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エメラルド

「何はともあれ、エメラルドゲットだな。先に言っておくけど、このドロップ率はべらぼうに低いから、あまり期待しないようにな。今回出たのはビギナーズラックだろうから」


「実際、どこくらいの確率かって分かったりする?」


 そうだなあ。おおよそ

(ノーマルドロップ)→200個に一個くらいの割合で宝石が入っている

(レアドロップ)→100個に一個くらいの割合で宝石が入っている

 だから、宝石を手に入れる確率は1/200×0.80+1/100×0.15=0.55/100。

 おおよそ、200回に一回くらいで手に入るかな?


「それは……渋いね!」

「死に物狂いで頑張っても、一日で4匹が限度ですから、50日に一回くらいですよね」

「一年で7回くらい。いくらで売れるかにもよるけど、これで生計を立てるのはきつそうだね」


「しかも、宝石って言っても、毎回エメラルドって訳じゃないからな。水晶とかだと、そんなに高くないし」


「なるほど」

「そんな上手い話はないんですね」


「いくらで売れるかなあ。大きさが、えーと、2×2×0.5センチくらい。重さは4グラムくらいかな?」


「確か、1カラットが0.2グラムだよね? ということは、4グラムは20カラット……。凄い値段になるんじゃない?」


「20カラット……。そう考えるとヤバいな」


「取りあえず、もう一匹くらい倒していきます?」


「「「賛成」」」


 もう一匹倒すと、今度は石がドロップ。割ってみたが、中身は空だった。そりゃあそうだよな。



 迷宮を後した俺達は、夕飯後に待ち合わせる事にした。

 俺は軽くシャワーを浴びてから、買い出しへ。なんか無性に天津飯が食べたくなったから、その材料を買いにショッピングセンターへ向かう事にしたのだ。

 帰ってきてから共有キッチンで調理をしようとした丁度その時。


「ってあれ? 赤木君じゃん!」


 キッチンの入り口から俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。振り返るとそこには七瀬さんが。


「あれ、七瀬さん? って宮杜と神名部さんも。どうしてここに?」


「ラーメンを作ろうと思って。ご当地ラーメンの話で盛り上がってさ、せっかくだから三人別々のラーメンを作って分け合って食べようって思ってるの」

「赤木君も誘おうと思ったのですが、電話がつながらなくって」

「電話、充電切れ?」


「……ほんとだ、充電切れてる。ラーメンかあ、いいねえ。ちなみに、俺は天津飯を作ろうとしてた」


「天津飯! おいしそう!」

「まさかの、中華被りですね」

「せっかくだし、四人で分け合う?」


「俺はもちろんいいぞ」

「いいね!」

「勿論いいです!」



「宮杜さんのラーメンは醤油ベース?」


「はい! 私、さっぱりしたラーメンが好きなんです!」


 ばん!と醤油を見せる宮杜さん。宮杜さんの笑顔……なんか珍しいな!

 最初合った時はもう少し暗い印象があったけど、最近は時々笑うようになっている……ような気がする。一人暮らしに慣れてきて、緊張もほぐれたのかな?


「あ、あれ? もしかして、豚骨は苦手?」


「お、七瀬さんは豚骨か!」


 七瀬さんは『豚骨スープの素』を使って、コッテリ系のラーメンを作っているようだ。豚骨、うまいよなあ。俺は好きだぞ。


「あ、大丈夫です。豚骨ラーメンも好きです!」


「そっか、それなら良かった。で、神名部さんのは……何を作ってるの?」


 神名部さんの方を見ると、牛乳をドバドバと鍋にそそいでいる途中だった。えっと、一体何を作っているのだろうか?


「クリームスパゲッティーならぬクリームラーメン。おいしいよ」


「へえー! 美味しそうね」

「ラーメンにチーズと牛乳ですかあ。言われてみたら美味しそうですけど、その発想は無かったです」


「なるほど、そういうレシピか。だからキノコを買ってきたわけね」


「うん。クリームラーメンにはキノコとほうれん草、それに温泉卵を入れたい」


「温泉卵って作るの難しいのでは?」


「最近はレンジで作れる器具が売ってるよ」


「へえ! いつか買ってみよう。何処で売ってる?」


「100均で売ってる」



「では、食事の用意が整った所で……。言いドロップに巡り合えたことに乾杯!」


「「「乾杯!」」」


 ラーメン3種類+天津飯。一人なら絶対に作らないような豪華なメニューになったなあ。


「うっま! クリームラーメン、めっちゃ美味い!」


 濃厚なクリームの味が口いっぱいに広がる。想像よりもうまいな! 今度自分でも作ってみたいな。


「天津飯、すっごく美味しいよ!」


「サンキュー、七瀬さんの豚骨ラーメンも最高! イノシン酸とグルタミン酸の味~!」


 もちろん、宮杜さんの醤油ラーメンもすっごく美味しかった。



「でだ。食べ終わったところで、今後の話をしよう。あの宝石、どうする? 学校のドロップアイテム買取所で売ってしまうか、あるいは学園外で売るか」


「え? ドロップアイテム買取所でいいんじゃないですか?」

「うーん、確か買取所は最低金額で買われるんじゃなかった?」

「なんでも買い取ってくれる代わりに、安くで買いたたく。それがドロップアイテム買取所」


「あはは、まあ鶏肉とかそういった物は自分達で売りに行くわけにはいかない。そう言う物を買い取ってくれる点は、ドロップアイテム買取所に感謝だよな。けど、こういう高級品は買取所以外で買い取ってもらう方が高くなるって先輩から聞いたんだ」


 ゲームではそんな設定無かったけどな。全部買取所行きだ。


「それなら、逢魔湖町に行って、宝石を鑑定してくれるところを探す感じですかね?」


「それしかないわよね……」


「「「うーん」」」


 宮杜さん、七瀬さん、そして俺は互いの顔を見ながら「それしかないよなあ」と頭を抱える。しかし、そこで神名部さんが待ったをかけた。


「一応、ママとパパが宝石関係のお仕事をしてる。から、伝手があるかも」


「マジで?!」「ホント?」「え、凄いです!」


「けど、ダンジョン産の宝石を扱ってるとは聞いたことが無い。もしかしたら、買ってくれないかも」


「それって、『効果付きのアイテムの販売はしてない』って事じゃない? 前に三人に渡した『サラマンダーの意思』で作ったアクセサリーみたいな。さっきのエメラルドはそう言った効果は一切ないから」


「うーん、取り敢えず聞いてみるね。写真、撮ってもいい?」


「もちろん」


……

………


「実物を見ないと分からないけど、もし本当にただのエメラルドって分かれば、高値で買い取ってくれるって」


「分かった。俺としては、神名部さんとご両親に託して良いと思ってる。二人は?」


「私ももちろんオッケーだよ」

「私もオッケーです」



 結論から言うと、あのエメラルドは色や純度からBクラスに分類される……らしい。それで20カラットだから、値段は100万円らしい。

 100万?! 一人当たり25万だ。うっひゃあ、何に使おうかな? うーん、今は貯金しておいて、良いマジックバッグを買うか? 特大容量、重さ減少(大)とか買おうと思うと、1000万以上するからな。

 けど、300層くらいまで行けば、次々とレアアイテムを集められるようになるからなあ。お高い物は、そうなってから買えばいいかも。ま、焦らず決めるとしよう。









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