逢魔湖公園
「逢魔湖」、それはかつてそこにあったとされる伝説の魔物の巣の名称から付けられた地名です。もっとも今はその痕跡はこのっていないから、ただの伝説であるとされていますが。また、無限迷宮に吸収されたとする説もありますが、支持する専門家は少ないです。
「封印されているのだ、そしてそこには財宝が眠っているのだ」という都市伝説もあって、オカルト好きは今でも封印を解くための方法を模索していますが、これはあくまで都市伝説であり、信ぴょう性は皆無に等しいです。
さて、そんな伝説が残る逢魔湖の周辺にあるのが、ここ「逢魔湖公園」です!
<逢魔湖公園の魅力は?>
☆美しい自然!
蒼色の湖と、緑の大地のコントラストは、皆様の心を癒す事間違いなし。
☆広大なシバザクラの花畑!
5月頃にピンクのかわいらしい花を咲かせる「シバザクラ」、それが10万本以上植わっている「花の丘」はこの公園の最大の特徴の一つです。
☆子供から大人まで楽しめるアスレチック!
起伏の激しい地形を生かしたアスレチックは、大人も楽しめるでしょう。
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「へー、こんな場所があるのか。確かに綺麗だな~!」
ゴールデンウィーク最終日の朝。集合場所である校門前(寮で待ち合わせると色々勘ぐられるから校門前での待ち合わせになった)に10分前についた俺は、時間まで逢魔湖公園について調べていた。なるほど、なかなか楽しそうな場所だな。ウォーキング(ジョギング)用のコースみたいなのがあるらしいし、機会があればここでトレーニングするのも良いかもしれないな。
ちなみに、ゲームではこの公園は一切登場しない。ゲーム『フォルテの学園』はシューティングゲームだからな、デートスポットが近くにあるなんて描写はこれっぽっちも無かった。
そして程なくして先輩が姿を見せた。
「お待たせ~!」
「あ、先輩、お久しぶりです! なんだか気合の入った服装ですね、お洒落な高校生って感じで凄く似合ってますね」
「そ、そうかな? ありがとね~」
なお、俺の服装は良く言えば清潔感がある、悪く言えばシンプル過ぎる服装だ。「若い人のファッションとかよく分からないよ……」なんて考えが頭をよぎったが、冷静に考えれば前世で高校生だったときもファッションには疎かったから……これは性分なのかもしれない。
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「それで昨日は妹に『置いて行かないでぇ~』って言われて困っちゃいました」
「仲いいじゃん~! いいなー、私の所は『あ、戻るんだ。気を付けてね~』だけだったよ」
「へえ~、えっと妹さんですか?」
「そうだね」
「あー、まあ同性ならそんな感じじゃないですか? だって、仮に俺に弟がいたとして、『お兄ちゃん、行かないで~』なんて言われてるところ、想像できないですし」
「そう言われてみたらそうかも? いやいや、性別以前にそこまで仲がいい兄妹自体が珍しいんじゃない?」
「そうなんですかね? 自分にとってはこれが普通なので……」
「あはは、そりゃあそうだね。自分としての人生しか歩んだことないもんね~」
転生者の俺は、このセリフにどう返せばいいんだ?
なんて思っていると、ちょうど逢魔湖西駅に列車が到着した。ナイスタイミングだ。
「ここからはバスね。バス……の予定なんだけど」
俺達はバス停を見る。そこには人の行列がある。あの行列と一緒に乗るのかあ、ちょっとそれは気が引けるなあ。
「タクシーで行きます? 地図見る限り、5キロくらいですよね」
「タクシーかあ、結構高いんじゃない?」
「おおよそ2000円かそこらですかね」
「むむ、払えなくはないけど、バスで行けば往復で300円だよ?」
「そう聞くと、ちょっと躊躇しますねえ。いっそジョギングします? って先輩のその靴じゃあ走れないですよね」
「うん、そうだね……。おしくらまんじゅうを覚悟して、バスに乗ろっか……」
「……いや、もうタクシーにしましょ。お金っていうのはこういう時に使うもんですよ」
幸い俺には貯金があるし、これから先迷宮で活躍できるようになれば結構な額を稼げるようになるからな。
「うん、それには同意かも。せっかく毎日頑張って迷宮攻略して稼いでるんだし、こういう時に使おっか」
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「「着いた~!」」
無事到着。あ、タクシーはなんか学割が効いた。フォルテメイアの学生は、こういう所でちょっと優遇されるみたいだ。
「ちょっと早いけど、もうデザート食べ放題に行こうと思うんだけど、大丈夫?」
「はい。予約して下さったんですよね?」
「うん。で、予約できたのが開店直後の10時って言うね……。本当はお昼時にしたかったのだけど、ゴールデンタイムは予約がいっぱいみたいで」
「まあ、そうなりますよね……。まあでも、朝早いのはそれはそれで良かったかもです。食べ放題って聞いてたんで朝ごはん抜いてきたんですけど、正直昼まで持つか……」
「それは確かに。私も朝は水の一滴も口に入れてないわ!」




