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能力研究部

 能力研究部。学校の公認団体であり、強くなるために修練に励む部活動である。これだけ聞くと非常に真面目な部活動に聞こえるが、実際はそれほど厳しい部活動ではないようだ。

 俺の感覚では「体育会系のクラブ程は厳しくないが、飲みサー程はっちゃけてはいない」感じだ。そもそも高校生だし、お酒は飲めないよね。

 早速見学に行ってみようと思う。色々なフォルテと知り合うのは俺の()になるし、それ抜きにしても先輩方と親しくなりたい気持ちもある。縦のつながりっていうのは凄く大事だ。テストの事、学校行事の事、人生相談。先輩方と知り合えば色々教えて貰う事が出来る。

 さて、彼女らは第Ⅳ訓練場の北西で活動しているはずなのだが……。あ、あの人はもしかして。


「もしかして、そこにいるのは(あかつき)先輩ですか?」


「うん? あ!君は例のお料理上手な新入生君!」


「新入生君って……。普通に名前で呼んでくださいよ~」


「……。あ(ゴニョゴニョ)君……だよね。覚えてるよ! ほんとだよ!」


 覚えてなかったようだ。


「どうしたの? あら、赤木君じゃない。見学?」


「あ、桜葉(さくらば)先輩。こんにちは!」


 桜葉先輩は俺のことを覚えてくれていたようだ。ちょっと嬉しい。


「そーそー! 赤木だ赤木! 赤木君ね!」


「「やっぱり忘れてた(んですね・のね)」」


「ゴメン~! 赤木ね。うん、覚えたわ! それで、赤木君は見学?」


「はい。フォルテとして生まれたなら、やっぱり能力を向上させたいって思って!」


「わ~真面目! 私は『名前がカッコいいから』って理由だけで入部したよ?」


(あかつき)先輩らしいですね。でも、気持ちはわかりますよ」


「私らしいってどういうことよ~!!」


 なんでもノリで決めてそうな人、と俺は思っているが口には出さない。



「お、君はいつぞやの。来てくれたのか」

「久しぶりね、新入生が来てくれるのは嬉しいわ」


「えーと。山本先輩と宮崎先輩でしたよね。こんにちは」


 例の三年生カップルがこっちにきて、それにつられて他の三年生もやってきた。色々な人がいるなあ。


「能力研究部と聞いてきたのですが、具体的にはどういった活動をしているのですか? 一応、つぶやいたーとかを見て、大雑把には理解しているのですが」


「ああ。簡単に説明すると、この部活はここ第Ⅳ訓練場の使用が許可されている数少ない部活の一つだ。この部活では、的とかを自由に使って自主練に励むことができる」


「なるほど」


「顧問の先生は、あそこで黙想している八倉(やぐら)先生。時折アドバイスをくれるわ」


「ああ、あの人が」


 風魔法使いなのだろう、小さな竜巻を自分の下に生み出しながら、フワフワと浮いている。仙人みたいな感じだな。


「歴戦のフォルテって感じですね」


「そうね。だけど今は訳あって、戦場を離れて、生徒の指導をしているみたいね。いい先生よ」


「へえ~。っと。つまりこの部活では『自由に設備を使って練習できる、時折アドバイスも頂ける』って感じですか」


「そうね。あ、タンクやヒーラー、バッファー、デバッファーなら先輩や先生が相方になるわ。自分の能力(フォルテ)を伸ばしたいなら、この部活が一番だと思うわ」



「あとあと! この部活では対人戦の練習もしてるよ!」


 三年生の先輩に代わって、今度は暁先輩が説明をする。


「なるほど、魔法杯に向けた特訓的な感じですか。いいですね、楽しそうです」


「うんうん。こんな感じで、ね!」


「?!」


 不意に暁先輩が笑った。嫌な予感がして、俺はすぐさま魔力感知状態に入る。暁先輩は自身の魔力を地面へと流しているように見える。されはさながら、牛乳を地面にぶちまけるように。なんでこんな無駄なことを?

 いや、違う。決して魔力を無駄にしているんじゃない。地面にこぼれた魔力が俺の足元へ向かって迫ってくる!


「障壁!」「落ちろ!」


 俺が足元に無属性のシールドを張りながらジャンプするのと、暁先輩が叫ぶのは同時だった。

 魔力感知状態が切れる。五感を取り戻した俺は、元々立っていた場所を見る。するとそこには深さ50センチメートルほどの落とし穴が形成されていた。


「避けられた?!」

「マジか!」

「無属性魔法か、上手い使い方をするな」

「将来有望ね」

「俺、今でも避けれる自信ないんだが?」


 先輩方が驚いている。あー、これはあれだな。新入部員に対しての洗礼みたいな儀式なのだろう。実際、この落とし穴に、HPを削る能力は無い。ちょっと驚かしてやろう、的なノリだ。


「……引っかかった方が良かった感じですかね?」


「私達の予定では『とまあこんな風に対人戦慣れしていないと不意打ちを喰らうかもしれないから、私達と一緒に特訓しましょ』みたいな説明をするつもりだったのだけど。見事に避けられちゃった! 凄いね、君!」


「暁先輩が分かりやすくにやりと笑ったので。なんか来ると思って避けただけですよ。ほんと、だたの偶然ですから~」


「そっかー。私のせいかー! 次はポーカーフェイスを心がけるわ!」


「でも、にやりと笑う先輩、可愛かったですよ。いたずら好きのお茶目な先輩って感じがして」


「そ、そーお? じゃあ、今度からもこうするわ!」



(なあ、あれって偶然だと思うか?)


(そうは見えないよな? 明らかに地面に障壁を張って、それを足場に飛びのいたし)


(土魔法を使うって事前に知っていたんじゃないですか? それでも凄いことには間違いないですけど。どうなんだ、桜葉?)


(いや、そんな事は無いはずだ。私と居る時は、そういう話はしなかったからな)


(でも、二人で会っていた可能性もあるだろ?)


(ないと思うぞ。なにせ、暁は彼の名前を忘れていたからな)


(確かに)



 外野の皆さんは察しが良いな。逆に、暁先輩はあれだな、えーっとなんていうか……チョロいな。







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