもある。それらを横目にあたしたちは北を目指し歩く。

 

 周囲のプレイヤーもほとんどいなくなったころ。つまりは、全くもってなにもないところにたどり着いてあたしたちは足を止める。

 

「行き止まりね」

 

「……そう、みたいですね」


 目の前を横たわり行く手を阻む闇の大河を見つめながらお互い呟く。右を見ても、左を見ても、見える限りはずっとそれが続いている。また迂回をするにしても目的の方向へと行くためにはどれだけ歩かなければいけないのかがわからない。うーん、どうしたものかと立ち往生のあたしたち。


「ちょっとセーブするわね」


 おもむろにメニューウインドウを開いたカナリアさん。彼女はぽちぽちとそれに触れてから、


「行ってくるわね」


 ぴょん。

 

 と、闇の大河に飛び込んだ。


「うぇえええ! ちょ、か、カナリアさん!?」


 彼女の身体(アバター)が闇に落ち、黒い炎で燃え上がったように見えたのはほんの一瞬。継続(スリップ)ダメージなどという生ぬるいものではなく、ほぼ即死。消し炭になって消滅した彼女の末路に呆気にとられること数十秒。


「戻ったわ」


 あたしの隣で、ふわりとカナリアさんが復活(リスポーン)した。


「む、むちゃくちゃですよ! いきなりなにしてるんですか!?」


「頑張ったら歩いて渡れるのかと思ったのよ」


 そ、そうですか。なんかイメージと違って突発的な人だな、この人。


「無、無理ですよ。検証するにしても突然過ぎますって」


「そうかしら。ゲームだから、特別失うものもないでしょう?」


「そ、そうかもしれませんが……」


 一般的に考えたら、ステータスの一時的なダウンとか、所持金が半分になるとか、デスペナルティはあるかもしれないのに。


「どうやら、装備品と大事なもの以外のアイテムは()()()()したみたいだわ」


「もう二度としないでくださいね!」


 めちゃくちゃ失ってんじゃん! この出来事は無理矢理にでも教訓として残そう。死亡時は所持品をロストするので、預かってもらえるところを見つける。そしてカナリアは予想できない無茶をする。だ。


「さて。じゃあどうす――」


「Damn it! What's wrong!?」


 広大な闇の大河に向かい合うあたしたちの視界の右端でなにかがどさり、と落っこちた。視線を向けると、そこにいたのは『人狼』だった。

 

 地面に座り込む姿勢だった彼は、あたしたちに気付いて立ち上がる。身の丈2メートルを優に超し、過剰なほどに逆三角形の筋骨隆々な巨躯。美しい青灰色(ブルーグレー)の毛並み。鎧など一切の防具を纏わず、簡素な布のズボンのみの出で立ちは、逆にその肉体こそが鎧足り得ることを連想させる。


 チラリと覗く牙も、人の頭を軽々掴めそうな大きな手に備わった爪も、どちらもそれそのものが刃物のように鋭い。外見だけでは話し合いなど通じる余地もないように思えるほどの凶悪さを醸し出していた。しかも、その頭上には【Stevepunk】の文字が浮かんでいる。NPCではない。プレイヤーだ。

 

 近づいてくる。さすがにいきなり襲いかかってきてPvP(対人戦)ということにはならないだろう……と思いたいが、如何せん、威圧感がすごい。しかし、アバターを人間以外の種族にするなんて、できたかな。


「Excuse me. Would you like a little?」


 英語だ。さっき聞こえた声もだが、海外のプレイヤーさんだった。えーと、同時翻訳アプリは入れてたっけ……。


「あいあむじゃぱにーず。のっと、とーく、いんぐりっしゅ」


 胸を張って向かい合い、カタコト英語で正面突破のカナリアさん。すげーな、この人。


「got it. Well……Ahー、アー、あー。あっしの言っていることがわかるでヤンスか?」


 伝わったというより、押し切って。どうやら、人狼の人が翻訳を通してくれたらしい。なんか、語尾とかがあれだけれど。


「おーけーおーけー。だいじょうぶ、ぷろぶれむなしね」


 カタコトが治らないカナリアさん。


「突然ごめんなさいでヤンス。ちょっとひとりじゃ難しいイベント中でヤンして……。良ければクリアを手伝ってもらえないでヤンスか?」


 と、人狼【Stevepunk】氏。どうやら昨日のあたしと同じ状態のようだ。ダンジョンの攻略失敗で、別空間から吐き出されてきたところだったのだろう。


「それは構わないけれど。でも、むしろ良いのかしら? ポイントのこととか、ランキングとかはご存知?」


「あー、確かに気にはなるんでヤンスが、今のあっしには縁遠いでヤンスよ。それよりも今のこのイベントをクリアして、この姿を元に戻すのが先決なんでヤンス」


「元に戻す? その姿(アバター)は自分で設定したものではないの?」


 あたしも感じた疑問を口にしてくれるカナリアさん。


「そうなんでヤンスよ! 自分の意志とは無関係に、イベントでこうなっちゃったんでヤンス! あんまりでヤンスよ!」


 大げさな身振り手振りで訴えるStevepunk。確かに、お気に入りやこだわりのアバターが勝手に変更されてしまったら抗議したくもなるな。


 しかし、カナリアさんの場合のように他プレイヤーを探させたりもそうだが、もしかしてこういう攻めたイベントが結構あったりするのかな。そもそも、リアルトレースアバターの使用が規則になってるプロゲーマーが起こした場合、どうなるんだろう。


「強制イベントってことなのかしら」


「まぁ、選択は一応したんでヤンスけど、なんていうか、詐欺にあったみたいな感じでヤンした。“子供くらいの背丈の猫”に一服盛られたんでヤンス」


 その答えにあたしとカナリアさんは思わず顔を見合わせる。


 なにせ心当たりがありすぎ。





≫≫≫≫≫ Save and continue……

【tips(語られぬ予定の設定たち)】

●セーブとロード

戦闘中以外であれば、街中、フィールド問わずセーブができます。ただ、それはあくまで『ロード地点、復活地点を更新する』ということなので、イベント途中でセーブしたとしてもゲーム内時間を遡ったり、無くなったものが戻ったりするものではありません。なのでロードして戻ったらそこが戦場になってた、ということもあり得ます。


ちなみにゲームオーバー時は、最終セーブ地点か

最後に訪れた街か、復活地点を選ぶことができます。

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