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それは風兎の知らぬ所で

 ゲーム『フォルテの学園』は3Dシューティングゲームであり、その世界観はダーク寄りだ。

 物語は主人公が両親の葬儀に出ている所から始まる。主人公の両親は、フォルテとして戦場に赴き、父親は右腕、母親は左足しか戻ってこなかった。二人の死を受け入れられなかった主人公は、暫くの間引きこもりになってしまう。

 そして、ようやく絶望から立ち直った彼の眼は復讐心に染まっていた。両親を殺した魔物を許すわけにはいかない、と。

 そして15歳になった時の検診でフォルテであることが確定し、彼は復讐を果たすべくフォルテメイアに進学する。


 とは言え、救いが無いストーリーという訳ではない。主人公に仲間が出来るたびに彼の復讐心は薄まって、そして冷静に両親の死を受け入れるようになる。復讐心に燃える冷徹な機械だった主人公は、仲間の絆を知った事で一人の人間に戻っていくのだ。


 しかし、冷静になった主人公はとある違和感を覚え始めるのだ。「どうして両親は予想外の魔物に襲われるなんてことになったのだろう」と。基本的に魔物の巣から湧き出る魔物は決まっている。突然強力な敵が現れるなんて事は起こり得ない。


 その疑問を追求し、主人公が辿り着いた真実とは……。






 という、ストーリーの結末を転生者である風兎は知っている。しかしながら、それは「リアルとなった『フォルテの学園』の世界を知り尽くしている」と言う意味ではない。


 事実は小説よりも奇なり、とはよく言った物で。ゲームではカットされたような設定がこの世界には存在する。


=====


 これらは風兎の知らぬ所で起こっている出来事である


=====


 そこはとある田舎にある小さな学校。3学年合わせて100人も生徒が居ないような中学校にて。


「なあなあ、知ってる? あいつ、フォルテだったんだって」


「マジ? 確かにちょっと変わったやつだったもんな」


「フォルテと同じクラスとか最悪じゃん~。早く来年になって町から出て行って欲しいわよね~」


「家族も可哀そうよね。だってフォルテが同じ家にいるんでしょ? 考えただけで反吐が出るわ」


 フォルテメイアには沢山のフォルテがいるから勘違いしやすいが、フォルテは人口の数%もいない。一応政府も「フォルテを増やしたい」と考えて「一定以上の功績を上げたフォルテには重婚を認める」みたいな法律を作ったりもしたがあまり効果が無く。結局フォルテは人口で言うと少数派だ。

 少数派だったら何が起こるか? そう、差別だ。

 フォルテは基本的に遺伝性なので、人口の出入りが乏しい田舎には「フォルテがほとんどいない地域」が存在する。そう言う場所で突発的にフォルテが生まれたら、その子はいじめの対象になったり、村八分にされてしまう。家族にも見放され、まるで捨てられるようにフォルテメイアに送り出される。

 能力は人類存続の希望であるが、一部のフォルテにとっては烙印であるのかもしれない。



=====



「あ、あの。恐れながら、そろそろ休憩した方がいいのではないでしょうか……」


「私はまだ……できる……! 誰よりも強くなって、魔物に鉄槌を下す。それはこの家に生まれた使命なのだから……」


「で、ですが……」


「黙って!」


 逆に一部のフォルテにとって、フォルテであることは誇りであった。代々フォルテとして活躍している家系にとっては、魔物を討伐する事こそがエリートであり、能力を使いこなす事こそが努力の証、生まれてきた証なのだ。


(お母様に見捨てられないためにも……。私は誰よりも勇敢で、誰よりも強くならないといけないのに……)


 努力は大事かもしれないが、根を詰め過ぎても逆効果である。そんな客観的に見れば明らかな事も、当の本人にとっては気が付けなかったりするのだ。


=====


 これを風兎が知ったら、きっとこう思うだろう。「マジか。そんな裏設定があるんなら、主人公の境遇って実はマシな方なのでは?」と。

 しかし、そんな事を知らない彼は、いつも通り学園生活を満喫するのだった。





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