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魔法杯の模擬戦、試合

◆ Side 暁瑠璃


「それで、地形オブジェクトの配置はどうするの?」


「うむ、この個数なら……。私ならこう配置するかな」


拠□①①

□□□□

①□②□

①□□③


「拠点が左上で、数字の所に泥沼を配置する」


 桜葉ちゃんは画用紙にスラスラと図を描きあがた。なるほど、なるほど。そういう作戦か。まだ一年生の七瀬ちゃんは分かってないけど、この配置は考えられた配置だ。


「七瀬さんはこの配置の意味、分かる?」


「えっとー? すぐ傍ではなく、敢えて少し離れた場所に配置していますね。この理由ですか。えっと……」


「じゃあ、瑠璃は?」


「ふふん、もちろん! 拠点の傍は、私が落とし穴を掘る!」


「うん、そういう事だ。それで、この②の部分の意味なんだけど……」


「敵の侵攻を遅らせる為。そうだよね?」


 そこで戸惑って、敵の侵攻が遅くなることを見越しているはず!


「うーん、敢えて『不正解』と言わせてもらおう」


「なぬ?!」


「瑠璃が言うような『敵の侵攻を遅らせる目的』を達成したいならこうは配置しない。③の部分には配置せず、②の上と左に配置すればいいだろ?」


「確かに……」

「なんでわざわざそこを開けているのか、不思議でした」


「うむ。完全に囲ってあったら、すぐに対処されてしまうだろ? 赤木君はシールド、桃花達は火魔法で地面を焼くかな? 足止めにはなるけど、それだけだ」


「なるほど、そうですね!」

「赤木君のシールドなら、足止めにすらならないかもですね」


「では、今の配置なら? こうすれば、わざわざ地形オブジェクトを突破せず、迂回しようとするだろ? つまり、敵の来る方向を制限できるんだ。ハイレベルな戦いでは、地形オブジェクトは障害物として機能しない。代わりに『敵の動きをコントロールするもの』として機能する」


「「なるほど……」」


……

………


 ブー!


 試合開始のブザーがアリーナに響き渡った。


「それじゃあ、行くぞ!」


「うん!」「はい!」


 試合開始と同時に私たちは拠点を飛び出し、中央を目指した。最初は対人戦がメインだからね。バシバシ倒すよ!


 まず私は山本(弟)に牽制の意味で軽く攻撃を行うも、普通に避けられてしまう。直後、山本(弟)による弓攻撃を受ける事になったが、全部相殺する事に成功した。やっぱりまだまだ一年生、攻撃が単調だから相殺したり避けたりできる。

 私を()けるかな? お、近づいてきた。


「これを避けるかな~? それ!」


 対人戦では必ずしも魔法名を言う必要はない。相手に悟らせないように、同時に複数の魔法を使ったり、口で言う魔法と発動する魔法を別にして混乱させるなんてことをしても良い。

 で、私が今使ったのは石矢の魔法。それを彼のやや右側に連続で撃ち込む。その量を全て相殺するのは不可能と悟ったのか、彼は左側に避けようとするが、それはミスね。私が最初に発動していた落とし穴の魔法が、ちょうどそこにある。


「う!」


「今!」


 落とし穴と言ってもせいぜい50センチほどの穴だ。落下ダメージは微々たるものだし、這い上がる事も可能。けど、そうやってもたもたしていては、「狙ってください」と言っているような物。私は追撃を仕掛けた。


「危ない!」


 そこに割り込んだのは山本先輩。弟を狙った攻撃をレーザー光線で打ち抜く事で、窮地から救った。そのまま、先輩は桃花達二年生三人組を倒しに向かった。流石三年生、対応力が桁違いね。

 そのまま、山本君は私を避け、赤木君たちが戦っている方へと走って行った。


 さて、赤木君も流石としか言いようがない動きをしている。飛んでくる弾幕をシールドではじきつつ、宮杜ちゃんにバフを掛けつつ、攻撃にも参加している。あ、二年生三人組の内の一人を倒した。

 赤木君のバフを貰った宮本ちゃんは、大きな氷魔法を準備している。狙いは山本先輩と薫子ちゃん、それと七瀬ちゃん、加奈ちゃんの四人が戦っている所……不味いこのままではみんなやられちゃう?!


 しかし、いち早く危機を察知した山本先輩が、薫子ちゃんにとどめを刺した後に攻撃範囲から退散した。加奈ちゃんは七瀬ちゃんの手を引いて攻撃範囲を外れる。


 あれ、私はどうしよう……?


……

………


開始12分、現在の得点はこんな風になった


赤木チーム:135点

桜葉チーム:160点

桃花チーム:115点

山本チーム:130点


 人数が少ないから、点数が低く見えるけど、とってもいい勝負だ。

 ここから試合は後半戦かな? そろそろ拠点の落とし合いが始まると思う。


 点数が高い私たちが狙われるかな? それとも……?


 実は今、全員がこのフィールド上にいる。もしここで誰かがやられてしまうと、その子は30秒間試合に参加できなくなり、そのチームの戦闘力はグンと落ちてしまう。そして、そのチームが狙われることになるであろう。


 そんな中、最初に動いたのは赤木君だった。赤木君は山本チームの拠点を狙うみたい。しかし……。


「危ない! そっちはダメだ!!」


 赤木君が後ろを走る宮本ちゃんと神名部ちゃんを突き飛ばした。

 突然、味方であるはずの赤木君が自分を突き飛ばしたものだから宮本ちゃんと神名部ちゃんは「え?」みたいな表情をしているけど、その理由はすぐに分かった。


 ――ドゴン!


 地面が大爆発を起こした。あれは、山本(弟)が仕掛けていた地雷……! 赤木君は第六感でそれが見えているけど、二人はそれが見えていないからね。二人を庇った赤木君は、そのまま退場してしまった。


 これ幸いと赤木君のチームの拠点が狙われることに。慌てて宮本ちゃんと神名部ちゃんが自分たちの拠点に戻るけど、彼女たちに出来る事は無い。



 赤木君の、自分が強すぎるが故のミスだったと言えよう。30秒後、赤木君が復活する頃には、赤木君の拠点は落ちてしまった……みたいね。私は自分の拠点に戻ったから詳しくは分からないけど。


残り6.5分

赤木チーム:135点

桜葉チーム:160→213点(+53)

桃花チーム:115→177点(+62)

山本チーム:130→150点(+20)


 何故私は自分の拠点に戻ったか? それは単純で次に狙われるのは私たちのチームだと悟ったから。土魔法と言う防衛に適した能力を持っている以上、私は防衛に専念した方がチームの為になる。


 逆に、桃花チームは三人で赤木君の拠点を責めたが、それは失敗だ。あんなことをしたら、次に狙われるのは桃花チームになる。


残り5分

赤木チーム:145点(+0)

桜葉チーム:233→288点(+55)

桃花チーム:182点

山本チーム:185→312点(+127)



◆ Side 見学中の三年生


「あちゃあ、赤木、残念だったなあ……」

「でも、あれは判断ミスだろ。あそこは二人を見捨て、一人で攻めたらよかった」


 二年生男子二人組がそう感想を呟いた。しかし、それを否定するものが居た。三年生の女子だ。


「ばっかね~男子は。確かにあそこで赤木君が一人で攻めたら、山本チームを落とせたかもしれない。けど、あそこで彼一人が犠牲になる事で、彼は二人の女の子を()としたわ!」


 キャーと言うように、宮崎は手を胸の前で組んだ。


「誰が上手いこと言えと!」

「なるほど、そうやって女の子を落とすのか……」


「で、二人はどのチームが勝つと思ってる?」


「俺は山本チームですかね。あのチームの強みは何と言っても『狙われない』事。だって、即死級のトラップが張り巡らされてますから」

「俺も同感です。山本先輩はやっぱりセンスがいいですから。あの中で最強と言っても過言では無いです」


「私も同感かな。けど、私は桜葉さんチームに勝ってもらいたいかな~!」


山本先輩(カレシ)じゃなくてですか?」


「そりゃあ、スバル君は応援してるけど~」


 くねくねと動く宮崎。それをみて、二年生男子(彼女いない歴=年齢)は心の中でこう叫んだ。「リア充め……」「爆発しろ!」と。


「二人とも、声に出てるよ~。それと、爆発魔法が得意な君が言うと、洒落にならないよ?」


 なんて話していると、一人の男子生徒が三人に近付いてきた。川崎部長だ。



「面白い考察をしているね、三人とも」


「あ、川崎君。川崎君はどう思ってるの?」


「俺か? 俺は赤木()のチームに一票かな」


「そうですか?」

「けど、赤木のチームはさっきの事もあって慎重に行動すると思います。ここから、上手く立て直せますかね?」


「いやあ、実はな。俺は各チームの作戦会議を聞いてきたんだ。もちろん、アドバイスはしていないぞ? 純粋に聞くだけだ」


「ほうほう」

「なるほど」

「そういえば、聞いてましたね」


「その過程で赤木君のチームの作戦も聴いた訳だが……。まあ、まずはこの画用紙を見てくれ。赤木君が残したメモだ」


「「「……え?」」」


「さて、ここからの展開に期待したいな」






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