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21層は荒野

 どうにか三人を説得した後、俺達は21層へと転移した。そこは……。


「知ってはいたが、灰色だなあ」

「灰色ね~」

「灰色ですね~」

「グレー」


 21層から30層は荒野をモチーフにしたフィールドである。1~10層が草原、11~20層が山というように今まではフィールドに植物が植わっていたけど、ここには植物が一本たりとも植わっていない。ひょおぉぉという風音が、不気味さを増長させている。


「魔物の確認の前に、さっきの指輪の使い方を説明しよう。指輪をはめている手に魔力を流せばリングに込められてるシールドの魔法が起動する。それを咄嗟に起動できるようになっておこう」


 まずは俺が実践。魔力を流すと、直径50センチメートルほどある円形のシールドが出現する。


「どれどれ……出来た!」


 最初に成功したのは七瀬さん。彼女は身体強化を使う時に体に魔力を流すからな、それと同じ要領で指輪を起動できたみたいだ。


 宮杜さんと神名部さんは少々苦労していたが、七瀬さんの指導の末にマジックアイテムの起動に成功した。


 んじゃ、魔物についての再確認だ。ここに現れる魔物は3種類。


パニックゴート:パニックチキン同様、人が近づくと大暴れする。ただ、ゴートという名前の通り、こいつはヤギなので、体当たりを喰らうと吹っ飛ばされる。十分注意しないといけない。

砂ウナギ:兎ではなくうなぎだ。砂で出来た長さ2メートルほどのうなぎであり、土魔法を使って人間を攻撃する。

チャクラムホッパー:生きたチャクラム。当たると怪我を負う。


 そして、25層以降に現れるのは追加で2種類。


クロスゴート:人間に対して怒りを覚えているヤギ。人間を見つけると、ダッシュで突っ込んでくる。その硬い角を有効活用して、人間に重傷を負わせようとしてくる、超厄介な敵である。ちなみに、革が靴の材料になる。

石ウナギ:石で出来た長さ5メートルほどのうなぎであり、土魔法の他、体当たりなども使って攻撃する。


 また、魔物ではないけれども落石にも注意しないといけない。


「けど、フィールドの構造は単純なんだね。向こうで光ってるのが次の階層への入り口だよね?」


「その通りだな。まだまだ初心者向けのフィールドだ。とはいえ、岩の陰から急に魔物が飛び出してくる事があるから気を付けないといけないな」


 それから一分もしない内に、俺の第六感(魔力感知)が敵に反応した。そちらを注視すると、銀色に輝く物が見えた。間違いない、チャクラムホッパーだ。


「早速チャクラムホッパーがいるから注意な」


「え? どこどこ?」

「あ、もしかして向こうでキラって光ってる奴ですか?!」

「むー。あ、確かに何か光ってる」


「そうそう。ちょっと近づいてみようか」


 そろり、そろりと近づき、20メートルほどの距離にまで近づいたときにチャクラムホッパーに動きがあった。


「「「飛んだ!」」」


 俺達の方へ向かって飛び掛かってきた! 俺は自前で、他三人は指輪を起動してシールドを構えた。



 カーンー……



 七瀬さんの張ったシールドにチャクラムホッパーが激突し、その場に落下した。すかさず七瀬さんはそれを踏みつけた。


「討ち取ったり~!」


「まだ討ち取ってないけどな」


「これ、どうやって倒すの? 殴って大丈夫?」


「流石に金属を素手で殴るのは嫌だよな。メンドリサックを着けて、思いっきり殴るのがいいかと」


「そうなの? せい!」


 ガキン! チャクラムホッパーが半分に割れて、そのままドロップアイテムを残して消滅した。小さな魔石か、通常ドロップだな。



「今後は、俺が魔物を見つけても言わないようにするから、各自警戒してみようか。そうやって行くうちに、第六感が身につくから」


「分かった!」「頑張ります」「いざって時は守ってね」


「それはもちろん、俺も警戒はしておくよ」



「ねえ、あそこ。何かいない?」


 神名部さんが左前方を指さした。


「正解、あれはパニックゴートだな」


「神名部さん、すご~! 確かに言われたらわかるけど、良く見えたね!」

「すごいです!」


「なにかが動いたように見えたので……。けど、ただの偶然です」


 神名部さんは偶然と言っているが、実際は第六感が芽生えつつあるのかもしれない。無意識下で魔力の存在を察知して、自然とそっちに意識が向いた……とか考えられるしな。まあそれはともかく。


「さて、どう倒そうか……。よし、最初に見つけた神名部さんの練習台になって貰おうか。デバフをかけて、特に速度が遅くなるようにしてくれる?」


「分かった。えい」


 能力が起動し、パニックゴートにデバフがかかった。それがきっかけとなったのか、パニックゴートは俺達に気が付き、暴れ始めた。ただ、その動きは比較的ゆっくりだ。


「ちょうどいい速度だし……。七瀬さんはさっきチャクラムホッパー倒したし……。順番的に宮杜さんかな? やっちゃってください」


「私ですか? 分かりました! 『アイスアロー』」


 一本の氷が暴れるヤギに向かって飛翔。その体に命中し、奴をドロップアイテムにした。


「おお、一発か! 流石だな!」


「けど、今の、アローなの?」

「太さ的にはランスに見えた」


「あ、アローが言いやすいんです~!」


「あはは、取り敢えず、ドロップアイテムを拾いに行こうか!」


 和気あいあい。うんうん、これぞ青春。いつまでもこんな時間が続けばいいのになあ~。




 なんて甘い考えは捨てるべき。三人は気が付いていないけど、左斜め後ろからチャクラムホッパーが近づいてる。誰が最初に気が付くかな?


 カン!


 結局、誰も気が付く事は無く、俺の張ったシールドにチャクラムホッパーが激突した。



「ひ!」

「え?」

「びっくり」


「油断するよなー、こういう時って。というか神名部さんのそれは驚いてるの?」



 勝って兜の緒を締めよ。これはゲームでもリアルでも共通なのだと再認識した。




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