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魔物の巣

 入学式で、フォルテメイアの施設についての説明を受けた。校長先生は、そのまま「魔物の巣」についての説明を始めた。

 ここからゲームっぽい要素が出てくる。この辺りの設定は既に知っているが、改めて聞いておこうか。



 第Ⅴ訓練場の北には魔物の巣、『無限迷宮』がある。魔物の巣は俗に「ダンジョン」とか「狩場」とか言われている場所だな。事前知識も多少あると思うが、改めて説明しておこう。


 一般に魔物の巣とは、魔物が次々とあふれ出てくる場所の事だ。倒しても倒しても、次々と魔物が生み出される、悪夢の空間だ。裏を返せば、資源の宝庫とも言えるがな。この辺りは、たぶん小中学校の地理の授業で習っていると思う。


 世界中で魔物の巣は見つかっており、その規模や形態は様々だ。巨大な島であったり、深い大穴であったり。また、地下のはずなのに空がある、摩訶不思議な空間になっていることもある。それぞれ「フィールド型」「陥没型」「特殊型」などと言われているな。


 さて、日本には大小20個の魔物の巣が見つかっているが、その中でも最も規模が大きい物がこの学園のすぐ傍にある。それが『無限迷宮』。最深層が無いとされている特殊型の魔物の巣である。


 まあ、最深層はちゃんとあるんだけどな。ゲームでは。


 無限迷宮はかつては最も恐れられていた魔物の巣だったが、『挑戦者の為のチョーカー』が発見されたことで攻略は楽になり、今では学生の為のダンジョンとなっている。


 『挑戦者の為のチョーカー』は任意のタイミングで入り口まで戻って来られる使い捨てアイテムだ。危なくなったら脱出、という作戦を取る事が出来るから基本的に安全に攻略を進める事が出来る。


 入り口で『挑戦者の為のチョーカー』が配布されているから、必ずそれを受け取ってから挑戦するように。と言っても、『挑戦者の為のチョーカー』は少々値が張る。出来るだけ使わずに済むように、無理の無い攻略を心がけるように。ちなみに、壊してしまった場合は次の攻略まで一週間のインターバルを開ける必要がある。しっかり反省しろって事だな。


 そう、無限迷宮では「戦闘不能=死」ではないのだ。戦闘不能になったら、すぐにアイテム『挑戦者の為のチョーカー』を使って入り口に帰ってくることができる。

 流石ゲーム世界、ご都合主義だな。なお、一度も『挑戦者の為のチョーカー』を使わずにクリアする事をゲームでは「ノーミスクリア」と扱う。


 さて、フォルテの生徒は基本的に迷宮の攻略状況が成績に関わる。特殊な事情が無い限り、パーティーを組んで迷宮を探索する訳だ。また、深層にいる魔物の素材になると、それなりの値段で売れるから、小遣い稼ぎにもなる。

 この制度は、諸君らが自主的に自身の能力を鍛える為の制度だ。『努力が報われる方が、やる気が出るだろ?』というのが初代校長の言葉だ。

 実際、この制度のおかげで、我が校は世界の中でもトップクラスの人材を輩出し続けている。


 しかし、最近になって、不正な方法で迷宮を攻略する者が現れ始めた。例えば先輩に助けてもらいながら攻略するような行為、通称『寄生』だな。こうやってクリアしても、実力が伸びないのは言うまでもない。

 先に言っておくが、先輩や有識者に教わる行為が全て悪いという意味ではない。むしろ、教え合いは良い事だと思っている。自分の実力を伸ばしたいという意思があり、先輩から技術を学んでそれを自分の物にする。学習意欲があって大変すばらしいじゃないか。

 だが、先輩に100%任せて自分は何もしない、というのは断じて許されない。そういった行為があるならば、追試を行って本当の実力を試させてもらう事がある。


 また、このような手段で攻略していた者は、自分が最高学年になって頼る相手が居なくなった時に困ったことになる。そう言う奴は、大抵同級生から嫌われているからな。誰も頼れずに落ちこぼれていく。

 そして、こう言った奴に限って自暴自棄になって無茶をしたりする。去年起きた死亡事故15件の内、15件全てが寄生経験があった二・三年生だった。


 死亡事故と言う言葉を聞き、新入生一同の緊張感が高まった。


 ゲームでは、コンテンツのレーティングで「子供でも楽しめます」としたかったからか、死に関する表現は抑えられていた。しかし、リアルとなった今、死亡事故は起こり得る。十分気を付けなければいけない。


 他の新入生同様、俺も心を引き締めたのだった。




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